「ああ。俺は、我が王の謁見を赦されてはいないからな」
「どうして?」純心無垢な顔して首をかしげる。
「否決されたんだ。残念ながらな…」
「なんで?」
「それは我らが王の知るところだ。俺は決定に従い、命令を全うするのみだ。それに――新たな任もある」
「……」
不機嫌になってゆくドラコの露骨と不機嫌な顔に、レニクスは鼻で笑い、その肩をたたく。
「お前はガキじゃない。だろ?なら堂々としていればいい。〝誰が〟相手でもな?我らが王の寛大さはこの国をも包み込めるほどに、寛大だ。心配は無用だ」
「分かってるよ。そんな事は」
「ではな、ドラコ。いいや、【竜眼】のドラコにご武運が宙より在らんことを――っ!」
両手を胸の前に合わせてお辞儀をする。これは武術族に代々と受け継がれてきた挨拶のならわしである。
ドラコも礼に応じて挨拶を返せば、王室へと入っていった。
扉の閉じ切るその間際まで、彼の背中を見守っていた。
バタンっ!と閉鎖的な音だけが、廊下に響きわたる。
深く鼻から息を吸って、それを吐く。
レニクスはひとり呟く。
『さて……どう転ぶか、な?』
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