『パチンッ!!』鋭くも、乾いた音だった。
弁明しようと慌てふためき見苦しいドラコを、エニーは彼の頬を強く叩いた。
「今流行の『パワハラ』って奴ですか?」
「ふざけるな」重くため息をつくエニー。
「怪我人に鞭打つようで、俺も心苦しいが……ドラコ、これは既に『決定事項』なんだ。俺にも止められはしない」
「……ふざ……けんな」押し殺す声で悪態をつく。
それから数日。
すっかり回復したドラコは、エレクスと共に閉じられた豪華絢爛な扉のまえで待機を言い渡されていた。
「準備はいいか?」
「なんだか……息苦しいな……首元のボタン外しても?」
「駄目だ」
と一蹴するエニーこと【竜の剛腕】のエレクス、その顔は飄々と澄ましているように見えて、彼も額には緊張の汗がにじんでいた。
なんせこの扉の先には――
〝我らが王が居る〟からだ。
閉じた扉からでも分かる。その隙間から染み出すように流れ込んでくる重圧感はヘビの様に足元や胴、それから首に巻きつくようで、ねっとりとした感触がある。
「……このプレッシャーだけで、死刑にされそうだな?」
「ふざけるな。我らが王の御前だぞ?」
「これも、軍法違反にしておく、ってか?」
「ドラコ!」小声だが、エニーのその声は怒っていた。
「はいはい……悪かったよ」
この嫌な空気感を『お茶目なジョーク』ですこしは紛らわそうとしたのだが、それすらも許してはくれないらしい。
そこへ――
〝ガチャ!〟とドアノブが回る音と、その様をちょうど見た。
扉は開き、出てきたのは――
「貴殿らを、総司令官殿の【竜の剛腕】と――ならびに軍法違反の容疑者【竜眼】。この両人とお見受けするが、間違いないか?」
これまた仰々しい言葉遣いの〝騎士〟が現れた。
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