「どらござ~~~ん!!」

 自分よりも二回りも、三回りもある筋骨隆々の巨漢が、自らの体重も考えず、抱きつきに飛び込んでくる。

「はっ…離れろってベン!……っつ!!」

 傷口から全身に走りぬける痛みに、表情が歪んでしまう。


「こらっ!ベン!ドラコにはまだまだ静養が必要なんじゃ!」

 

 ベンを𠮟りつける声とともに、【老牙】のジャレが姿を現した。

「よう。そっちは元気そうだな?」

「お前さんも目が覚めてなによりだ。本当に……わ、儂は……」

 ジャレの目には涙が浮かんできて、その瞳は宝石のように輝きだしていた。

「おいおい…」と呆れるドラコ。「照れるだろ?」


「目覚めたようで、何よりだよ。ドラコ」

 

 新たな声。

 物腰の柔らかなその声に視線を向けると―― 

 〝彼〟は立っていた。

 容姿は端麗で、その甘い顔は見る者すべてを虜にしてしまう。その髪は小麦畑の黄金のような金髪をなびかせる。

 彼の名は、武術軍・総司令官にして【竜の剛腕】の異名を与えられし〝エレクス〟だ。

 皆からは愛称で〝エニー〟と呼ばれ、皆から慕われ、敬意を集めている。我らが王からの期待も篤く、〝武術族最強〟とまで言われたりもする。(それを打ち壊したくて若い俺は何度も挑んだな。結果は……)

 武具は【ガントレット&グリーブ型】エレメンタル・ウェポンを使用する。


 エニーはまず、ベンとジャレに視線を向ける。「ベン君もジャレさんも、彼の回復を祝いたいのは山々ではありますが――」

「皆まで言うな」と言いたげに、ジャレは察するとベンを連れてそそくさと退室してしまった。

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