「ぴちょん!」と雨粒の滴った音。

 それがどこから聞えたかは、二人にとってどうでもいいことだ。

 ふたりにとって、これはただの〝合図〟


『来るっ!!』という合図。


 先に仕掛けたのは【暴風の巨人】だ。

 白く魚の鱗のような装甲に覆われた義手の掌を前に突き出す。

 その動きに呼応するかのように、風に操られる神具【巨人の大剣・アーサー王】は縦に回転する。それは巨大なブーメランを彷彿とさせてこっちに向かってくる。


「……」ジャレは涼しい顔でそれを半歩横に移動して避けた。


「つぎは、こっちの番…じゃな!」

 彼が踏み込みをしたかと思えば、もうそこまで近付いていた。

 流石は〝武術族〟だ。そう感嘆してしまうが――


【暴風の巨人】は伸ばしていた手、開いていた掌をぐっ!と、握りしめてはその拳を引く。その動作はまるで、〝なにかを手繰り寄せる〟と言った具合だ。

 その動きに呼応するのはやはり彼女の使う〝魔法〟であり、魔法によって自在と操る【巨人の大剣・アーサー王】だ。


「!!!」

 ジャレは鋭敏と感じる、この後頭部に迫る冷たい殺気を。

 目の視線だけを移せば、そこに大剣・アーサー王がこちらに真っ直ぐ放たれた矢が如く向かってくるところだった。

 

「ちっ!」

 彼女の顔にこの棍棒が届くまではあと、二歩、だったと言うのに…

 

 ジャレは今地面を踏む右足に力をこめる。一気に蹴りだし、それは見事で華麗な後方宙返りをきめては、この後頭部に迫る大剣を避けた。

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