吹き荒む風は翡翠色をしていた。

――【暴風の巨人】――

 その素顔を知る者は戦場では居ない。いつもフードの下に素顔を隠し、荒野を駆ける一陣の風がごとく翡翠色をなびかせて戦場を駆る。その跡には切り刻まれた死体だけが足元に転がると言う…


 翡翠色の風はそれが〝魔法〟による証だ。


 その風の魔法により操るのは、『神具【巨人の大剣】アーサー王』だ。

 それはひとりの少女が使うには余りにも巨大(2mはある)な大剣は雪のような白い装甲と、漆黒の刃をもつ。刃と装甲に掘り込まれた彫刻(エングレーム)は黄金に掘られて、何かの文字にも、幾何学模様にもみえる。

 

「〝退いてくれんか?〟と、言って…従う訳はないか…」

「そう。でも、心配しないで。貴方だってすぐ逝く……それだけだから…」

 物憂げな瞳がこちらを見つめる。

「これまで数多戦場でかような〝たわごと〟を言われ続けてきたが…いつもそうわならなかった。なぜか分かるか?」

「?」フードを被った小さな頭を怪訝と傾かせる【暴風の巨人】

「そいつから先に死んで逝ったからだッ!!」

 耳のつんざくほどの怒声を張り上げて、【老牙】のジャレはその棍棒を固く握りしめて脱兎が如く駆けだす。

 彼女もまた彼の動きに合わせて動く。その手を伸ばせば、大剣に魔法まとわす。


「!!!」

 剛腕任せに叩き落とす棍棒に、風に操られた大剣のアーサー王が烈しく衝突する。

 しとしとと降る雨粒を衝撃波がふきとばす。


「……」

 衝突による衝撃は二人を退かせる。

 沈黙に睨み合うふたり。

 と、そこへ――

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