握り潰すように火を掴む。

 手のひらの上で轟轟と渦巻いた炎は弾け飛ぶ。

 それは〝攻撃〟の為のものではなく、〝召喚術〟だった。

 その鋼鉄な義手の右腕に握りしめられた――〝大砲〟――


「それ、アップグレードしたな?」

「おっ!流石だな」と彼女はすこし嬉しそうに笑う。「神具【冥砲・デューラ】改め!【冥王砲・デュラス】だ!」


――【冥王砲・デュラス】――

 棺の様なカタチをしたその大砲は白と黒の、大理石のような光沢感のある装甲に覆われ、装甲と装甲の繋ぎ目には黄金が耀かがやくのがみえる。

 それは古代聖遺物(アーティファク)とのような、畏怖を覚える。そのことから彼らはこれを〝神具〟と呼ぶ。


 その中央にある円形のくり抜き、そこに持ち手とトリガーになっている。フレーシャが自分の身丈よりも大きなこの【冥王砲・デュラス】を軽々と持ち上げ、それが大きな砲口をこちらに向け――

 彼女がトリガーを引くなり、砲口の装甲が上下に開き、そこから炎が迸る。

 

〝キラッ!〟と一瞬つよい光りが放たれるのを見て、刹那せつな――


 閃光を見て刹那、ドラコとジャレ、彼らが同時に直感したのは、〝死〟以外になにでもなかった。

 自覚があろうが、無自覚だろうが、二人はその場から退いていた。


 ふたりの横を通りすぎる、それはとてつもなく大きな――熱線の一撃!――

 熱線は遮るもの全てを熔かしつくす。家々も、草木も、大地も雨も。


「くそっ!威力も段違いだな……おい」その光景に唖然とするドラコ。

「ドラコ!油断するなッ!」と、ジャレは忠告に怒鳴る。

「そうだぜ?油断はなしだぜ?でないと――――」

 上空を見あげるとそこにフレーシャの姿と――

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