「俺の…責任ッス……」

 そう言って腰かけていた椅子より立ち上がるひとりの巨漢。

 褐色な肌に、物腰の柔らかい顔は痛みに引きつっていた。と言うのも彼はこの戦闘で脇腹にひどい火傷を受けてしまったのだ。


 よろよろとこちらに歩み寄ろうとする彼だが、脇腹の痛みに負けて膝を折ってしまう。


「お前の責任じゃない。〝ベン〟」

 彼の名は【魔封の盾】ベン。見ての通りで彼もまた〝異名持ち〟だ。

 肩を貸してベンを元居た椅子へと運び、安静にさせるドラコ。

「お前はよくやったよ。お前が居なけりゃ、これだけの生き残りを出すことはできなかった。俺も含めて、な?」

「でも……それでも……」


 彼は異名の通りから、兵士であるにも関わらず〝殺し〟が嫌いなんだ。

 ゆえに他の兵士からけむに巻かれることが多く、不当な扱いも受けてきた。ドラコに出会うまでは……

 彼はその屈強で誰よりも巨躯なカラダであることを活かして振るう大剣を皆を守る〝盾〟として使う。これまでの戦場で守った兵の数は知れず。


 その功績が王の耳に届き、【魔封の盾】が異名を授かった。今ではコイツを馬鹿にする奴は誰もいない。

 が、今回ばかりはその盾でも守り通すのは厳しかった。

 

「良いから、今は休むことに専念しろ!いいな?」

「……了解」

「よし!じゃあ早――――!!!」

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