第67話 ダンス

 僕はリモコンを手に取り、停止ボタンを押そうとした。



 そのとき、横からロリータが僕に声をかけてきた。

「ちょっと待ってェ…… お兄ちゃん」


「えェ……?」リモコンの停止ボタンから指を外した。

「何…… ロリータ❓❓」



「ン…… お兄ちゃんは本気でを観たいの」


「え…、ああ…… そりゃ、もちろんだよ」

 すぐに、大きくコクコクと頷いた。


「このカレンッて、子のじゃなく……」

 チラッとテレビの画像に視線を向けた。



「え……」

 もう一度、カレンの画像を見つめた。


 決して上手いとは言えないが、一生懸命に踊っている。


 カレンが亡くなってから何百、何千回と見た画像だ。

 

 

「うン…… が見たい❗」

 僕は彼女を見つめて応えた。



「……😔💦💦💦」

 少し彼女は無言で考えているみたいだ。

 大きく息を吸い込んだ。


「わかった…… じゃァ~…、教えて……、お兄ちゃん」


 

「え…… お、教えてッて言われても…… 

 僕はダンスなんか。全く知らないし……

 初心者も良いトコだよ」

 ロリータに教えられるワケがない。

 力なく首を横に振った。



「良いの…… お兄ちゃんが思うようなダンスが出来れば」



「うゥ~ン」僕の思うようなダンスか……。



「それから……、この格好じゃすぐに汗だくよ……。汗をかいても良いようなトレーニングウェアはないの❓」



「あ、ああ……😅💦💦💦 そうだなァ~…

 トレーニングウェア……か」

 と言っても、僕は一人っ子なので困ってしまった。



「このコスチュームは…… ダンスが完成した時に着たいから……」



「うン……」

 確かに、レプリカだとしても、コスプレをして練習すれば、すぐに汗だくだ。



 しかし女性用の練習用のウェアなんて僕の家にはない。



「うゥ~ン……、僕の着古したウェアしかないよ」

 たぶんクローゼットを探せばナニか有るかもしれない。

 だが、それらもすべて男性用だ。








∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆∠※。.:*:・'°☆



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