第49話 八月少女

「八月葉月。オーガスト。しし座。レオ。サードニクスに、ペリドット。ヒマワリ。酉月。月見月などか。」

 8月のことを考え始める。

「あれ? 私はナビゲーターとして、8月葉月のお友達ということでいいのかな?」

「いいんじゃない? 今更、お姉ちゃんはゆるキャラやケロちゃんや九兵衛にはなれないでしょ?」

「当たり前だ! 私は天照の生まれ変わりだぞ! 誰がマスコットキャラクターなんぞになれるか!」

「おバカキャラのお姉ちゃんがストーリー回しの神秘的な役になるのね。」

「いや、その役は楓でいいんじゃない? 私はおバカを続けなくっちゃ! アハッ!」

 真理亜のおバカ愛である。

「それにゆるキャラはハチ公でいいのよ!」

 ドカーン! バカーン! ここで雷鳴が鳴り響く。

「異次元の入り口は・・・・・・ハチ公よ! だって渋谷だもの! アハッ!」

「過去、未来、異世界から戻って来る時もハチ公像を探して見つけて帰って来る。」 

急ピッチで設定が決まっていく。

「基本はほっこり、じんわりなので、普通の日常の生活を描かなければいけない。」

「そうするとストーリーに困らなくていいのよね。サザエさんやクレヨンしんちゃんみたいに。」

 そうそう。

「八月葉月は普通に女子高生をやっていた。しかし、ひょんなことから大神真理亜とお友達になってしまう。ある日、渋谷のハチ公像を真理亜がバカにすると、タイムスリップに巻き込まれるのであった。」

「完璧なあらすじね。」

「アハッ!」

 自画自賛。

「八月葉月のペットはニワトリ!」

「鶏!?」

「だって干支が酉でニワトリなんだもの。」

「ということは、八月生まれの人間はペットには鶏を飼わないといけないのか!?」

 いいえ。八月葉月ちゃんだけです。

「はあ!? 葉月はニワトリのクロス・・・・・・じゃなかった、ニワトリの鎧を身に纏って敵と戦うというのか!?」

「8月の星座はしし座だから、ニワトリとライオンの戦いね!?」

「いや、戦わないで仲良しという可能性も!?」

「チッ、七月の七夕なら戦っていてもドラマチックな展開になれたのに。」

 恨み節。

「八月葉月。どう考えても8月生まれ。暑さに強い! スイカ大好き! 花火で放火! 芸術は爆発だ系のキャラクターね。」

「どんなキャラクターだよ!? お姉ちゃん少しズレてるよ!?」

「アハッ!」

 お久しぶりの展開。

「逆に暑さに弱く、スイカが嫌い。花火なんか大っ嫌い! 夏の申し子なのに、夏が大嫌い!」

「完璧なズレのある夏キャラクターの誕生ね。」

「アハッ!」

 設定は、その方が面白い。

「要するに朝ドラ的に、飽きられる主人公より、おバカな方が良いということよ。」

「そうね。その方が視聴者ウケするでしょうね。」

「アハッ!」

 ウケを考えて物語を創作せねばならんとは、悲しい時代だ。

「私のペットをハチ公にすると戌年のペットと被ってしまう!? どうしよう?」

「じゃあ、お姉ちゃんのペットはモヤイ像にすれば。」

「邪神モヤイ!? モヤイは楓の方がお似合いだよ。」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す楓。

「所で、オーガストのペットが獅子。ライオンを飼っている奴も珍しいな。頭をかじられるぞ!?」

「それだけでは済まないわよ。頭をかじられたら普通の人間は死んでいる。」

「アハッ!」

 その通り。

「ニワトリ神拳とか使うのかな?」

「ライオン神拳? ライトニングボルトって、ただの稲妻よ。」

「アハッ!」

 敵とどうやって戦うのかを議論し始めた。

「チキン流星拳とかどうかしら?」

「鶏を100羽飛ばして、ニワトリ百裂拳よ。」

「ニワトリ破! とかどう?」

「ライオン拳10倍!」

「結局、ドラクエも必殺技ブームに負けて、後付けで必殺技やジョブチェンジを追加しちゃったし。もう、それってファイナルファンタジーの下請けがドラクエレベル。」

「8月は8月らしく、必殺技は月見月! でいいのかな。」

 とりあえず必殺技は決まる。何で戦うかは未定だが。

「サードニクスに、ペリドット。ヒマワリは何に使おう?」

「好きな花は、ヒマワリ。ヒマワリ畑で体力回復とかでいいんじゃない?」

「アハッ!」

 簡単にアイテムが一つできた。

「八月葉月の持ち物、サードニクスの指輪。指輪からパワーをもらえるとしておこう。8月中頃から、ペリドットの指輪も見つけて、葉月はパワーアップするのだ!」

「完璧な展開ね。」

 ズドーン! バコーン! ここでアイデアの神が現れる。

「最後の敵は、私で決まりね。これは私の、神の選択ゲームである。人間を滅ぼした方がいいのか? それとも人間を信じた方がいいのかの。」

「天照の生まれ変わりは大変ね。」

「そういう楓も生まれ変わりよ。だって天照の血を引いている私たちは大神一族ですから。アハッ!」

「きっとどこかで、スサノオとツクヨミも出るわよ。」

「平凡なモノからキャラクターを連想するとネタには尽きないわね。」

「アハッ!」

 大まかな設定はできた。

「後は、ここから深堀すればいいだけ。がんばるぞー!」

「おおー!」

 つづく。

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