第44話 プロトタイプ

「いや~、お茶は美味しいですな。ほっこりしますな。」

「そうですな。おや、真理亜お姉ちゃん。茶柱が立ってますよ。」

「おお! こいつは春から縁起がいい。アハッ!」

 真理亜と楓は縁側でお茶を飲んでほっこりしていた。

「ここまでは完璧だ! 完全にほっこりしているぞ!」

「この調子なら、じんわりも余裕ね!」

「アハッ!」

「アハッ!」

 鼻提灯をつくる大神アハ姉妹。

「で、ここで第三の人物が現れる! ・・・・・・誰だろう?」

「考えすぎると動けなくなるからパンダちゃんでいいんじゃない?」

「そうだな。あいつ、永遠のお隣さんだしな。」

 ということで。

「おはよう。我が永遠のライバルと楓ちゃん。」

「おはよう。」

 魔法少女アリアが現れた。

「言っておくが、ほっこりとじんわりでは魔法は禁止だからな。」

「大丈夫。魔法は現代では、奇跡と言われている。使ってもバレなければいいのだよ。バレなければ。」

「こんな奴を登場させて、本当に大丈夫なのか!?」

 半信半疑の真理亜。

「さすがパンダちゃん。現代では魔法少女は奇跡を起こす神と同じ架空の存在なのね。」

 逆に楓はアリアを崇拝した。

「こらー!? 楓!? こんなただ飯食いよりも姉である私を崇拝しろ!」

「嫌よ! おバカなお姉ちゃんよりパンダちゃんの方がいい!」

「ガーン!?」

 ショックを受ける真理亜。

「太陽なんか大っ嫌いだー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 こうして姉は行方不明の消息不明になった。

「さようなら! 真理亜ちゃん!」

「今までありがとう! 我が永遠のライバルよ!」

 じんわりする楓とアリア。

「はい! お姉ちゃんがいなくなったら世界が平和になりました。」

「そうか、世界の混沌の原因は真理亜ちゃんだったのか。」

「さあ、縁側でお茶を飲んでほっこりしましょう。」

「お団子も付けてくれると嬉しいな。」

「アハッ!」

 カーリングのモグモグタイムに対抗して、ほっこりタイムに命名しよう。

「うまい、楓ちゃんの入れてくれたお茶は美味しいな。きっと将来は良いお嫁さんになるよ。」

「それほどでも。アハッ!」

 楓とアリアは、ほっこりタイムを楽しんでいる。

「そうか! 物語の真ん中から毎回、真理亜お姉ちゃんを追い出せばいいんだわ!」

「そうすれば、最後に生き別れた姉と妹が感動の再会を果たして、心が温まるじんわりとした物語になるんだ!」

「アハッ!」

 ここに、じんわりの謎が解けた。

「そうと決まったら、物語の真ん中はどんな話にするかを決めなくっちゃ。」

「ほっこりの千本ノックでいいんじゃない?」

「そうしときましょうか。」

 物語の中心はほっこりの千本ノックに決まった。

「ほっこりする良いことか・・・・・・不意に言われると難しいわね。」

「また1円とか5円とかのお金を拾ったネタにするか?」

「ダメよ。同じネタは。」

「じゃあ、どうする?」

「こうしましょう。お金以外の物を拾ったことにしましょう。」

「おお! その手があったか!」

「まずはニンジン。道端で落ちているニンジンを拾う。誰のニンジンか分からないので交番に届ける。「ありがとう。」とお巡りさんに褒められて、ほっこりする。そのほっこりした気分で帰り道を歩く。「今日はなんて良い日なんだ。ほっこりするな。」まさに、ほっこり日和。」

「さすが楓ちゃん。我が妹よ。」

「パンダお姉ちゃん。大好き。アハッ!」

 実の姉よりも育ての姉を選ぶ妹。

「産みの母親と、育ての母親って、よくあるけど、おバカな実の姉と、普通の育ての姉。どちらを選びますかバージョンね。」

「思わず、じんわりしちゃったな。楓ちゃんは私の妹だ。どんなに実の姉がおバカで使い物にならなかったとしても、カワイイ楓ちゃんは私の妹だ。」

 こうして感情の高まりだけでなく、幼いころから実の姉の真理亜が妹の楓の世話を放棄、または楓の物を横取りしているのを、真理亜の幼馴染として、一緒に育ってきた永遠のお隣さんのアリアとの仲良く遊んできた思い出がよみがえる。

「じんわりが生まれた。」

「名言だね。」

「アハッ!」

 きっと、こんなどうでも良い所から名言は生まれるのだろう。このテイストであれば、人間同士の感情のコントロールも面白いのだろう。

「後はキャラクターを増やせば、キャラの個性で物語は広がるから話には困らない。」

「それに困ったことに時事問題を入れれば、一日一善のネタも大丈夫。」

「アハッ!」

 そろそろ疲れてきた二人。

「お腹が空いてきたわね。そろそろ物語を終わらせよう。」

「じゃあ、真理亜ちゃんを呼んでくるよ。」

 きっとアタッシュケースか井戸の中、押し入れに邪魔なので換金されていた真理亜。

「こらー!? おまえたちは私を殺す気か!?」

「そのつもりですけど?」

「え・・・・・・。」

 何も言えなくなった真理亜。

「お姉ちゃん! 会いたかったよ!」

「おお! 楓!」

 ここに運命の再会を果たす真理亜と楓。じんわりと喜びの涙を流すのであった。

「真理亜ちゃんがいなかったおかげで、しっかりと物語の内容を精査できたよ。」

 アリアは魔法の使えない現代社会でも魔法少女なのだ。

「再会! それは現代の魔法だ!」

 つづく。

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