第45話 ほっこりさん

「良いことを探そう!」

「おお!」

 意外にほっこりとじんわりは道端に落ちている物である。

「あ! 100円玉! 見つけた! ほっこり!」

「ああ! 大根! 拾った! ほっこり!」

 お金、物など拾えるもを拾うだけで、ほっこりできる。

「偉いね。お嬢ちゃん。落とし物を届けてくれてありがとう。」

「それほどでも! ほっこり!」

 お巡りさんに褒められてほっこり。

「アハ教徒をやめて、ほっこり神にでもなろうかしら? ほっこりに愛し愛された女! それが私、大神真理亜だ! アハッ!」

「私のお姉ちゃんは、いったい何を目指しているんだろう?」

 まだ自分の方向性が定まっていない真理亜。

「私にも分からない。剣を使ってもダメ。魔法を使ってもダメ。タイキックを使ってもダメ。私にいったいどうしろというのだ!?」

 現代ドラマの壁が立ち塞がる。安い経費の実写ドラマを目指す大人の事情である。

「お姉ちゃん、お茶が入ったよ。悩んだ時は、ほっこりしよう。」

「そうだね。何か良いアイデアが生まれるかもしれない。」

 こうして縁側でお茶を飲んでほっこりする大神姉妹。

「はあ~、うまいですな。体がほっこりしますな。」

「分かった。温泉に入ったり、お風呂に入ったりした時もほっこりしてるんだよ。」

 お茶を飲んでほっこり、お湯に浸かってほっこり。ほっこりとは単純なものである。

「そうか! ほっこりは良いことをする、良い感情になるということか。」

「まさに一日一善の心だ! ほっこり。」

「良いことをして、ほっこりしよう!」

「人に優しくして、自分がほっこり幸せになれる!」

 ほっこりの本質に迫る真理亜。

「そうか! 分かったぞ! ほっこりとは・・・・・・穴を掘ることだ!」

「はあ~!? なぜ!? そこにたどり着く!? お姉ちゃん!?」

「アハッ!」

 真理亜の発想は、ほっこり、ほるこり、掘ること、らしい。

「ボンバーマンならぬ、ほっこりマン、いや、私は少女だからほっこりさんだ!」

 ほっこりさんは穴を掘って人々を救い、良い光景を演出して、ほっこりするのだ。

「砂場で地面を掘って、砂の城を作って、子供たちを笑顔にする!」

 ほっこり~!

「道に砂が積んであり、おばあさんが前に進めないで困っている!? 砂を掘って道を解放! これでおばあさんも笑顔で道を進める!」

 ほっこり~!

「コンビニで万引き!? 犯人が走って逃げるぞ!? 道に落とし穴を掘って、見事に穴に落として犯人逮捕に貢献!」

 ほっこり~!

「どうだ? 完璧な私のほっこりライフは? アハッ!」

「ありかもしれない!?」

 思わず妹の楓も目を丸める。

「神でも魔王でも私の穴に落としてやる!」

「少女の穴・・・・・・18禁ね。」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す真理亜。

「どう? ほっこりさん。完璧なヒロインね。」

「甘いわ! 穴を掘るなら、空を飛ぶ戦闘機やアホガラスには対抗できないわ!」

「空!? 空だと!? 穴掘りにそんな弱点があったなんて!?」

「そんなあなたは、うっかりさんね。」

 うっかり~!

「しまった!? このノリでいいなら、ドーリムコンテストは、ストーリーものではなく、ドリームさんで良かったんだ!?」

 うっかり~!

「それにうっかりでいいなら、スッキリもありね。だって、語尾が「り~」だもの。」

「怖い!? 怖すぎる!? 次々と湧いてくる脅威の発想と創作力!? なんて私は天才なんだ!? ワッハッハー!」

「自称ね。自称、天災。」

 天災と書いて、天の災いという。

「いいのよ。私は天照の生まれ変わりなんだから! アハッ!」

 真理亜に怖いものなし。

「いや~、お茶がおいしいですな。」

「縁側でお茶を飲んでほっこりが一番幸せですね。」

 話に困ったら、ひたすら縁側でお茶を飲む大神姉妹。

「お茶の飲み過ぎで水太りしそうだわ。」

「じゃあ、お茶をやめて牛乳にする?」

「いや、それも同じ水分だし。」

「アハッ!」

 似た者姉妹である。

「それならお団子も付けるわよ。」

「それ、本気で太るからやめて。」

「アハッ!」

 食い気よりもスリムなボディ。

「やはりストーリーが必要だわ。毎回テーマを決めて書くのも疲れるし。」

「ほっこりひょうたん島とかどう?」

「それは、ひょっこり。」

「テレビの情報番組でほっこりは?」

「それは、スッキリ。」

「最近、油物がダメなのよね。」

「それは、こってり。」

「結局、ストーリーのない日常モノって、笑いに逃げるしかないのよね。それにじんわりのために毎回親戚のおじいちゃん、おばあちゃんに死んでもらうのも気が引けるし。どうしよう?」

「なんとなく、最近のアニメやドラマや映画を見ないのが分かる気がするわ。同じような内容ばっかりでコピーか、一度ヒットしたものの続編やリメイクばっかり。面白くなくて、ゲッソリするわ。」

「お姉ちゃん!? 気づいてる!?」

「え?」

「今だけで、ばったり、ばっかり、げっそりが使用されているのよ!?」

「スゴイ!? 私はやはり天才だ!?」

「天災ね。だから九州で大雨が降ったんだわ。全部お姉ちゃんの性よ。」

「はいはい。どうせ悪いことは全て私の性ですよ。」

「今の流れも医者もの、刑事モノ、探偵もの、どれでも使えそうな会話だわ。」

「流行語も意識して物語を作る時代なのよね。」

「アハッ!」

「はあ~、疲れたしじんわりするか。」

「それはじんわりでなく、ぐったりよ。」

「アハッ!」

 つづく。

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