第40話 ほっこりさんとじんわりさん
「とりあえず、映画版のようにゲストとして、ほっこりとじんわりを擬人化させるのはどうだろう?」
「面白そうね。その設定、採用するわ。」
「やったー! 私の企画が採用された! ほっこり。」
「おバカなお姉ちゃんにしてはよく頑張ったわね。」
「はあっ!? いつも厳しい楓に褒められた!? 悲しくないのに涙が零れてくる!? クスン・・・・・・、うええええええー!」
「うれし涙ね。その感情をじんわりというのよ。」
冒頭からほっこりとじんわり全開である。
「ほっこりさんとじんわりさんか、なんかキキとララみたいね。」
「アンパンマンとかにも出てきそう。」
これはイメージ的な例え話である。
「ていうか、いつの間にかタイトルコール無くなってるし!?」
「小説にはいらん。と会議でなった。」
「どんな会議だよ!?」
「〇〇少女ワールド政策委員会。」
あるような、ないような。
「それにしても、ほっこりさんと、じんわりさんって、こっくりさんみたいだな。」
「おお!? あの伝説のこっくりさん!?」
こっくりさんは学校のトイレに潜んでいる恐怖の大魔王らしい。
「ということは、ほっこりさんとじんわりさんは、別に心の温まる良い話でなくても良いのか!?」
逆説にたどり着く。
「新説! 実はほっこりさんとじんわりさんは悪い性格だった!」
「おお! まさに創作だな!」
「アハッ!」
なぜか盛り上がってくる大神姉妹。
「例えば、女湯を覗いて男が、ほっこり。それが女にバレて半殺しの刑にあってじんわりだ。」
「これはこれで間違っていないような気がする。」
その通り。
「この場合の逆で、私が男湯を覗く! ほっこり・・・・・・できない!? オエー! それが男にバレて「変態!」と言われまくってじんわり・・・・・・もう、お嫁にいけない。」
「それも正解といえば正解な気がする。」
真理亜はアフリカの大地で像の大軍を見た。
「そろそろ男性キャラクターが必要ね。」
「でも、この作品は〇〇少女ワールドよ?」
「いいのよ。細かいことは気にしなくて。だってアンパンマンにもバタコさんは出てきてるし、忍たま乱太郎にも、くノ一教室の女生徒が出ているじゃない。」
つまり、そういうこと。
「女性だけの話に男が現れて、ほっこり。男女の愛が成立すればじんわりよ。」
「あ、下ネタだ。」
幸せの涙が零れるお話になるとしておこう。
「そうか。男キャラクターを考えないといけないのか。」
急遽開かれる第一回、男キャラクター創作会議。
「どんな男キャラクターがいいのかしら?」
「お姉ちゃんはおバカだから、天才で真面目で生徒会長をやるようなイケメンと奇跡的な設定がウケるわ。」
「却下。そんな完璧な男はいない。それに私が疲れる。もっと楽な奴にして。」
「じゃあ、男もおバカにする? コンビニの前でヤンキー座りでたむろするわよ。お金に困ったらお姉ちゃんをオッサンに売ってお金儲けをするような最低なクズよ。それでいて自分のことを人気ユーチューバーとか言うゴミ野郎よ。」
「いや~!? ホッコリできない!?」
「どう? じんわり、想像すると涙が零れてきたでしょう。アハッ!」
悪趣味な妹の楓。
「疲れた。道端で1円拾ってほっこり、交番に届けてじんわりでいいよ。」
「後で5円、10円、50円、100円、500円バージョンもやらないでしょうね?」
「甘いな。我が妹よ。他に1000円、2000円、5000円、1万円バージョンもあるのだよ!」
「できる!? こいつ!? ただのおバカじゃないぞ!? 小賢しいというか・・・・・・。」
「おバカとは違うのだよ! おバカとは!」
まったくほっこり、じんわりできないシリアスな展開。
「お茶にするか。」
「そうしよう。」
縁側で熱いお茶を飲む大神姉妹。
「ほっこりしますな。アハッ!」
「お茶の温かさがじんわりしますな。アハッ!」
ここにほっこりとじんわりが極まる。
「楓、あなたは私の自慢の妹よ。」
「真理亜お姉ちゃんも。本当は私もお姉ちゃんのことが大好きだよ。」
「楓!」
「お姉ちゃん!」
普段仲の悪い姉妹が称え合い泣きながら抱き合う姿はほっこり、じんわりする心の温まる展開である。
「こんなものかしら?」
「そうね。どういう時に人はほっこり、じんわりするのか分かってきたわ。」
ただのフェイクだったりもする。感動した涙は返せない。ネット通販と同じで売りつければ終わり。お問合せなんかにはつながらない。ほっこり、じんわりさせれば勝ちなのだ。
「あの・・・・・・私たちの出番は?」
「ずっと待機しているんですけど?」
それはほっこりさんとじんわりさんだった。
「私も出ていいのか、帰っていいのか分からないんですけど?」
おまけのこっくりさんだ。
「ええー!? 私も出ていいんですか!?」
更におまけのへそくりさんだ。最後に「り」がつけば語呂がいいので登場できるらしい。
「恐ろしい新展開ね!?」
「これがニュータイプの実力・・・・・・じゃなかった。これが〇〇少女ワールドよ。」
「分かった! おまえたち全員、性別は男だ!」
「男!?」
「これで男キャラクター問題も解決だ! アハッ!」
真理亜の得意の強引な力技である。
「あと、ひょっこりもあったな。」
ひょっこりひょうたん島である。
「アハッ!」
少しずつだが山が動き出した。
つづく。
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