第39話 次なる夢の少女

「eスポーツになっちゃった! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 〇〇少女ワールドは大金の賞金が出る戦略シュミレーション・オンラインゲームです。

「天下布武じゃ! お友達になろうよ! アハッ!」

 姉の真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。

「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語。


「次は隣の新宿区を制覇するぞ! 天下布武じゃ!」

 真理亜は次の夢に向けて進み始めた。

「やめい!」

 そこを可愛げのない妹の楓が静止する。

「邪魔するな! 楓殿! 天誅でござる! 天誅でござる!」

「赤穂浪士かい?」

「アハッ!」

 ショートコントを挟みつつ。

「それなら東京都23区天下統一戦モード! 天下布武じゃ!

「それも、やめい!」

「じゃあ、東京、23区、市部、秘境!? 奥多摩地方の三つ巴バージョン! 天下布武じゃ!」

「却下。」

「それなら、それなら関東大会! 天下布武じゃ!」

「棄却。」

「それならそれなら東日本大会! 天下布武じゃ!」

「逮捕します。」

「それならそれならそれなら47都道府県! 日本統一モード! 天下布武じゃ!」

「懲役10年。」

「それならそれならそれならそれなら世界統一大会! 天下布武じゃ!」

「懲役20年。」

「それならそれならそれならそれならそれなら全宇宙統一戦! 天下布武じゃ!」

「無期懲役。」

「アハッ!」

 終身刑を言い渡される真理亜。非情な裁判官の楓であった。

「私にどうしろというのだ!? 楓!?」

「真理亜お姉ちゃん。よく聞いて。もう尺がないの。」

「尺?」

「そう。渋谷区を統一するだけで、7万5千字も使ったのよ。今から新しい戦地なんて無理。やっても早送りのすっ飛ばしにしかならないわ。」

「大人の階段上る。私はシンデレラさ。アハッ!」

 とぼけて乗り切ろうとする真理亜。

「大人なんか大っ嫌いだー! 私の青春を返せ!」

 泣きながら講義する真理亜。

「ということで。」

「どういうことだよ?」

 良く出来た小学一年生の妹の楓が話を変える。

「お姉ちゃんの次の夢を考えることにしたの。」

「おお! 次なる私の天下布武先じゃな! アハッ!」

 単純なので真理亜の機嫌は簡単に直る。

「発表します! お姉ちゃんの次なる夢は・・・・・・。」

「私の次なる夢は!?」

 おバカなので自分の夢を妹に考えてもらう真理亜。

「ほっこり! じんわり! です。アハッ!」

「ほっこり!? じんわり!?」

 真理亜の次の夢はほっこり、じんわりに決められた。

「ほっこり、じんわりって、なに?」

 首を傾げる真理亜。

「おバカなお姉ちゃんのために説明しよう。ほっこりとは良い話で心が笑顔になる温かいこと。じんわりとは涙が流れるくらい良い話ということです。」

「ほうほう。」

「現代人が忘れた幸せな気持ちというやつです。それを思い出させてくれるような、ほっこりとじんわりに挑むのがお姉ちゃんの新しい夢です。」

「ほうほう。」

 ほっこりとじんわりの説明が終わった。

「お姉ちゃん、分かった?」

「全然。」

「ダメだこりゃ!?」

「アハッ!」

 ここまではお休みの展開。

「分かるぞ! 私にも! 毎回、冒頭で試行して方向性を決めるから書き出しが弱い。それなら前の作品で次の作品の設定を決めてしまえば、次の作品を書く時、最初から世界観が出来ている面白い作品になるはず! という二段構えに作戦だ!」

「なぜだ!? なぜ!? おバカなお姉ちゃんにそんなことが分かるんだ!?」

「ただのおバカとは違うのだよ! おバカキャラとは!」

「まさか!? 超能力の未来予知!?」

 新しいサイキックに目覚める真理亜。

「物語とは先の先、二手三手先を読んで伏線を入れながら描くものなのだよ。」

「やるようになった!? 真理亜お姉ちゃん!?」

「アハッ!」

 褒められて喜ぶ真理亜。

「私は今、ホッコリしている。良く出来た妹の楓に褒められて嬉しいのだ。心が温かくなるな。ホッコリさんだ。」

「私を出し抜いたのが嬉しいだけでしょ?」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す真理亜。

「そんなにハッキリと言わなくてもいいよねん。クスン。」

「あ、じんわりした。」

「アハッ!」

 泣けばじんわりしたとしておこう。

「ホッコリは簡単だけど、じんわりするとなると、かなりの伏線を仕込んでおく必要があるな。」

「結局は人間の感情の起伏のことをいうものね。」

「道を歩いていて100円玉を拾った。新しいお友達ができた。100円玉でジュースでも買おう。これがほっこりだ。」

「いや、交番に届けろよ。」

「アハッ!」

 笑って誤魔化す真理亜。

「そして拾ったお金を交番に届けて、100円玉ちゃんとお別れする。「ああー!? 私の100円玉!?」これがじんわりだ。」

「微妙にあっているから怖いわ。」

「アハッ!」

 今日も真理亜は絶好調。

「とりあえず、ほっこりとじんわりの千本ノックでもしていれば、何かアイデアの神が舞い降りてくるだろう。」

「それまで私たちはほっこりと、じんわりを繰り返すのね。」

「つまりそういうこと。アハッ!」

 真理亜と楓は新しい夢に出発する。

 つづく。

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