第35話 夢の中の少女
「eスポーツになっちゃった! 〇〇少女ワールド! アハッ!」
〇〇少女ワールドは大金の賞金が出る戦略シュミレーション・オンラインゲームです。
「天下布武じゃ! お友達になろうよ! アハッ!」
姉の真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。
「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」
良く出来た妹の楓の物語。
「zzz。」
真理亜は宝物庫に封印されて、深く考えないので安心して眠りについていた。
「寝てるだけでいいっていうのも、幸せだな。」
夢の中でも真理亜は幸せ者だった。
「うるさい楓もいないし、ここが私の居場所な気がする! 現実なんて、大っ嫌いだ!」
独立は現実が待っている。夢の中でも真理亜は現実が嫌いだった。
「何がマインドコントロールだ! 何が姉より優秀な妹だ! ふざけるな! 小学一年生の分際で!」
真理亜のコンプレックスは、良く出来た妹の楓である。
「はあ!? どうして夢の中まで楓のことを考えているんだ!? 私の夢の中まで侵食する気か!? 楓め! 夢の中でも私の幸せを奪うつもりか!?」
褒められる妹。怒られる姉。お分かりですね? 真理亜は不幸なのです。
「真理亜ちゃん。」
その時、夢の中の真理亜を呼ぶ声がする。
「誰だ!? ばあさん!?」
現れたのは一人の年老いたおばあちゃんだった。
「私よ。私。」
「私という名前のお友達は私にはおりません。字余り。」
まだ誰か気づかない真理亜。
「神園町子よ! か、み、ぞ、の、ま、ち、こ!」
「ご冗談はおよしになってください。おばあちゃん。神園町子とは、傲慢知己で貸したお金も返さないような、ちょっと名前に神という字があるからって、巫女気取りで偉そうにしている嫌な女のことですよ?」
真理亜は神園町子のことを、そう思っていたようだ。
「ウギャアアアアアー!?」
次の瞬間、おばあちゃんのパンチが真理亜に炸裂する。
「おまえ、私のことをそんな風に思っていたのか!? ちゃんと言い直すか、永遠に夢の中を彷徨うか、好きな方を選べ!」
「はい! 神園町子ちゃんは平和を愛する、とても素敵なレディです!」
自分の命を優先した真理亜。
「よろしい。」
「ふっ~、助かった。」
命拾いして安堵のため息を漏らす。
「ところで真理亜ちゃん! 私が封印を解いてあげたんだのに、なんで宝物庫から出てこないのよ?」
「だって、良い子はお昼寝の時間だもん。アハッ!」
持論を展開する真理亜。
「ギラン!」
神園町子の神の目が怒りで光る。
「ウギャアアアアアー!?」
また真理亜は神の右フックをくらう。
「こらー!? 暴力反対! 神に使える者が庶民に暴力を振るってもいいというのか!?」
「真理亜ちゃん! あなた! 夢は忘れたの!」
「夢?」
「そうよ! 真理亜ちゃん! あなたには天下布武という立派な夢があったじゃない!?」
「私の夢? 天下布武?」
真理亜は自分の夢を思い出してみる。
「おお!?」
「思い出したのね!?」
何かを思い出した真理亜。
「お花のピエールに水を与える時間だった!?」
花の水やりの時間を思い出した。
「ウギャアアアアアー!?」
次の瞬間、神の左ジャブが炸裂する。
「じょ、じょ、叙々苑!」
思わず焼肉屋さんの名前が出てくる。
「あたたたたたたたたたったたたたたたたたたたたあたたたったたたたー!」
次の瞬間、神の連打が炸裂する。
「じょ、じょ、冗談です・・・・・・。」
さすがに観念してふざけるのをやめた真理亜。
「私は夢は捨てたんだ。」
ブツブツと夢について語りだした。
「私には優秀な妹がいて、がんばってテストで99点を取っても、楓が100点を取り、100メートル走で2番になっても、楓は1番だったり、私が県大会止まりでも、楓は全国大会に行く。」
真理亜の不幸な歴史である。
「だから私は夢は捨てたんだ。努力しても妹に敵わないから。」
これが夢を捨てた少女の本音である。
「おバカキャラとして、ヤンキーやギャルとして気楽に暮らす方がいいじゃん。だって楽だもの。誰にも期待されないって、気楽なんだもの。アハッ!」
自分で言っていても涙が流れてくる真理亜。
「夢は夢のままで。覚めることのない私の夢。」
こうして夢も希望も無くした少女は非行に走ったのだった。
「夢は見るものじゃない。」
「え?」
「夢は叶えるものよ!」
神園町子は神の言葉を放つ。
「あなたが夢を失ってしまったのは、誰の性でもないわ。あなた自身が夢を諦めたからよ。もし続けていれば、あなたの夢は叶ったかもしれない。」
「そ、そんなことを言われても・・・・・・。」
「つべこべいい訳ばかりしていないで、さっさと夢を叶えに行かんかい!」
「ウギャアアアアアー!?」
神の右アッパーカットが真理亜に炸裂して、宝物庫から真理亜をはじき出す。
「頼んだわよ。私の夢を。私の夢は真理亜ちゃんが明治天皇少女を倒して渋谷区を平和にすることなんだから。」
神園町子の夢は真理亜に託された。
つづく。
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