第34話 リーダーを争う少女たち

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「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語。


「誰が特攻少女隊リーダーになるか、決めない?」

 話はひょん所から始まった。誰が言い出したのかは分からない。

「そうね。命をかけて特攻する訳だし、無策で死ぬのは嫌ね。」

「そうしよう。リーダーを決めよう。」

 ということでリーダーを決めることになった。

「誰がリーダーになる?」

 なんと人間臭いこと。

「私は辞退します。」

 まず平和主義者の渋谷子がリーダーから辞退した。

「私がリーダーをやろう。」

 次に自ら名乗り出る恵比寿子。

「おまえがリーダーになるぐらいなら私がリーダーをしよう。」

 広尾子も名乗り出る。

「おまえたちでは心配だ。私がリーダーをやってやろう。」

 比嘉死子も名乗り出る。

「おまえたち、リーダーの経験があるのか? 実績からいって私がリーダーに一番ふさわしい。」

 神宮前子も名乗り出る。

「おまえたち、自分の国にウイルスを打ち込まれたことがあるか? やはりリーダーには悲しみを知っている私がなるべきだ。」

 千駄ヶ谷子も名乗り出る。

「このままではリーダーが決まらない!?」

「まるで円卓の騎士ではないか!?」

 そう、リーダーを巡って一触即発の殺し合い寸前であった。

「どうやって、リーダーを決める?」

「やはり殴り合いの実力勝負か?」

「じゃんけんはどうだろう?」

「平和的に多数決でいいんじゃないか?」

「そうしよう。」

 リーダーは多数決で決めることになった。

「それでは多数決を始めます。」

「おお!」

「恵比寿子がいい人?」

「はい!」

「一名。」

「広尾子がいい人?」

「はい!」

「一名。」

「比嘉死子がいい人?」

「はい!」

「一名。」

「神宮前子がいい人?」

「はい!」

「一名。」

「千駄ヶ谷子がいい人?」

「はい!」

「一名。」

 もちろんリーダーに5人立候補しているのだから、当然の結果である。

「渋谷子! あなたは誰に入れるの?」

「ええー!? 私ですか!?」

 そしてリーダーを辞退した渋谷子の投票で誰がリーダーになるかが決まる。

「渋谷子! 私がリーダーになったら、おまえに伊勢海老をやろう!」

「伊勢海老!?」

 恵比寿だけに海老なのだ。

「汚いぞ!? 買収する気か!?」

「勝てばいいのだよ! 勝てば!」

「それなら私はセレブタウン広尾の一軒家をやろう! これでおまえもセレブの一員だ!」

「セレブ!?」

 広尾はそういう所である。

「ちょっと待った! 私なら、おまえの寿命を延ばせるぞ! なんせ比嘉死子で死を司る住所だからな。」

「寿命!?」

「騙されるな! こいつらは私利私欲の塊だ! この愛に溢れる神宮前子こそ、リーダーに相応しんだ!」

「愛!?」

「えっと、私がリーダーになった暁には駄菓子を1000個あげよう。庶民的だろ。」

「駄菓子・・・・・・。」

 千駄ヶ谷子は完全なオチ要員になっていた。

「さあ! 誰をリーダーにするんだ!」

「うわあああああー!?」

 5人の熱量に気圧される渋谷子。

「ゲホッ・・・・・・。」

 そして気絶して倒れた。

「こらー!? 寝るな!?」

「死ぬならリーダーを決めてから死ね!」

「こういう時って、大丈夫か!? とか声をかけないか?」

「仕方がない。リーダーの座がかかっているんだ。」

「誰がリーダーになるかで自分の生存率が大きく変わって来るからな。」

 つまり自分のことが一番カワイイのである。

「う、うう。」

 揺すられ叩かれ渋谷子が目を覚ました。

「おお!? 要救護者が目を覚ましたぞ!?」

「誰がリーダーになるか、さっさと決めてくれ!」

 重病人を急かす医師と看護師たち。

「ううう。」

 しかし渋谷子の様子が少し変だった。

「私の宿木にしている体に危害を加えたのは、おまえたちか!?」

 控えめな平和主義者、渋谷子が珍しく自己主張している。

「なんだ!? こいつは!?」

「さっきまでと別人格ではないか!?」

「まさか!?」

「どうした?」

「こいつは二重人格者!?」

「なんだって!?」

 そう、渋谷子は二重人格者である。

「私は二重人格者などではない! 私は神なのだ!」

「神!?」

 渋谷子に寄生していたのは神様であった。

「そうだ。私は本の神なのだ。」

「本の神!?」

 渋谷子の正体はブック・ゴットであった。

「よくも私の体を傷つけたな。おまえたちは本の角でキツツキの刑だ!」

「ギャアアアアアアー!?」

 本神は本の角で少女たちに襲い掛かる。本の角は想像以上に痛いので、叩かれると血を拭いて倒されていく。

「なんとかしろ!?」

「そうだ!? 本なら水に弱いはず!? 水をかけろ!」

 水をかけられる本の神。

「ふっふっふ。今時の本は防水加工済みさ。」

「防水加工だと!?」

 そんな本があるだろう。

「水が効かないなら、今度は火で燃やしてやる!」

 火を投げつけられる本神。

「ふっふっふ。更に今時の本は防火加工済みだ。」

「防火加工!? そんなのありか!?」

 ありなんです。

「我が器に歯向かった罪は万死に値する! くらえ! 本の神! 奥義! ブック・コーナー・アタック!」

「ギャアアアアアアー!?」

 余りにも悲惨な光景であった。良い子は絶対に真似をしてはいけない。

「え!? 私がリーダー!?」

 渋谷子が目覚めると満場一致でリーダーにされていたのだった。

 つづく。

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