第29話 宇田川少女

「eスポーツになっちゃった! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 〇〇少女ワールドは大金の賞金が出る戦略シュミレーション・オンラインゲームです。

「天下布武じゃ! お友達になろうよ! アハッ!」

 姉の真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。

「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語。


「暗いよ! 狭いよ! 怖いよ! ここから出してくれ!」

 宝物庫に閉じ込められた真理亜。

「zzz。」

 しかし本当は叫ぶことなくお昼寝をしてくつろいでいた。

「ええー!? 私の出番はないのかよ!? 私は主人公だぞ!?」

 寝ているシーンがあるだけでも主人公の特権だ。アハッ!

「この私にフライドポテトを買いに行かせるなんて、思い直したら、やっぱり許せませんわ! これは、いじめよ! パシリ絶滅運動をしなければ!」

 正義感の強い神園町子がフライドポテトをしっかり買ってやってきた。

「おまえは!?」

 その時、神園町子は一人の少女と出会う。

「誰だ?」

「私は明治天皇少女だ!」

 現れたのは宝物庫に封印されていた明治天皇だった。

「明治天皇!? のコスプレをした人ね。最近多いのよね。原宿の駅前でコスプレ衣装を着て小銭を稼ぐ人が。困るわ~、明治神宮の中まで入って来られては。」

「どうもすいません。失礼しました。」

 怒られて立ち去ろうとする明治天皇少女。

「はあっ!? なんでやねん!」

 なぜか関西弁がでる。

「おまえは私を封印した憎い神園家の末裔だな!」

「いえ、違います。人違いです。オッホッホッホ。」

「え!? 人違いでしたか!? 申し訳ありません。」

「それでは失礼いたします。お友達がお腹を空かせて待っていますので。」

 神園町子は立ち去ろうとする。

「ちょっと待て!」

「なんでしょうか?」

「どうして中に入っていく? この先は本殿しかないぞ。」

「お友達がドリンクバーで待っているものですから。」

「ドリンクバー!?」

 その言葉に明治天皇は敏感に反応した。

「なぜだ!? なぜおまえのような小娘が人類最終兵器のドリンクバーの名前を知っている!? いったいこの時代はどうなっているのだ!?」

「さっきからおかしな事ばかり言うコスプレイヤーさんね。それとも本当に明治神宮に祀られている明治天皇とでもいうのかしら?」

「だから、さっきから本物だと言っているではないか!?」

「ええー!? そうなの!?」

 ここで初めて神園町子は目の前のコスプレ少女が、明治神宮に祀られている明治天皇だと気づいた。

「どうして明治神宮に封印されているはずの明治天皇がここにいるのよ!?」

「ある、おバカな少女が宝物庫に封印されていた私の封印を解いてくれたのだ! ワッハッハー!」

「まさか!? アイツか!? アイツならやりかねない!?」

 神園町子の脳裏に真理亜の姿が思い浮かぶ。

「気づいたところでもう遅い! 我が100年の恨みを思い知るがいい! 神園家の末裔よ!」

 封印されていた間に明治天皇の恨みの魔力は強大になっている。

「そうはさせるものですか! 神園家の末裔として! 明治天皇! もう一度あなたを封印してやる!」

「できるものならやってみるがいい!」

 ここに100年前に戦いが現世で繰り返される。

「受けてみろ! 明治天皇! 神園家に代々伝わる封印の必殺技! 明治天皇封印!」

 神園町子から膨大な封印のエネルギーが明治天皇に向かって行く。

「うわあああああー!? 嫌だ!? 封印されたくない!?」

「宝物庫に戻れ! 軍国主義者! おまえみたいなやつがいるから日本は一度滅んだのだ!」

「キャアアアアアアー!?」

「やったか!?」

 封印のエネルギーに藻掻き苦しむ明治天皇。

「なんちゃって。」

 ニヤッと笑う明治天皇少女。

「なに!?」

「私は100年の間、恨みのパワーを蓄えてきたんだぞ? 平和ボケの神園家の末裔ごときに、今の極限まで負のパワーが高まった私を倒せるはずがない!」

「そ、そんな!?」

「それに私を封印できるのは、私を封印から解いてくれた者だけだ。」

「では!? あの無銭飲食おバカ野郎だけだというのか!?」

 真理亜です。

「そうだ! おまえには最初から私を封印する力はなかったのだ! ワッハッハー!」

 勝ち誇る明治天皇少女。

「そ、そんな・・・・・・。」

 希望が無くなり絶望する神園町子。

「おまえの若さを吸い取ってやろう! 明治天皇少女奥義! ヤング・エネルギー・ドレイン・タッチ!」

「ギャアアアアアアー!? 私の若さが吸い取られる!?」

 見る見るうちに神園町子の生気が吸い取られていく。

「もう、おまえは○○少女ではない。これからは○○おばあちゃんとして生きていくのだ! ワッハッハー!」

 勝ち誇る明治天皇少女であった。

「宇田川! 取ったぞー!」

「やられた!? バタッ。」

 その頃、渋谷区渋谷は宇田川町に攻め込み、見事に宇田川子を倒すことに成功した。

「おい!? 遂には誰が攻め込んだとかなくなったぞ!?」

「私は宇田川よ!? 渋谷センター街なんだから、もう少し出番があってもいいんじゃないの!?」

 両軍共に不満が募る。

「分かる! 分かるぞ! おまえの気持ちが!」

「おお! 我が友よ! 私も同じ気持ちだ!」

 同じ不幸な境遇を経験して悲しい傷を舐め合う○○少女たち。

「今日から私たちは、お友達だ!」

「お友達最高! ビバ! お友達!」

 こうして渋谷区渋谷は宇田川町を手に入れるお約束の展開である。

「これでいいのか?」

「これでいいのだ! アハッ!」

 つづく。

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