第27話 千駄ヶ谷少女

「eスポーツになっちゃった! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 〇〇少女ワールドは大金の賞金が出る戦略シュミレーション・オンラインゲームです。

「天下布武じゃ! お友達になろうよ! アハッ!」

 姉の真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。

「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語。


「あれ? 井戸はどこだったっけ?」

 真理亜はだだっ広い明治神宮で迷子になっていた。

「たどり着いたのが宝物庫。アハッ!」

 まるで引き寄せられるかの様にたどり着いてしまった。

「ネット検索したけど、明治神宮にお宝はない。さっさと井戸の水でも飲み干しに行くか。」

 宝物庫を立ち去ろうとした真理亜。

「ん? ぬぬぬぬぬー!? なんだ!? 体が引き寄せられる!?」

 井戸に向かおうとした真理亜の体が呪われたかのように宝物庫に吸い寄せられる。

「体の自由が利かない!? 私は井戸水を飲みたいのに!?」

 引き寄せる力は真理亜の食欲よりも強かった。

「なんだ? 宝物庫を開けろというのか?」

 しかし宝物庫は厳重に鎖で何重にも巻かれていた。

「なになに? この宝物庫、開けるべからず。」

 丁寧に宝物庫を開けるなと張り紙があった。

「じゃあ、そういうことで。」

 開けないで去ろうとする真理亜。

「いてててててっ!?」

 しかし宝物庫の重力に引き寄せられる真理亜。

「分かった! 私の負けだ! 開けてやるから、私に触れるな!」

 根負けした真理亜の体は呪いが溶けて軽くなった。

「超能力少女! 真理亜の名において命じる! 開け! ゴマ!」

 真理亜は超能力少女らしくサイキックの力で宝物庫を開けようとした。

「あれ? 開かないぞ。」

 しかし宝物庫はうんともすんとも言わなかった。

「こらー!? 私はこの物語の主人公だぞ! その私が開けようとしているんだから無駄な抵抗はするな!」

 真理亜のプライドが傷ついた。

「ふっふっふ。どうやら私を怒らせたようだな。宝物庫。」

 余裕の微笑みを見せる真理亜。

「私がガパオ流ムエタイの正統継承者! 一子相伝にして最強のアハ神拳! 世紀末アハ救世主! サイキック少女、真理亜と知っての抵抗なんだろうな?」

 宝物庫を相手に長い口上をする真理亜。

「くらえ! 超能力少女! 最強奥義! トム・ヤム・クン!!!!!!!!!」 

 ただのタイキックである。

「ドカーン!」

 宝物庫の封印は一撃で解かれた。

「ガパオの掟は私が守る! アハッ!」

 得意げな真理亜。

「さあ、宝物庫のお宝は何かな~。」

 果たして真理亜が目にした物とは!?

「本当にやるのか?」

「仕方がない。代々木子様の命令だ。」

「それに地元の人々が人質に取られているんだぞ。やらなかったら、どうなるか。」

 本町子、幡ヶ谷子、笹塚子の三人は千駄ヶ谷にやってきた。

「許せ! 千駄ヶ谷!」

 決心した三人は行動を開始する。装備はフルフェイスのマスクと大きなタンクを背負っていた。

「がっがっがー! どうだ! 代々木! どんなに攻めてこようが、この新造基地の新国立競技場は落とせんよ! 神宮前でも落とせなかったのだからな! がっがっがー!」

 得意げに笑う千駄ヶ谷子(センダ・ガヤコ)。

「敵襲です! ヶ谷子様!」

「なに? 敵襲? どこに敵がいるというのだ? 何も見えないぞ。」

 確かに敵の大群の姿は見えなかった。

「細菌兵器です! 敵は千駄ヶ谷にウイルスをバラ撒いています! 住民たちが次々と倒れています!」

「なんだと!? 細菌兵器!?」

 代々木は千駄ヶ谷に新型ロナ・ウイルスをバラ撒いたのである。

「一方的じゃないか!? こんなもの戦争であるか!? ただの虐殺だ!?」

 目に見えない細菌兵器はマスクをする以外に防ぎようはなかった。

「うわあああああー!?」

 鉄壁の要塞、新国立競技場の中の兵士も苦しみ倒れていく。

「ミスったわ!? ケチってエアコンをつけないで、自然の風を取り組む空調にしたのが裏目にでたか!?」

 新国立競技場を完全密閉型にしておけば良かったね。

「ヶ谷子様! 早くお逃げください!」

「バカ者!? 民を見捨てて私だけ逃げるなどできるものか!? 戦いの準備をしろ! 一矢報いるぞ!」

「いけません! ヶ谷子様が健在なら、いつか、千駄ヶ谷は再興できます! どうか! お逃げください!」

「ぬぬぬぬぬっ!? 私はどうすればいいのだ!? 民を捨てて逃げるべきなのか!? それとも、ここでみんなと一緒に討ち死にするべきなのか!?」

 兵士たちの説得に苦悩する千駄ヶ谷子。

「逃げるんだ! ヶ谷子!」

 そこに一人の少女が現れる。

「お、おまえは!? 神宮前子!?」

 現れたのは神宮前子だった。

「なぜ!? おまえがここにいる!?」

「私たちは千駄ヶ谷攻略のために新国立競技場の真下までトンネルを掘っていたのだ。」

「トンネルだと!?」

 新しい地下鉄が走るかもね。アハッ!

「さあ! 一緒に逃げよう!」

「なに!? なぜ敵である私を助けようとする!?」

「昨日の敵は、今日のお友達だ!」

「長らく戦ってきた私たちにはお互いを認め尊重し合う友情が芽生えているというのか!?」

「そんなことはどうでもいい! 早く非難させないと千駄ヶ谷は全滅するぞ!」

「分かった! 千駄ヶ谷民は地下トンネルへ避難だ!」

「ははあ!」

 こうして千駄ヶ谷民は地下トンネルを通って神宮前に避難したのであった。

「ワッハッハー! どうだ! 新型ロナ・ウイルスの実力は! ワッハッハー!」

 代々木は千駄ヶ谷を手に入れた。

 つづく。

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