第26話 丸山町少女

「eスポーツになっちゃった! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 〇〇少女ワールドは大金の賞金が出る戦略シュミレーション・オンラインゲームです。

「天下布武じゃ! お友達になろうよ! アハッ!」

 姉の真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。

「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語。


「おい! 誰かいないのか? ドリンクバーの飲み物が全部空っぽになってしまったんだが。」

 未だに明治神宮に住み着いた真理亜はドリンクバーのジュースを全て飲み干していた。まさにドリンクバーが干ばつを起こしていたのであった。

「あっ! そうだ!」

 真理亜は何かに気がついた。

「ここに来るまでに井戸があったはず! 純粋な湧き水でも飲ましてもらおうかな! アハッ!」

 こいつの胃袋は底なしか!? と思いたくなるような感じ。

「井戸井戸! 井戸に移動しよう! アハッ!」

 難しいオヤジギャグを残して真理亜は明治神宮を後にして井戸を目指した。

「漁夫の利だ!」

 その頃渋谷区北西部を支配した代々木は、長らく神宮前と戦闘状態の千駄ヶ谷に側面から攻め込んだ。

「ギャアー!? 敵襲!? 敵襲だ!?」

 もちろん千駄ヶ谷内はパニック。

「挟み撃ちだと!? 神宮前は代々木とも手を組んだというのか!?」

 神宮前は渋谷区渋谷と同盟を結んでいる。

「千駄ヶ谷が攻められている? どこに?」

「代々木です! 北方を制圧し終えて、代々木軍が千駄ヶ谷に侵攻を始めた模様です!」

「なんということでしょう!? 私たちが持久戦で疲弊しているのを知ってて割り込んでくるとは、代々木! 許せません!」

 神宮前子は、代々木の行為を卑劣だと思った。

「千駄ヶ谷に援軍を送るぞ!」

「ええー!? 敵ですよ!?」

「敵であっても、長い間一緒に戦ってきた少女同士! 我々以外での決着を認める訳には行かないでしょう! 」

「はい! 直ちに援軍の準備をします!」

 敵に塩を送る。それが神宮前子の生き方である。

「ワッハッハー! 我は渋谷区の王! 代々木子だ! もうすぐ渋谷区は代々木によって統一されるのだ! ワッハッハー!」

 覇王になろうとしている代々木子(ヨヨ・キコ)。

「千駄ヶ谷は神宮前との戦いで疲弊して、もう戦えないはず。一気に攻め込んで皆殺しにするのだ!」

 しかし、その戦術は勇ましいのではなく狡猾だった。

「渋谷区だけでは終わらんぞ! 渋谷区を統一した次は23区対抗戦! さらに東京都対抗戦! おまけに関東対抗戦! 次は東日本対抗戦! そして47都道府県対抗戦! 日本を統一するのだ! 天下布武だ! ワッハッハー!」

 渋谷区の戦いの先を見据える代々木子であった。

「私は〇〇少女ワールドの織田信長になってやる! ワッハッハー!」

 代々木子の野望である。

「籠城だ! 籠城だ! 守りを固くしろ! 新国立競技場は、そうやすやす落ちたりはせんよ!」

 千駄ヶ谷子は代々木の圧倒的な軍勢に防戦一方だった。新国立競技場は新造の競技場ではなく、難攻不落のお城であった。

「なぜだ!? なぜ!? 千駄ヶ谷ごときが落とせないのだ!?」

 神宮前でも簡単に落とせなかった千駄ヶ谷。代々木子ごときで落とせるはずがなかった。

「それが千駄ヶ谷には新国立競技場や新宿高島屋などの施設が充実しており、そう簡単に落とせるような住所ではありません!?」

「黙れ! 黙れ! 黙れ!」

 兵士の報告にイラつく代々木子。

「そっちがその気なら、こっちにも奥の手がある。本町子! 幡ヶ谷子! 笹塚子!」

「はい! 代々木子様!」

「おまえたち、千駄ヶ谷で、あれをやってこい。」

「ま、まさか!?」

「そのまさかだ。」

「しかし、あれをやってしまえば千駄ヶ谷が死の街になってしまいます!?」

「黙れ! 現代戦争で細菌兵器は当たり前だ!」

 代々木子の奥の手は細菌兵器だった。

「それとも、おまえたちの地元でロナ・ウイルスをバラ撒いてやろうか?」

「・・・・・・。」

 地元愛のために黙ることしかできない3人。

「よく考えて返事をしろ。おまえたちの地元の人々は私の人質になっているということを忘れるなよ。ワッハッハー!」

 代々木子は策略や恐怖で唇を噛み締めている〇〇少女たちを思う様に動かしていたのだった。

「行け! 千駄ヶ谷に新型ロナ・ウイルスをぶち込んでやるのだ!」

「ははあ!」

 代々木は代々木子の恐怖の独裁政治であった。

「やっとでました! 私たち!」

「ちょっと私たちの出番って、少なくない?」

「悲しいね。クスン。」

 ここは円山町。渋谷区渋谷の攻撃部隊の代官山子、猿楽町子、鶯谷町子が出番の少なさを愚痴っていた。

「おまえたちはまだマシだ!」 

 そこに一人の少女が現れる。

「誰だ!?」

「私は円山町子! 松濤に占領された時も登場できず、やっと今回タイトルになったと思ったら、残り300字での登場! 私にどうしろというのだ!」

 円山町子の苦悩である。

「分かる! 分かるぞ! その気持ち!」

「そうだ! 我々も同じような扱われ方だ!」

「この切なさを共感できるぞ!」

「おまえたちも同じ気持ちなんだな! おお! 同士よ!」

「うええええーん!」

 4人は互いに抱きしめあいながら不遇な待遇を泣きあって慰め合った。

「私たちはお友達! アハッ! ウッキー! ホウホケキョウー! お主も悪よのう! ワッハッハー!」

 こうして渋谷区渋谷は円山町を手に入れた。

「これでいいの?」

「これでいいのだ! アハッ!」

 細かいことは気にしない〇〇少女ワールド。

 つづく。

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