第25話 道玄坂少女

「eスポーツになっちゃった! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 〇〇少女ワールドは大金の賞金が出る戦略シュミレーション・オンラインゲームです。

「お友達になろうよ! アハッ!」

 姉の真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中。

「こんなお姉ちゃんでごめんなさい。ペコッ。」

 良く出来た妹の楓の物語。


「いや~、飲み放題は良いですな~。アハッ!」

 真理亜は明治神宮でドリンクバーを楽しんでいた。

「おまえ! 早く帰れよ!」

「大丈夫! 私がいなくても優秀な妹が軍の指揮を執っているからな。いつまでもドリンクバーを楽しんでやる。」

 神園町子は迷惑していた。

「そういえば、揚げたてポテトの無料クーポン券を持ってたんだ。使うわ。」

 無料クーポン券を差し出す真理亜。

「く、く、悔しい!?」

 なぜか言い返すことが出来ない町子。

「ポテトを揚げるフライヤーが無いから、駅前のマクドナルドまで買いに行ってくるか。」

 町子は本殿を後にした。

「ドリンクバー! 最高!」

 真理亜は貸し切りでドリンクバーのドリンクを大蛇の如く飲み続けている。

「お姉ちゃんが行方不明!?」

 渋谷区渋谷にも激震が走っていた。

「わ~い! 邪魔者がいなくなった! 正に天下布武への道が開けた! アハッ!」

 妹の楓は姉を心配していた。

「時は来た! 渋谷区渋谷の全お友達諸君! これから私たちは渋谷区を統一するために、北伐する!」

「おお!」

 時は来た! 北伐する。何か流行語大賞が取れそうな勢いである。

「部隊を三つに分けて、道玄坂、円山町、神泉町の三か所に攻め込む。」

 渋谷の南を制圧して大所帯になった渋谷区渋谷は軍議らしくなってきた。

「広尾子、比嘉死子、恵比三姉妹は道玄坂を攻めろ。おまえたちのデビュー戦だ。心してかかれ。」

「はい!」

「代官山子、猿楽町子、鶯谷町子は円山町へ。小さいからと油断するなよ。」

「はい!」

「鉢山町子、南平台子、桜丘町子は神泉町に。最悪の場合、神山町や松濤から援軍が来る可能性がある。気をつけよ。」

「はい!」

 それぞれのお友達たちに指示を終えた小学一年生の楓。

「それでは北伐開始じゃ! 渋谷区を統一するぞ! 天下布武じゃ!」

「おお!」

 一致団結して北伐を開始する渋谷区渋谷であった。

「あの。」

「どうしたの? 谷子ちゃん。」

「私たちは何をするの?」

「私はお家でレインボーケーキを作ります!」

「ええー!? みんなは命がけで前線に行くのに、楓ちゃんはお菓子を作っているの!?」

 楓は真理亜の妹なので、こういう奴です。

「そういう谷子ちゃんも毒見役だから本拠地でお留守番よ。だから私たちは共犯よ。アハッ!」

「私は犯罪の濡れ衣を着せられてしまった!?」

「いいじゃない。戦地に行かなくていいんだから。死ぬことはないのよ。アハッ!」

「それはそうだけど。なんかみんなに申し訳ない。」

「気にしない。気にしない。一休み。一休み。」

「zzz。zzz。zzz。」

 ちなみに真理亜と戦い魔法力を使い果たしたアリアは眠っている。

「いい! これは私たちの渋谷区渋谷での初陣よ! 手柄を立てて出世の道を切り開くわよ!」

「おお!」

「あんたたち、私の後についてきなさい!」

「はい! 恵比お姉さま!」

「私たちにかかれば道玄坂なんてイチコロよ!」

 広尾子、比嘉死子、恵比三姉妹は道玄坂攻略にやってきた。

「ようこそ! 世界でも有名な日本の観光スポット! 一度に3000人が横断歩道を渡っても他人にぶつからないという神秘のパワースポット! 恐怖のスクランブル交差点とは、ここのことだ!」

 その時、一人の少女が現れる。

「妙な口上をたれているおまえは何者だ!?」

「私は、この道玄坂の守護少女! 道玄坂子(ドウゲン・ザカコ)だ!」

 現れた少女は道玄坂子だった。

「おい!? 国主少女から守護少女に代わったぞ!? いいのか!?」

「道玄坂を守っているという点では問題ないんじゃないかな?」

「細かいことは気にしないのが〇〇少女ワールドだ!」

「おまえたち、話し合いは終わったか?」

 律儀に待っている道玄坂子。

「もう少しお待ちください。」

「その間、私たちのセレブなダンスをお楽しみください。」

 タララララララ~ンっとダンスを踊る恵比西子と恵比南子。

「待たせたな!」

 話し合いが終わった広尾子たち。

「素直に降伏しろ! そうすれば命だけは助けてやる!」

「誰が命乞いなどするか! 私は道玄坂だぞ! あの道玄坂なのだ! 世界に羽ばたく道玄坂が、なんでおまえたちみたいな雑魚に投降しなければならないのだ!」

 怒った道玄坂子は〇〇少女パワーを全開する。

「5対1で勝てると思うなよ!」

 ズンズンっと距離を詰めて脅す広尾子たち。

「か、数の暴力だ!?」

 恐怖に震え怯える道玄坂子。

「参りました。」

 そして負けを認める道玄坂子。

「私の負けだ!? 煮るなり約なり好きにしてもらおうか!?」

「お友達になりましょう。」

「え?」

 手を差し伸べる広尾子。

「今日から私たちはお友達よ。何も争う理由は最初からないんだから。」

「なる! お友達になる!」

「アッハッハッハー!」

 こうして新しいお友達を手に入れて渋谷区渋谷は道玄坂を制圧した。

「これでいいの?」

「これでいいのだ! アハッ!」

 対して活躍していない主人公であった。

 つづく。

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