第9話 古木さんとのデートは簡単には終わらない
「ねぇ、湯山くん…このまま本当に付き合わない?」
女子からの初めての告白。
僕は一体どうすればいいんだ…?
3時間前の僕にはこんなことがこれから起きるなんて思ってもいなかった。
◇
今日は古木さんの彼氏役をやる日。
事前にTINEで教えられた古木さんの家の住所をナビアプリで調べて現在向かってる最中。
前回の山宮さんの同様に春に服装等の手厳しいチェックを受けて来たので問題ないはず。
ナビによると後数分で着くようなのでとりあえず古木さんに「後5分程で着くよ」とTINEをする。
すると「Mari:うん!待ってるね!」と返信と共に可愛らしいスタンプも。
なんか本当にデートの待ち合わせみたいで少しばかり気持ちが高ぶってしまう。
まあでもフリをするだけだからな。そうフリだけ。
淡い期待など持ってはいけない。
古木さんの家に着きTINEを入れて待っていると急に視界が真っ暗になる。
えっ、これやばくない?
ドラマとかで誘拐される時の典型的なパターンんじゃない?
「だーれだ?」
耳元で囁く可愛い声と目を隠す手からはボディークリームの匂い。
「え、えっと…古木さん?」
「えへへ、せいかーい!」
…何ですかねこの可愛い生き物は。
危うく落ちてしまいそうだ。
「それでお母さんは?」
「あー、それが突如来れなくなっちゃったの」
「なるほど。でもデートはすると?」
「うん。お母さんからは私たちの写真頼まれちゃったし」
「ならしょうがないか」
まあ元々古木さんのお母さんの前で彼氏のフリだけすれば良かったからいないって分かってるなら気は楽だ。
「じゃあ行こっか!」
そう言われながら不意に繋がれた手。
「ふ、古木さん!?」
「んー?なーに?」
「こ、これは?!」
「今日は私の彼氏なんでしょ?」
イタズラっぽい笑顔で言われると可愛さのあまり何も言えない。
「ま、まあ一応な」
「ならいいでしょ」
そう言うと嬉しそうに手を引っ張って僕の少し前を歩く。
でも段々と歩くスピードを落として僕の隣に来て並んで歩こうとする姿がとても可愛らしい。
目的地に着くまでは古木さんと学校での話やプライベートな話をして、僕の知らない古木さんの一面等を知ることが出来た。
◇
今回のデートの目的地である大型ショッピングモールに着くとまずは館内図の確認。
どこにどの店があるか、どの順番で回るかを古木さんと話し合いながら決めていくがデートということもあり基本は古木さんの回りたい所がメイン。
そうなると回るのはもちろん……。
「うん!これ可愛い!」
鏡前でいくつもの服を合わせながら確認しているのを僕はただ見ているだけ。
よく女子の買い物は長いと言うがその通りだと思う。
今もこうして1つ目のお店だが既に15分以上経っている。
「ねぇねぇ、こっちとこっちどっちがいいと思う?」
「え?んー、左かな」
「じゃあこっち買ってくるね!」
僕の選んだ方の服を持ってレジへ。なんか本当にデートみたい…。
その後も数点服屋を回って1回休憩を挟むためにフードコートにやって来た。
僕はアイス、古木さんはタピオカをそれぞれ注文。
休日のお昼時ということもあり周りは子供連れの家族でいっぱいで空いてる席を探すのも一苦労。
5分程探してようやく2人用の席を見つけてやっとゆっくりと落ち着ける。
溶け始めていたアイスを食べていると。
「なんかまだ午前中だけだけど湯山くんとお出かけするの楽しいな…」
「そう?」
「うん。なんかいい意味で気を使わなくていいし…居心地いい」
言った後恥ずかしくなったのかすぐにストローを咥えて俯いてしまう古木さん。
ちょっとそれは反則では?
そんなのされたらこっちまで恥ずかしくなるし意識してしまう。
「ねぇ、湯山くん…このまま本当に付き合わない?」
「……えっ?」
「私は割と本気だよ」
僕の答えは瞬時には出ず、黙ることしか出来なかった。
クラスメイトの関係から彼氏彼女の関係に。
今の僕にはとても考えられない……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後まで読んで下さりありがとうございます。
完全に曜日感覚がズレてて昨日が土曜日だと思ってました……本当に申し訳ないです。
次回でようやく10話ですね。
それでは次回もよろしくお願いします。
暁ノ夜空
曖昧な関係に終止符を 暁ノ夜空 @okitegami_413
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