第8話 山宮さんのお母さんは苦手なタイプでした






 海に行った翌日。



 僕は学校の校門前に1人立っていた。



 何故夏休み中に学校前まで来てるのかは昨日…。








 ◇








「ちょっと頼み事があるのよ」



 山宮さんにそう言われ呼び出された僕。



 言われるままについて来て人目がつかなそうな岩陰に。



 えっ? これやっぱりボコボコにされるよね?



「あんたいい加減殴るわよ?」



「命だけは勘弁」



 男子と2人きりというのに冷静でいる所は素直に尊敬する。



「それでお願いっていうのは?」



「…とても言いにくいんだけど明日予定あるかしら?」



「明日?」



 まあ特に予定がある訳でもなく、ただ夏休みの課題をやろうかなと思ってただけだし無いに等しい。



「えぇ、実は明日お母さんと出掛けることになってて」



「待って。その家族の時間に僕が必要なの?」



「話を最後まで聞いてもらえるかしら」



「ごめんなさい」



 すると1つため息を漏らし、なんだか呆れた表情を見せた。




「それでお母さんから『仲のいい男の子とかいないの?いるなら連れて来てよ!』なんて言われてしまって」




 ふーん、それで僕が呼ばれたと。



 それにしてもちょっと意外だったな。



 山宮さんはあまり誰かと親しくしてるのを見ないし、女子でさえも近寄り難い感じなのに。



「分かったよ。どうせ拒否権ないんでしょ?」




「そうね。急だったから」









 ◇







 ということです。




 山宮さんの男友達として恥ずかしくないように朝早く起きて普段しない髪のセットもして、服も春に何度もチェックしてもらった。



 春、こんなダメなお兄ちゃんでごめんな。



 待ちながら携帯を弄っていると僕の前に1台の黒い車が止まる。



 すると窓が開き中から山宮さんが顔を出して乗るように促す。



「えっ…その隣でいいのか?」



「いいから早くしなさい…こっちだって恥ずかしいんだから」



 おぉ、何だこのツンデレ少女。



 危うく恋してしまいそうだったぞ。



 自動でドアが開き、緊張気味に車へ乗ると助手席には山宮さんのお母さんらしき人物が。



「あなたが湯山くんね。いつも唯花がお世話になってます」



「いえいえ、こちらこそ素敵なお嬢様と仲良くさせて頂き誠に光栄でございます!」



 馴れない喋り方が面白かったのか山宮さんは隣でクスクス笑いながら僕の腕を抓っています。



 笑うのはまだしも抓るのはおかしくないですか? まあご褒美だと思っときます。



「それで湯山くん」



「はい!」



「ウチの子と結婚する気はないかしら?」



「……はい?!」



「ちょっとお母さん!?」



 あまりのこと過ぎて全く状況が整理出来ない。



 僕は山宮さんのお母さんと挨拶的なのを交わしてたはず。それなのに急に結婚する気はないかってどういうこと?



 さすがにぶっ飛んでませんか?




「え、いや、それは…」



「あはは!冗談よ冗談」



 全然冗談に聞こえなかったんですけど……。




「これからも唯花と仲良くしてあげてね。この子昔から愛想がないから友達って呼べる子が少なくてね」



「お母さん余計なこと言わないで!」



「…はい。お嬢様のことは任せてください」



 僕の言葉を聞いた山宮さんのお母さんは口元を手で隠しながら嬉しそうに笑っている。



 冷静に考えたら僕めっちゃ恥ずかしいこと言ってるな。



 隣の山宮さんを見たら僕から顔が見えないように窓の外を見ていたが僅かな反射で頬を少し赤らめているのが分かる。




 この中途半端な距離感が今は居心地良くて、少しもどかしかった……。












 ーーーーーーーーーーーーーーーーー






 読んでくださりありがとうございます。




 次回の9話もよろしくお願い致します。




 現在「曖昧な関係に終止符を」を投稿してますがちょこちょこ新作の下書きの方も書き進めているんですよ。



 まだいつ出すかは決めてないですがそれなりに下書きが溜まってきたら出しますね。





 暁ノ夜空

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