第7話 女子の頼みは断るに断れない
「湯山くんって…山宮さんのこと好きなの?」
「えっ…いや…その。」
いきなりのことで僕自身どう返答したらいいのか分からなくなっていた。
好きかと聞かれれば好きではないし、嫌いかと聞かれれば嫌いでもない。
本当にただクラスメイトでしかない。
「山宮さんは友達だよ。うん、友達」
これで良かったのだろうか、もっと考えればいい答えが出たかもしれないが今の僕にそんな余裕はなかった。
「ふーん、そっか」
僕の下手くそな返答に何故か納得した様子で小さく2、3回頷き、座りながら僕との距離を詰めてきて顔を覗き込んでくる。
正直今この状況は僕にとってはとてつもなくマズい。
変な汗が出てきてるし、古木さんが水着姿っていうのもあり目のやり場に困る。
何とかしてこの状況を抜け出さなければ。
そう思った時には体は動いていて立ち上がって逃げようとしていた。
これなら……
「待って…」
古木さんは逃げようとしていた僕の手を取り、何か話したげな表情をしている。
「その…さっきのは冗談のつもりだったの」
「えっ…?」
「湯山くんと話す口実が欲しかった…なんて」
…そういう事だったのか。
むしろわざわざ気を使わせてしまい申し訳ないな。
「それで…折り入って湯山くんにお願いがあるの」
「お願い?」
「うん」
お願いってなんだろう。奴隷になってとかだとさすがにちょっと考えてしまうかな。
「今度の土曜日、その日だけでいいから私の彼氏になって欲しいの!」
「あー、彼氏ね。いいよいいよ」
……ん?今彼氏って言った?
「ありがとう!こんなお願い湯山くんにしか頼めなかったから助かるよ!」
「あ、ごめん。その彼氏になるってどういうこと?」
「えー!今いいよって言ってくれたのに?」
「ごめん。なんかノリでつい…」
「むー…まあ急だったからしょうがないか。実は私一人暮らししてるんだけど今度の土曜日にお母さんが来ることになってて」
古木さん一人暮らしなのか…あっ、今それはどうでもいいか。
「それでお母さんからTINEで『そろそろママ茉里の彼氏見たいな~』って送られてきちゃって…」
「で、僕に彼氏役をやって欲しいと」
「お願いします」
「わかったよ。そしたら時間等はTINEで」
「私湯山くんのTINE知らないよ?」
……そうでしたね。
鞄から携帯を取り出して、とりあえずこれで良し。
僕の携帯に妹以外の女の子の連絡先がついに。
「えへへ、これでいつでもTINE出来るね?」
「あ、えっと、そうだね」
えっ、やば。なんか緊張してきた。
「じゃあ今試しに送ってみるね?」
「う、うん」
ピロン
携帯の通知に『Mari:初メッセージだよ♡』
とThe女の子から送られてきそうなTINEが送られてきた。
「ちゃんと届いたね。良かった」
嬉しそうに携帯を眺める古木さんの姿がとてつもなく可愛い。
その可愛さに引き込まれるかのように自然と目が古木さんへと向き、もはや危ない人間と言われても否定出来ないくらいに気持ち悪い目をしているはず。
「そこの変態さん。これ以上のいやらしい視線を女性に浴びせるなら通報するわよ」
「うげっ、山宮さん…」
「うげって何よ」
「いえ、なんでもないです」
「…なんかお似合いって感じ」
「ん?古木さんなんか言った?」
「ううん、なんでもないよ!」
なんかお似合いとか言われた気がしたけど僕の気のせいか。
そうだよね。僕と山宮さんがお似合いとか死んでもないし、それに山宮さんからすれば不名誉なことでしょう。
「それよりちょっといいかしら?」
「僕?」
「そうよ」
一体何の用でしょうか。
まさか岩場でボコボコにされるとかそういう感じですかね。
「違うわよ」
違ったみたいです。でも僕は恐怖に脅えています。
「ちょっと頼み事があるのよ」
ん? この展開嫌な予感が……。
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読んで下さりありがとうございます。
4連休ということもあり、曜日感覚が狂ってしまってギリギリになってしまいました。
良かったらレビューなどして下さると嬉しいです。
次回の8話もよろしくお願いします。
暁ノ夜空
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