第5話可愛い妹のお願いは断れない
今日は夏休み前から企画していたみんなで海に行く日。
待ち合わせは9時に駅前広場。
準備は昨日のうちに終わらせてたから余裕もって出掛けられる。
……はずだった。
「おにぃズルいよ!春も連れてって!」
夏休みに入ったのに早起きしてきたことが不思議だったらしく何かあると思ったのだろう。
「連れてってと言われても…」
「いいじゃん!春だって受験勉強頑張ってるんだからたまには息抜きしないと~」
「はぁ……ちょっと待ってて」
今回の企画者は一応卓だからちょっと聞いてみるか。
断られたらそれはそれで春も諦めがつくだろう。
『あっ、もしもし卓』
『おー礼人か。どうした?』
あくびをしながら受け答えをしてまだ若干寝足りない感じが電話越しに伝わってくる。
『実はさ、僕の妹の春が海行きたいって言ってて。連れてっちゃダメかな?』
僕が電話をしている後ろでキラキラと目を輝かせてかなりの期待をしている春。なんて可愛いんだ。
『あー、いいよ連れてきて。人はいっぱいいた方が楽しいでしょ』
『卓は優しいな。ヘタレだけど』
『なっ……それは今関係ないだろ』
『ははっ、ごめん。じゃあ春に伝えとくわ』
『おう。遅刻すんなよ』
卓との電話が終わると後ろから大きな足音がこちらに近づいてきて、思いっきり僕の背中へ。
助走をつけてきたおかげで僕はそのまま妹に倒されるというスペシャルイベントが発生。
「おにぃ!どうだった!?」
春は僕の体の心配よりも海に行けるかどうかの方が重要みたいです。兄としては悲しい限り。
「教えるからその前に僕の上から降りようか」
「あっ、ごめんごめん」
ゆっくりと僕の上から降りた春はそのまま正座をして結果を待つ。
「それでおにぃ結果は……?」
「いいか。言うぞ?」
「う、うん」
「……春。急いで準備してこい」
僕の言葉を聞いた春は満面の笑みを浮かべて階段を駆け上がって自分の部屋に。
やはり僕の妹の笑顔は世界一可愛いな。
これに勝るものはない。
「さぁ!おにぃ行こ!」
僕が可愛い妹の笑顔の余韻に浸ってたらいつの間にか準備が終わってました。なんということでしょう。
「ちょっ、そんな急がなくても大丈夫だよ」
「でもでも!楽しみなんだもん!」
「しょうがないな。そしたらコンビニ寄ってアイスでも食べながら行こうか」
「本当に!? 春はいつものね!」
「はいはい」
結局待ち合わせの1時間半前に家を出ることになったが早いに越したことはない。
「よーし!レッツゴー!」
テンションが異様に高い春が僕の前を行こうと玄関を飛び出してすぐに足が止まった。
「どうした春?」
「おにぃ…知らない人がいる…」
…知らない人?
春が指差す方向に立っていたのはまさかの山宮さん。
「えっ、えっ、えぇぇぇ!?」
何故山宮さんがいるのかも驚きだが、山宮さんが僕の家を知っていることの方が驚き。
「おにぃ知り合いなの?」
「湯山くんの妹さんですか。初めまして湯山くんと同じクラスの山宮
…………なんか猫かぶってないか?
「おぉ…おにぃ、よくやった」
春は僕の肩に左手を置いてもう片方の手で何故かグッドとしてくる。
これはどういうことなのか?
「この人なら安心しておにぃを任せられる」
「なんか言った?」
「ううん!なんでもない!」
「それより湯山くん良かったら駅まで一緒に行きましょう」
前までは話しかけるのも気難しい感じだったのに最近では少し表情とかも柔らかくなったし、山宮さん変わったな。
「ほら、おにぃ!」
「早くしないと置いていくわよ」
「2人とも待てよ」
僕の海イベントは序盤から簡単には攻略させてくれない。
それでも簡単なイベントじゃないからこそやり甲斐がある。
何かが起きそうな1日はまだ始まったばかり…………。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでくださりありがとうございます。
次回の6話につきましては7/8を予定しています。
それでは引き続きよろしくお願いします。
暁ノ夜空
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます