第2話 古木さんよりも山宮さんよりも妹


「おにぃ、おにぃ起きてよ」



『ん…』



寝坊助ねぼすけおにぃ起きて」



 妹に起こされるという朝から最高なイベントを迎えたので今日は学校に行かずにこのまま寝てい……



「ダメに決まってるでしょ」



『許してくれよ春』



 こちらの愛おしくてたまらないのが僕の妹の湯山 ゆやま はる。僕には勿体ないくらい完璧な妹だが誰にもあげるつもりは無い。



 中学時代はクラス中からシスコンと呼ばれていた僕だが疑問点はある。妹を大切にして何が悪いのかと。



 とりあえず可愛い妹の話する?3時間くらい話しますけども。



「おにぃ早くご飯食べてないと昨日みたいに遅刻するから」



『いや、昨日はギリギリセーフだったけど!?』



「ねぇ、知ってる?」



『おっ、豆柴?』



 あっ、すっごい冷たい目。お兄ちゃん凍え死にそうです。うー、寒い寒い



「はぁ…こんなおにぃを誰か優しい人が貰ってくれたら春は心置き無くイケメンのお金持ちと結婚出来るのに」



『そんなのお兄ちゃんは絶対に許しません』



 まず春に彼氏が出来たら厳しいお兄ちゃんチェックをしてしっかりと判断させていただきます。まあ通ることはほとんどないと思いますが。



「ほら、馬鹿なこと言ってないで早く」



『はーい』



 妹との朝のイチャイチャタイムを存分に堪能した僕は身支度を済ませて、いつもと同じ時間に家を出た。



 この調子だとチャイムが鳴る5分前に着くはずだが昨日みたいなアクシデントがなければ……。



 ーーーーーーあれ?あれ?…………弁当忘れた!?



 最悪だ。お弁当を食べる時間がどれだけ至福か。



 今日は授業頑張れる気がし……



「あらあら、湯山くんじゃないですか。何か探してるみたいだけど忘れ物?」



『古木さん。うん、実はお弁当を忘れちゃってさお昼どうしようかなって…』



 …ん?自然な流れで言ったつもりだったけど冷静に考えたらこれ完全に誘ってないか?


 えっ、どうしよう。ここに来て恥ずかしくなってきたんだが……。



「そしたら私今日学食の予定だったから一緒にどうかな? ちょうど湯山くんと話したいことあったの!」



 ーーーーーーーーーーーーこれって脈アリですか?




 ラブコメ的にはかなり美味しい展開。




『あっ、えっとー、じゃあお願いします』



 本日のお弁当問題が解決したと共に奇跡的に女子とご飯を食べることが決定しました。



 中々無い体験なので今から緊張が……。



「あー!急がないと遅刻しちゃうよ!」



『本当だ!? 急ご!』








 ……………………………………








 教室にはチャイムが鳴る1分前に何とか滑り込みセーフ。



 ……のはずだった。



「ギリギリに来るとかどういう神経してるの?」



 僕は遅刻した訳ではないのに隣の席の山宮さんに怒られています。何故でしょう。



 もう1つの疑問としては僕と一緒に入った古木さんは怒られないこと。



「まず遅れた原因は何?寝坊?ねぇ寝坊なの?」



『寝坊の一点張りはやめてください。ちゃんと理由はあるから』



「ほぉー、ではその理由を聞かせてもらおうじゃないですか」



『お弁当を忘れたことに気づいて慌ててた僕に古木さんが声掛けてくれて…その…一緒に学食行こうって話をしてて……』



「……はっ!?」



 僕の話を聞いた山宮さんが突如何かに気づいたかのように鞄の中を漁り始めて急にそのまま固まる。これはまさか……。




「……お弁当忘れた」




 ……………………へ?




 先程まで鬼の形相のような表情を浮かべていた顔は今ではまるで子犬のようなウルウルとした目をしていた。




 これはまさかの展開すぎる。




「……ゆ、湯山くん」




『はい、何でしょう山宮さん』




「私も…学食ついて行っていいですか?」




『……えっ?』






3話へ続く





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 読んでくださりありがとうございます。



 段々と見てくださる方が増えて私もとても嬉しく、ここで書くのが楽しくなりました。



 次回の3話につきましては1週間後の6/17を予定しています。



 それでは引き続きよろしくお願いします。



 暁ノ夜空


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