第2話 俺のマッサージ店にエロすぎる女騎士がやってきました。
施術台に横たわる細くて今にも壊れそうな背中。俺はゆっくりと指を這わせ、力をこめる。
「ああっ…! いいわっ」
施術台に俯せているミヨさんが俺の指の力に合わせて吐息を漏らす。思い通りに反応する体に、思わず笑みがこぼれてしまう。
「気持ちいいですか? ミヨさん。正直に仰ってくださいね」
「いじわる言わないで頂戴、ユウマちゃん。ああ…っ!天国へ連れていかれそう…」
「ふふっまだまだ始まったばかりですよ?」
背中から腰…それから足にかけて揉みほぐしを激しくしていく。
さあ、フィニッシュだ!
俺はカッと目を見開き、ミヨさんの体じっくりなめるように見回す。足裏、太もも、肩甲骨と移動し、腰のあたりで目が留まる。一番の弱点、見えた…!!
そこを目がけて指を入れ、ぐっと力を入れると
「あっソ、ソコーーーーー…!」
まるで昇天したかのような声をあげるミヨさん。御年82歳。
本日のお悩み、腰痛。解決させていただきました。
「ユウマちゃんたら、しばらく来ないうちにまた腕をあげたわね。危なく召されるトコだったわ」
ミヨさんは恍惚とした表情でしなだれかかってくる。
ああ、これがピチピチギャル(死語)だったらよかったのに…。
「ミヨさん。重いもの持ったりとか、腰を酷使されてるのが体に来てましたよ」
「旦那が死んでから、水汲みやら力仕事はあたしがやらないとだしねえ」
「呼んでくれたら手伝うのに」
「んまあ!優しいわ。でもね、ユウマちゃんに診てもらうようになってからとっても調子がいいのよお。すっかりこの街で評判のマッサージ師になったわね!」
「ははは、ありがとうございます」
乾いた笑いが漏れる。まさか、じいさんばあさんだらけの街に転生しちまうとはなあ。
石造りの小さな家が並ぶのどかな風景。周りは山々に囲まれていて、店と言える店は3軒しかないこの「ルービウス」という小さな小さな街。その3軒の中の一つ「マッサージ店・ユウマ」と書かれた看板が出ている古くてボロい家。
そう、ここが俺 「元・佐々木悠馬」「現・ユウマ・ササキ」の店である。
なぜ俺がこんなことになっているか経緯を説明すると、1か月前までにさかのぼる。ナイフで刺されて死んだとき、俺は神様に願った。
「めちゃくちゃたくさんの女の子にエロマッサージをしたい」と…!
願いを受け入れたっていう神様であろう声が聞こえた後、気が付いたらこの街のすぐ近くの森に倒れていた。その時たまたま俺を見つけてくれたじいさんばあさんが世話をしてくれて、恩返しにマッサージをしたらものすごい重宝されて、ついには店を開くことになってしまった。という訳だ。
そしてひっそりとこの街で毎日じいさんばあさんの全身を揉む日々。とても平和だ。
本来終わったはずの命が、こっちで第二の人生を歩めることになって、しかも10歳くらい若返っていてピッチピチの20代の姿になってるし、すっごいすっごいすっごい神様ありがとうマジ感謝なんだけどさ。
なんか、違くね?
普通あの流れだと、ピチピチギャルだらけの街で俺のエロマッサージテクが炸裂して、ハッピーセックスライフになるんじゃないの?!?
くそおおお、こんな街じゃ新作のAVも見れないし性欲が薄れていく…俺の精子が活躍せぬまま死んでしまう。
今世こそはセックスがしたいんだよ俺は…!!!
店の外に「休憩中」と書いた張り紙を出し、店を一旦閉める。こんなときは一人でスルに限る!前世で仕事の合間に妄想して、美紀ちゃんに冷たい目で見られていたあの生活。童貞だったけど今となっては最高だったな…。
そんな思い出を振り返りながら性欲を滾らせようと、頭の中で昔山ほど見たマッサージ系AV達の中から厳選のタイトルを思い浮かべる。「海の家ナンパエステシリーズ」からシリーズ始まって以来の伝説のスタイル抜群美女、リカちゃんが出てくる回。今日の休憩のお供はこれにしよう…。頭の中にリカちゃんのセクシーな水着姿が蘇る。キリっと顔に力が入り、勢いよくパンツを降ろしたところで、店の扉が開いた。入ってきたのは…
「ここでマッサージをやっていると聞いたのだが?」
「え、リカちゃん!?」
思わず声をあげてしまったのは仕方がない。だって今しがたくっきりと頭の中に妄想していた美女、リカちゃんの顔がそこにあったからだ。
「なっ、貴様なぜ下を履いていない!!」
ミニスカートワンピースに金属の胸当てや、ちょっとゴツめのグローブやブーツなどを付けた格好のリカちゃん。防御力が高いんだか低いんだか、ゲームとかにでてくるお色気要員の女戦士のような恰好で真っ赤になりながら顔を逸らしている。それでも目線は俺の股間から離れていない。妄想していた女優が目の前にいて、俺の股間を見つめてくれているなんて…もう半勃ち状態だ。よかったな、俺の息子。っていうか俺、もしかして性欲が強すぎてAV女優召喚した?
などとバカなことを考えていると、女戦士版リカちゃんは剣を抜き、俺の股間に切っ先を向けるようにした。いやそんな。そりゃ俺の息子は(自称)モンスターではあるけども!
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってリカちゃん! 今、その、あの着替え中だったから!」
「なっなぜ着替え中でそんなことになってる!」
「あっ、あ~なんか今日はコイツ、元気いいみたいなんだよね。ははは。ちょっと宥めてくるから座って待っててよ」
頭の中はパニックでダムが決壊したかのごとく大変なことになっていたが、俺は努めて平静を装い「うちの元気な犬がすいませんね」みたいなテンションでトイレに向かった。俺の「何がおかしいの?普通だよ?」みたいな空気の押し売りが効いたのが、リカちゃんは真っ赤な顔はそのままに、ぐっとこらえて剣をしまい待合席に座った。
トイレの扉を閉めたあと俺は、やっべええええチンコ切り落とされるかと思った…!!と内心ひやひやしながらも女戦士リカちゃんのエロい姿を思い出してしまい完全に目覚めそうになる息子。いかんいかん…鎮まれ…鎮まれ…!!
なんとか息子を治めトイレから出た俺は「ヌいてた訳じゃない、普通に用を足してただけです」といったあくまで平静を装った顔でリカちゃんの前に再び現れた。
リカちゃんはまだ警戒を解いてないのかじろじろと俺の顔と股間を睨みつけている。あの…それ、ご褒美です。俺の息子は再び元気になってしまいそうになり、慌てて頭の中で素数を数えた。
「お待たせしました。えーと、施術希望ですか?」
「……そうだ。腕のいいマッサージ師がいると聞いてわざわざこんな田舎町まで来た」
おおっ…さすが元カリスママッサージ師の俺、異世界でも話題になってしまうとは。思わず笑みが零れてしまうが、リカちゃんの顔はさらに険しい。
「貴様、なぜ私の名を知っていた?」
「へ?」
「呼んだだろう、私のことをリカと。私の名前はリカ・シュテンフォーゼだ」
「えっ!本当にリカちゃんだったのか! いや、俺の知ってる女優さんにそっくりで」
「女優? 女優とはなんだ」
「ああ…こっちでは女優って言わないのか。役者さんって言えばわかるかな? すっごい美人で有名な子なんだ」
アダルトビデオの世界では…と心の中で付け足し説明する。役者、美人、というワードが良かったのか、満更でもなさそうな顔をするリカちゃん。ああ、かわいい。とてもエロい。憧れの女優に会えて俺の胸の高鳴りは止まらない。
「フ、フン…まあいい。マッサージをしろ。先日の戦いで体を痛めてしまったのだが、なかなか治らず仕事に復帰できなくて困っている」
「わかりました。じゃあ装備を外して施術台に横たわっていただけますか?」
恥ずかしそうにしながら、リカちゃんが装備を外していく。装備を全部取ると比較的薄い布のミニスカートワンピース姿になり、施術台に俯せになる。ちょっと待て。さっそくパンツ見えそうなんですけど。
なんだ?この夢にまで見たAVのようなシチュエーションは?
俺は果たして理性を保っていられるのだろうか?はあはあ、と興奮で呼吸が荒くなってしまう。やばい、まるきり変態だ。でも童貞がこんな状況になったら仕方ないだろ!
いやいや、俺はプロのマッサージ師、現実と妄想の区別はちゃんとつけてるさ。でも、ここ…異世界だぜ!? 関係なくね!? 俺の中の衝動と理性が戦っている。ここに来てから1か月、オカズが自分の妄想でしかなかった俺の頭の中は性への渇望がすごすぎた。そんな中で現れた憧れの女優、そして俺の性癖ど真ん中のこの状況。さっきヌけなくてフラストレーションが溜まっていた息子が再び暴れだしそうになる。俺の中のリビドーは最高潮になった。そして、何かが体の奥底でぶわっと膨らみ、自分の体全体にどんどん広がっていく――
なんだこの感じ。ものすごく力が湧いてくる。おかげで少し冷静になれた。理性が勝った…! 俺はプロだ…! 異世界に来てまで理性に生きる自分のサガを悲しく思いつつも気合をいれる。
よし、施術を開始するか!
「お待たせしました。始めま―――」
んんん???
リカちゃんの体の部分部分が光って見える。さっきまでこんなの見えなかったよな。その光はなぜかお尻、足の付け根など、きわどい部分に散らばっている。さらに空中にモニターのように映っているのは…リカちゃんのステータス?
【名前】リカ・シュテンフォーゼ
【職業】騎士
【装備】なし
【状態】毒
【ステータス】HP:250/400
MP:50/50
攻撃力:120
防御力:25
素早さ:60
・
・
・
そのほかにも運、スキル、スリーサイズまで様々と、恐らくリカちゃんの情報が全部映し出されている。
すげえ。なんかよくわからんが俺のエロパワーが真の力を目覚めさせちゃった…的な?
リカちゃんの体の光る部分にはツボ押しの効果一覧がごとく、お尻の部分に[攻撃力アップ]胸に近い脇のあたりに[防御力アップ]と文字が浮かんでいる。
え、これもしかして押したらステータスアップ的な? エロ心もさることながら、いちマッサージ師としてワクワクしてしまう。太ももにある[毒]の文字が気になるな。これが回復しない原因か?それにしてもムチムチである。じっくりリカちゃんの肢体も眺めさせていただきつつ抑え切れないニヤニヤを漏らしていると、しびれを切らしたように顔だけこちらに向けてリカちゃんが睨んでくる。
「おい、いつまで待たせる。早く始めろ」
「ああっはい…」
いいよな? だってこれ施術だし。リカちゃんは待ちきれないって顔してるし…俺はマッサージするだけだし!
超ポジティブに捉えて、俺はリカちゃんのむっちむちの太ももに手を伸ばしたのだった。
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