異世界でエロマッサージ師はじめました。
ぬぬぬぽんず
第1話 35歳、童貞。趣味:マッサージ系AV鑑賞。卒業前に死す。
神崎七海は、透けそうな白い下着だけを纏い、施術台の上にうつ伏せになっている。
普段は地下アイドル活動をしている。
最近少しづつ人気が出てきたグループでセンターをしており、忙しい日々の中疲れが溜まっていた。
今日はその疲れとコリをほぐしにこのマッサージ店にやってきた、はずだった…。
(マッサージって本当にこんな格好するの…?)
あられもない姿が恥ずかしく七海は顔を赤らめている。
背中や腕はオイルで光っていて、張りのある肌が艶かしい。
施術と称して触れられた部分が心なしか熱い。
気持ちいいけど、すごくいやらしいことをしてるような気持ちになり、いたたまれない。
もじもじと体をくねらせていると
「では足の付け根の部分、リンパ流していきますね」
男の指が、膝から太ももに這い上がり、さらに七海のきわどい部分に指を這わせる。
「んっ...」
ビクンッと七海の体がはねる。
男はニッと口元を緩ませる。
「痛かったですか?」
「あっいえ、、痛いわけじゃ…」
「では続けていきますね?」
足の付け根を撫でる手を再開する。
オイルを足した手で滑りを良くし
さらに指を進ませ、下着の中に指が入り込む。
「あっ、ダメッ..!」
七海は真っ赤な顔で男の手を遮ろうとするが、うまく力が入らない。
「大丈夫ですよ。皆さんされてますから」
ニコニコと微笑み、手を止めない男。
「ここにリンパが集中してますからね。すぐ終わりますから」
「あっあっ…」
じわじわと指が際どい場所を撫でていき…
「あっそれ以上は、ダメ、だめ…」
「アッーーーー……!!」
「なーんてこと、あるわけないよな」
そう言って俺は妄想の世界から戻り、休憩室で独り言ちる。
今日の休憩時間恒例の妄想は、最近推し始めてる地下アイドルの神崎七海ちゃんでさせていただいた。
何を隠そう、俺はマッサージ系AVが大好きなのだ。
だからという訳ではないが、幼い頃からマッサージの世界に興味を持ち
今では業界で割と有名なマッサージ師として成長したのである。
カリスマ、とか呼ばれちゃってるのである。
はあ、七海ちゃん。最高でした。
休憩中だから続きは今夜に…。妄想の中だから許してね。
そんな事を思いながらにやついていると、受付の女の子が軽蔑したような目でこちらを見ている。
「ウワッ! 美紀ちゃん、いたの!?」
「…佐々木さん、午後からのお客さん来ましたけど」
「えっ!? アッウン、そうだね!?」
俺は慌てて椅子から飛びあがり、
別にやましいことはしてないのに(実際にはしているが)
冷や汗をかきながらカルテを見て準備する。
「なんていうか、佐々木さん。腕はいいのに残念っすね」
「あはは! 美紀ちゃんってば、ホメてるの?」
ホメてねえよ、と言いたげに更に冷めた目で俺を見つめてくる美紀ちゃん。
少し焼けた肌のギャルっぽい子で、とても好みである。
軽蔑したような目は、実はご褒美だ。
でもなんで俺の残念な感じ、見抜かれたんだろう。
童貞だってのはさすがにバレてないよ…な?
*
午後いちに予約をいれてくれたのは、丸の内界隈で働いてそうな美人OLだった。
ああ、こんな美女とあんなAVみたいな展開が出来たら…
妄想を始めたくなるのをグっとこらえ、にっこりと営業スマイルを向ける。
「今日はどのような施術をご希望でしょうか?」
美女が色っぽく微笑み
「腰のあたりをお願いできるでしょうか?先生、お上手だって聞いたから来たんです」
ぐっ…色気がすごいなこの美女!
何か違う意味も含まれてそうな台詞に内心ドキドキしながらも
いつもどおり無になって最高のマッサージをお届けした。
そして至って健全なマッサージが終わると
美女は少し疲れたような気だるい色気を撒いている。
やめてくれ、童貞の俺には刺激が強い。
「ねえ、先生。今日仕事終わりって空いてますか?」
「え?仕事終わり空いてるか?」
突然の質問に訳も分からずオウム返しをしてしまうと
「ふふ、もし空いてたら遊んでほしいなって」
え……え? ハア!? 遊ぶ? ボーリングとかってこと?!?
内心グルグルしながらも表情は平静を保とうとなんとか耐えている俺。
「もう、はっきり言わないとダメですか? 私、先生の夜のマッサージも受けてみたいの…」
上目遣いで体をくねらせて見つめてくる美女に
思考回路はショート寸前だ。
うんうんうん、と首だけを必死にふってOKを出すと美女は笑顔になって帰っていった。
え、もしかして…35歳にして、モテ期きちゃった―――――!?
*
激しい興奮を必死に抑えながら仕事を終えたあと(プロだからちゃんとやったよ☆)
俺は飲み屋街のひとけのない裏路地で、美女に抱きつかれていた。
え、ご飯とか行ってあわよくば俺の家でお茶飲む流れになって
あわよくば夜のマッサージからの童貞喪失で…
って妄想してはいたけど! いたけども!! 展開早すぎない!?
「ねえ、先生。ガマンできないの…」
艶っぽい吐息、絡みつく体。服まではだけはじめる美女。
童貞の俺はどんな一手を繰り出せばいいかわからず
あわわわと傍からみたらダサすぎる反応をしていると、明らかに柄の悪い男が裏路地に顔をだした。
「おい、兄ちゃん。俺の女になにやってんだ? ああ!?殺されてえか?」
一瞬、俺の表情は固まった。
うわ―――そういうオチでしたか。最悪、最悪だ…。
まあそうだよね。急にモテ期来るわけないよね!?
美女の顔をちらっと見ると、「ふふふ、ごめんね」と耳打ちし、
俺の体から離れ柄の悪い男の胸元に飛び込んだ。
呆然としていると男が俺の胸倉をつかむ。
「おい、聞いてんのかてめえ! どう落とし前つけんだよ! 財布出せやコラ」
恫喝してくる男に恐怖を感じるが、俺の頭の中はそれよりも
期待に高ぶった性欲をどうしてくれるんだ…! といった怒りがふつふつと湧いていた。
「ふざけんな! 金なら出さない。まだ何もエロいことしてないんだよ俺は!! 警察呼ぶからな!」
男のメンチに負けずに啖呵を切ると、キレた男が重いパンチを繰り出してくる。
1発、2発、3発…
おい、殴りすぎだろ。
「殺されたくなかったら、大人しく財布だしとけ」
盛大にボコられて地面に突っ伏す。
痛い、痛すぎる。これ肋骨イッてるかもしれん。
くそっくそお、俺は今夜セックスできるかもしれなかったのに!
痛みをこらえ、なんとか立ち上がる。
「カリスママッサージ師、ナメんなよおおおお!!」
叫びながら男に突進する。
腹の中心部…おそらくみぞおちは…あそこだ!
思いっきり打撃を打ち込む!
「ひゅっ…うっぐっぐおっ…!てんっめえええ」
「ふっ…体の急所は知り尽くしてんだよ」
満身創痍でドヤ顔をすると、
俺のような弱者に一杯食わされたのが我慢ならなかったのか
急所を突かれ息も絶え絶えにしながらも、男は折り畳みナイフを取り出した。
ナイフを見て途端に青ざめる。
あっやべえ、やべえやつかもしれん。
逃げなきゃ…!
走ろうとするが、さっきのパンチ3発が効いてて全然ダメだった。
よろよろしてうまく体が動かない。
やばい…やばい…やばい…!!
どうしよう、どうしよう、どうしよう
「てめえ…ぶっっころしてやるあああ!!!」
ドッ
ナイフの突き刺さる音がして、体に激痛を感じる。
痛いし熱い。そのまま倒れる。
周りの音がぼんやりする。
美女の悲鳴が聞こえる。
男と美女が走って逃げたような音がする。
あーこれ。死んだかも。
やっぱり陰キャがイキるもんじゃねえな。
くそお、最後にセックスしたかった。
いや、セックスだなんて贅沢は言わない。
エロマッサージを美女たちに試してみたかった…
来世があるなら、めちゃくちゃたくさんの女の子にエロマッサージしたいです。
神様がいるなら、お願いします。
ほんと、お願いします!!!
『その願い、受け入れました』
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