第5話 短い旅の途中

 友輝の誘導でオレんに向かう。こんな形で家に帰ることになると思わなかった。


 友輝の言った通り誰もいないのか、家の中の明かりがついている様子は見えない。顔と声紋、指紋認証をて玄関の中に入る。そしたら廊下で急に友輝が前に出て、勝手にリビングへ向かっていく。


「ふーん。これがあの折れた傘か」

「そ。意味不明だろ」

「おれたぶん勇姫より詳しいよ。てかがくに入れてたんだな」

「うん、って何してる」


 友輝がまた勝手に壁から額を外し、折れた傘を取り出そうとする。今はオレが住んでいない家だけど、こうも好きに漁られるとなんか嫌な気はする。


「別に傘が必要なわけじゃないよ。それよりさ、ほらあった」

「何が」

「地図が書かれたメモ」

「どこの」

「マザーコンピュータのありか」

「マジ?」


 なんでそんなものがこの家にあるんだよ。友輝はもう色々知っているんだろうな。つかこんなものが家にある時点で、やっぱあの通知は親の仕業しわざか。


「さ、これであとは勇姫を連れて行けば一兆円はおれのものだな」

「はあ?」

「くっくっく。ここまでお前を連れて来たのは、全部金のためさ」

「マジで言ってんの?」

「ああ、マジ。だからあとはお前一人で行け。それでこのゲームは終わりだろ」


 友輝。なんかかっこいいけど、たぶんオレはお前ほど事態を把握してねぇぞ。だから事態を把握するためにも、行くしかねぇか。


 まだここから、引き返すこともできるかもしれない。それでもし友輝じゃない別の誰かがオレを探しに来て連れ出そうとしても、そのときはそのときだ。


 でも。ここまでお膳立ぜんだてしてくれた仲間がいて。行きたいって気持ちが、自然と湧いてくるようだ。


→行く

 行かない


「んじゃ、真実とやらに会いに行くか」

「会うのいつぶりかね?」

「中二になった頃だから、まだそんなでもねっか」

「勇姫も誰と会うのか予想ついてんだな」

「友輝こそ」

「佐藤勇と鈴木愛生姫、だろ」

「ああ。オレの両親だ」

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