第16話 謎解きゲーム 前編

ㅤ学校の門の前まで来た。今のところ何の変哲もない。誰かが襲ってきそうな気配もない。そんな気配出ていたらむしろわかりやす過ぎるけど。


ㅤ休みの日でも門は普通に開いていて、楽に侵入することができた。どちらかと言うと侵入しているのはしゅーとさんの方で、ぼくは生徒なんだけど。でも今は、あきひめちゃんの居場所を探るミッションのような感覚。


ㅤもしもあきひめちゃんがさらわれた現在、捜索やその依頼もしていないということなら怪しい。というか魔王の力で先生たちも操られているかもしれない。だとすると当然、ぼくらを邪魔してくるだろう。でも今更だけど、ぼくらの邪魔をする必要ってなんだ?ㅤそもそも「勇者よ、旅に出ろ」って言ったのは向こうだ。


ㅤどんな狙いがある。勇者をあぶり出すのが目的なのか?ㅤていうか魔王って何者だよ。考えても今は思いつかない。だから進む。


ㅤそうして職員室まで何事もなく来た。担任の先生が運良くいたらいいなと思いつつ、ノックして中に入る。


「失礼します」

「失礼しやっす」


ㅤ軽くおじぎして、頭を上げたら少し驚いた。見事なまでに、担任の先生だけがいる。白髪で、メガネをかけていて、左手で頭をく仕草。席で何かを書いているようだ。


「すみません先生、今日は聞きたいことがあって来たんですけど」

「ん、何かね、こんな休みの日に」


ㅤ先生は目も顔も合わせてくれなくて返事だけが飛んでくる。


「鈴木愛生姫の件、知ってますよね、クラスメイトの」

「ん、あぁ、君はアレを信じているのかね」

「えっと、それはどういう。あきひめちゃんは無事なんですか」

「ん、あぁ、そのことじゃない。君は自分が勇者だと信じているのかね」

「え?」

「そんなことはやめて、早く宿題をやりなさい」

「は?ㅤ宿題なんて出てましたっけ」

「いいから帰って勉強をしなさい。現実を見なさい。色々とあきらめなさい」


ㅤこんな先生だったっけ……。というかいくらなんでも会話が噛み合わない。これはおそらく魔王に操られている。なんとか上手いことして、あきひめちゃんの居場所を聞き出さないと。


「おい、ジジイ!」


ㅤしゅーとさん!?


「さっきから聞いてりゃ、んだそりゃ。このにいちゃんはな、現実見てるからこうして動いてんだ。んなことわからず頭ごなしに否定するヤツにいったい何が教えられるっていうんだ、あん!?」


ㅤありがとう。でも落ち着いてください。


「しゅーとさん、たぶん違うんです、先生も魔王の影響で……」


「はっはっは。面白いことを言うじゃないか、そこのやつ。実は試しておったのだ、というわけでもない!」


ㅤせ、先生。一瞬正気かと思ったけどやっぱり正気じゃない。立ち上がって笑ってこっちを見る姿が怖い。でも何かガードが崩れたか?


「勇者よ。いや、自らを勇者と信じる哀れな愚か者よ。鈴木愛生姫の居場所を知りたいんだろう、知りたければ教えてやる!」


「よっしゃ!ㅤいさむ、良かったな。じいさん、さっきはジジイ呼ばわりして悪かったな」


ㅤ単純。しゅーとさんは単純だ。それが良い。でもきっと、そう簡単には教えてくれないだろう。


「はっはっは。こやつに比べて愚か者は警戒しておるな。だがしかし、簡単に教えてやる!ㅤわしを倒したらな!」


ㅤセリフまわしが面倒くさい。それから倒すってどうしたらいいんだ。バット振り回して殴っちゃっていいのか。相手は丸腰だぞ。それに一応担任の先生だぞ。


「くくっ。誰も戦闘をするとは言っておらん。この謎解きで勝負じゃ!」


ㅤ先生が机の上から手に取ったのはA4の紙。そこにはこんなことが書かれていた。


【コンサート お札 遺産

入りの

帽子 を持ってこい


ヒント は、、 英訳】

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