第14話 拠点に集合
ㅤ明くる日、目覚めてベッドの方を見ると、古びたくまのぬいぐるみしかいなかった。台所前のテーブルには「ゆっくりでええよ、適当になんか食べて」というメモが置かれていた。
ㅤ急に倒れたものだから、結構心配されちゃったのかもしれない。だけどぼくはゆっくりもしていられない。あきひめちゃんを早く助ける。それだけじゃなく、ときとの病気のためにも急がないと。壁に立てかけてあったバットケースを担ぎ、玄関前に置かれていた折れた傘を拾い、駆け出した。
ㅤコンビニに着くとコンビニの前には停められたバイクとしゅーとさん、ときとがいた。
「しゅーとさん、昨日はありがとうございました」
「お。そうだ、おれは
「さとういさむだよ、お兄ちゃん」
ㅤときとが代わりに答えてくれた。覚えていてくれて嬉しい。
「そんじゃいさむ、昨日は大丈夫だったか」
ㅤなぜか腕を組んで顔を逸らし少し恥ずかしげに聞いてくれたしゅーとさん。
「おかげさまで。よく眠れましたし。ふうさんは中ですか?」
「ああ。あいつには世話になる。ときととバイクを預かってもらうんだ」
「バイクもですか?」
「ああ、これほぼ自動だから誰でも運転できる。ときとに何かあったとき用にな」
ㅤそんな会話をしていると、一瞬話が途切れたタイミングでときとが反応する。
「またおれ、お留守番なの?」
「またってなんだよ」
ㅤしゅーとさんが口を
「いさむが勝手にどっか行ったときもここで待ってたんだよ。仲間なのにさ」
「あん? ㅤそうなのか、あん?」
ㅤ二人に睨まれた。確かにそんなことあったけど、ぼくがそうしたというか、あれはオレのしたことだ。ってそんな言い訳通用しないか。
「あのときはその、ごめんなさい。ちなみにそのときも、ふうさんに見てもらっていました」
「あんだと。ちっ、迷惑に世話に、かけっぱなしじゃねぇか。でもときと、お前はやっぱここで待ってろ」
「なんで」
「お前はふうのねえちゃんを守るんだ。今時、何が起こるかわからねぇ。世話になったねえちゃんをお前が守る間に、おれはいさむと敵をぶっ潰す」
ㅤそこまで言われたら仕方ないとあきらめたのか、ときとは納得した素ぶりで、にやっと笑ってこう話す。
「たぶんおれよりふうのが強いよ。気をつけて行ってきてね、お兄ちゃん、いさむ」
ㅤときとはたぶん幼いながら色々状況を理解しているんだろう。しゅーとさんに頭をわしわし撫でられる姿はかわいいけど。
ㅤそれからぼくは店内に入り、ふうさんにあいさつした。
「おはこんにちは」
「おはこんにちは。ってなんやそれ!ㅤ客じゃないなら早よ行き」
「改めて昨日はありがとうございました。必ず魔王を倒して帰ってきます」
「うわぁ。よくそんな恥ずいこと言えるな」
「吹っ切れてきました」
「それあんま色んな人に言わんほうがええで。あたしとか大して生活変わらん人もおるしな。唯一おかしいのはあんたらに出会ったことくらいや」
ㅤふうさんは冷たいようであたたかい。親しくなると口調も変わる。ここから一緒に冒険するわけじゃなくても、良い報告ができたらな。
ㅤ次の目的地は交番。果たしてちゃんとした手がかりは得られるのか。マザーコンピータに、あきひめちゃんの居場所。タイムリミットがいつになるかわからないけど、このゲームを無事クリアしたい。
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