第7話 勇者VS悪党

「おいお前たち。何するつもりだ」

「ん?ㅤ何だおめぇは」


ㅤピッチングマシーンを止め、ドクロのバンダナ二人組に立ち向かう。


「もしかしておめぇがここの店長か?ㅤんなら、話が早い。おい!ㅤこの店で一番偉いやつ呼んでこい!」

「ヒャッハー!ㅤ呼んでこーい!ㅤ……彼がその店長なのでは?」


ㅤオレは店長ではない。雇われの勇者。しかしこの場面ではあえて。


→店長のフリをする

ㅤ正直にアルバイトと言う

ㅤもっと正直に勇者と言う


「オレが店長の勇者だ」

「そうか、やっぱりおめぇか。じゃあ早速脅させてもらうぜ。さっきホームベースの上に立ったらよ、体にボールぶつけられちまったんだが」

「そうだ、そうだー!ㅤ……そこまで正直に話さなくてもよいのでは」


ㅤ何だこいつら。本当に脅す気があるのか。


「おかげで頭蓋骨を折っちまったかもしれねぇ。診察代や入院費、いったいいくらかかるかなぁ。そこで提案なんだが、一打席無料ってのはどうだ」

「どうだ、どうだー!ㅤ……あれ、そんな規模の話でよいのですか」


ㅤ間違いない。やっぱり脅してきた。こいつら悪党だ。こんな悪党は、バットを振り回して成敗するのも容易。しかしそれで圧勝してしまっては勝負にならない。ここは野球らしく、攻守交代して正々堂々勝負するのが筋だろう。


「よしわかった。一打席無料で打たせる。ただし、これは勝負だ。十球の内、一球でも多くボールを当てた者の勝ちだ」

「へぇ。おめぇ、大した度胸だな。いいだろう、のった。ただ、おらが先にやらせてもらうぜ」

「やらせてもらうぜ!ㅤ……ところでこの勝負、勝ったからって何なのでしょう」


ㅤ止めたピッチングマシーンの元に向かい、再び起動する。ドクロのバンダナブラザーズと、勝負開始!


「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「ふー」

「イッテェェェェ!!!」

「ふー」


ㅤどういうわけか念のため解説すると、先に打席に入ったバンダナブラザーズの一人は十球中八球ボールを当てた。体に。


「どうだ、勇者。この記録にはおめぇも敵わないだろう」

「ふん。お前はまだルールをちゃんと理解していない。マシンの前でよく見てろ」

「……マシンの前?ㅤ嫌な予感がします」


ㅤオレは勇者だが、もしも勇者でなければ野球選手になりたかったかもしれない。振り下ろすバットに、ボールが当たる感触、音、気持ちいい。それにこうして、敵を倒すこともできる。


「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「イッテェェェェ!!!」

「ふー」


ㅤ十球中九球、ボールを当てた。動き回るバンダナの体に。ちなみに多少当たっても平気な柔らかいボールを使用しています。よい子はどちらのマネもしないでください。


「オレの勝ちだな」

「くぅ、負けた」

「……この勝負に果たして勝者はいるのでしょうか」


ㅤここで一段落かと思ったそのとき、バンダナブラザーズのバンダナからすーっとドクロのマークが消えた。すぐには気付かず、後で違和感を持ったくらい、すーっと。それから二人は語り始めた。


「おらたち、実は漫才師なんです。まだ全然ひよっこなんですけど」

「ひよっこなんですけど!ㅤ……バンダナブラザーズと申します」


ㅤ二人からどこか闇のオーラが抜け、物腰が柔らかくなる。これはどういうわけだろうか。


「さっきまでおらたち、何をしていたのか。まるで操られていたようで、何がなんだか」

「何がなんだか!ㅤ……何がなんだかですね」


ㅤふぅ。二人の雰囲気につられて、ぼくも冷静になる。二人が操られたというのも、マザコンが魔王に乗っ取られた影響なのだろうか。それくらいしか思いつかない。


ㅤこの二人の場合は、元が優しいのか知らないけど大した影響はなかったかもしれない。でもここまで直接的に人格や行動に異変をきたすとなると、なおさら危なく思える。


ㅤあきひめちゃんの居場所、マザコンの居場所を早く知りたい。


「ちょっとお待ちください!ㅤそこを動かないでください!」

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