第2話 勇者VS強盗

——空腹により、体力が50減少した。


「はぁ」


ㅤため息が出る。昨日のはいったい、何だったんだろう。夢だったのかな。でも夢だったとしたら、あの続きは見られなかった。

ㅤテレビを消して、そのままぼくは寝てしまったから。ということは、やっぱりあの番組は現実?


ㅤそんなことよりお腹が空いた。夕飯を食べ損ねた。おまけに、冷蔵庫には何もない。買い物すらも忘れていたんだ。


ㅤ昨日もまた告白、できなかったな。どうせ言えたって、ただフラれるだけなんだろうけど。


ㅤ今日こそはって思っていたのに。いつもそうか。せめてちゃんとお話しだけでも、できればな。


ㅤとりあえず買い物に行こう。学校も休みだ。



✳︎



ㅤコンビニの中を適当にふらつく。結局おにぎりを買うんだけどなーと思いながらパンとかパスタとかお菓子とかアイスとか見る。

ㅤそれでやっぱり鮭とツナマヨを手に取る。カウンターに持っていく。そしておにぎりを置いて、お金を用意しようと思ったとき、謎の手に肩を掴まれ、振り返る。


「ちょっと邪魔」


ㅤ金髪に黒のライダースジャケット、黒いサングラスをかけた男が、店員に向かっていきなり言い放つ。


「おい、ねぇちゃん。金出しな」


ㅤ強盗か?ㅤ武器も持たずに。なんて思っている場合じゃない。やばい状況に巻き込まれた。


「現金ですか?ㅤそれともキャッシュレスですか」


ㅤえ?


「おいおい、ふざけてんのか。現金に決まってんだろ。その方が何か風情ふぜいあんだろ、あん!?」


ㅤそういう話じゃない気が。


「申し訳ありませんが、当店は現金のお取り扱いしておりませんので」

「ハッ。じゃあ今こいつが財布から出そうとしてたのは現金じゃねぇのか」


ㅤヤバイ、目が合った!ㅤ気がする。サングラスの圧力。


「このにいちゃんからもらったっていいんだぜ。いいから出しな」


ㅤじっとしておく

ㅤ逃げる

→近くのビニール傘を手に取る


「これ、借りていいですか」


ㅤあれ。ぼくは何してるんだ。


「なんだおい。やんのか、あん!」


ㅤ見知らぬ強盗と戦闘になった!


→傘を広げる

ㅤ傘をさす

ㅤ傘を折る


「オラッ!」

ㅤ蹴りが飛んできたが、傘を広げて防御した。

「やるじゃねぇか。あん」


ㅤ傘を広げる

→傘をさす

ㅤ傘を折る


ㅤ広げた傘を閉じて、そのまま相手めがけて傘を突きさした。急所に命中した!


「ぎゃああああ!ㅤいてぇなチクショウ」


ㅤ傘を広げる

ㅤ傘をさす

→傘を折る


「フゥ。そろそろ反撃と行こうじゃねぇか、あん!」

「ふんっ」

「あ?」


ㅤ傘の真ん中辺りを膝で思いきり折り曲げて、ぐにゃっとなった傘を敵に構える。


「てめぇで武器壊してどうすんだよ」

「……」

「どうする気だって聞いてんだよ」

「……」

「何とか言え!」

「当ててみせようか」

「あん!?」

「オレの考えをお前は読めないけど、お前の考えてること、オレにはわかる」

「あんだとこら。じゃあ言ってみろよ、あん!」


「こいつ何考えてるかわかんねぇ」

「ひぇぇぇぇぇ」


ㅤ強盗は恐怖のあまり、逃げ出した!

ㅤ佐藤は戦いに勝利した!

ㅤ戦利品は特になし!

ㅤ経験値は上がった気がする!

「ふぅ」

ㅤ今の、体から突然湧き上がってきたような行動力はなんだ。自分が自分じゃないみたい。最後は本当に何してるのかよくわからなかったけど。もしかしてこれが、勇者の力?ㅤそんなバカな。

ㅤとりあえずこれでようやくおにぎりの購入に戻れる。体力が余計に減った気がする。


ㅤ改めて財布から小銭を出す。


「お金足りてませんけど」

「え?」

「傘、壊しましたよね」


——合計650円失った。気力が10減った。

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