17杯目 目が覚めたらそこはまさかの……
勇者召喚暦二〇二〇年・六月二十二日・ルーナ・天気:晴れ
イェーイ♪ 目が覚めたら地下牢っぽい場所にいるシオーネさんです!
どうしてこうなった……。可能性としては、酒場で一服盛られましたか。酒量は守っていたはずなのに、途中から記憶がありませんし……。
さておき……この牢にいるのは私だけ。
カナエ氏は別の場所で捕らわれているのか、そもそも攫われていないのか……。
でも、とりあえずはここから脱出するのが先決ですか……。
そう思い牢内のどこかに隙がないか調べますが……当然、ありませんねぇ。
しかも、魔術や神術を使って逃亡するのを防ぐために、術の源であるマナを遮断する結界までご丁寧に施す念の入りよう……。
どうしたものかと悩んでいると、上着のポケットに入れたそれに気がつきます。
前日に武具店で買った、リュートの第一弦と十五弦! これは使えます!
ふふっ……ただの紐かなにかだと思って見逃したみたいですね……。
けれど、これは竜のたてがみ! 使い方によっては鉄すら切れる代物です!
そんなわけで第十五弦を使い、糸鋸の要領で牢の錠前を切断開始。
大きな音を立てないよう静かに、慎重に、けれど迅速に……。
格闘すること数十分……鈍い金属音とともに床へ落下する錠前。
ふぅ……意外と重労働でした。しかし、先ほどの音で人が来ないとも限りませんし、急いで脱出するとしましょう。
そうして外へ出たわけですが……うん、道が分かりませんね!
似たような石畳の通路をどう進めば出口へ辿り着けるのか……。
う~ん、闇雲に歩くのも危険ですし、ちょっと調べてみましょうか。幸い、通路にはマナを遮断する結界は施されていないようですし……。
人の気配に注意し、取り出した第一弦の端を左右の手で持ちピンと張ります。
その弦へ微かにマナを流しながら親指で弾くと、澄んだ音色とマナが反響しながらどこまでも拡散していきます。
音と一緒に広範囲へ巡ったマナを感知すれば、浮かび上がってくる周囲の状況。
反響定位、音の反響を利用してマナを拡散させ隠れた対象を認識する索敵術。
考案した数代前の勇者に感謝ですね……おかげで安全に脱出できそうです。
そのあとも同様の索敵をおこないながら、気配を消して通路を進みます。
途中、カナエ氏のことも探してはみますが……やはり見つかりませんね。
マナの妙な反響も脱出した牢屋からだけですし、これはやはり捕らえられたのは私だけと考えるべきですか……。
ようやく出口に辿り着くと、当然そこには見張り役が……。
人数は一人……うん、これぐらいならどうにかなりますね……。
気配を消して見張りの背後へ忍び寄り、首へ第十五弦を巻き付けます。
そのまま一気に体重をかければ、絞め落とされる見張りの意識。
第一弦を使わなかった私に感謝してくださいね。あの太さで同様のことをやれば首なんて簡単に飛ぶんですから……。
白目を剥いて倒れた見張りの男を見下ろしていると、
「し、シオーネさぁ~ん! 無事だったんですね!」
近くの林から涙目で駆け寄ってくるカナエ氏の姿が……。
その背後には護衛騎士隊と保安騎士隊がずらりと並んでいて……。
なるほど……見捨てられたわけではなかったようですね……。
はぁ~、けど今日は疲れましたねぇ。よしっ、カナエ氏、酒場に行きましょう! 沢山飲んで疲れを癒やすのです! ついでに私の武勇伝も聞いてください!
さぁ! 脱出を祝って宴会ですよ~!!
今夜のお酒
ユウヒ超ドライ(麦酒)(度数5):一杯
コッシノカゲトッラ 特別純米酒(度数15度以上16度未満):三本と少々
おつまみ
ミートソースパスタ、冷や奴、サラダ
連続飲酒日数:十八日目
本気で疲れました……お酒飲んで早く寝たい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます