3杯目 認めましょう! 私は毎晩飲んでると!!

 勇者召喚暦二〇二〇年・六月八日・ルーナ・天気:晴れ


 ポロロンポロロン♪ イエ~イ! 今夜も飲んでますよ! 認めましょう! シオーネさんは最近毎晩飲んでいると! でも、だからなんなんですか?!

 お酒は素晴らしいのです! 命のお水なのです! ポロロンポロロン♪


 今日もですね、シオーネさんは大変だったんですよ!

 えぇ! 昨日に引き続き大工の親方のお手伝い! はぁーっ! こういったお仕事は冒険者ギルドに頼めばいいのです! あの割となんでも屋の!


 とか冗談交じりに言ったら、金がかかるからな~、その点お前さんは酒代だけで安上がりだ! ときたもんです、酷い! まぁ、事実ですけども!

 という次第で今夜も親方の奢りでお酒を飲んでいます、ポロロンポロロン♪


 ふむ……いい感じにリュートの調律が終わりました。

 さて、今宵も昨夜大人気だった新米冒険者にして偉大な魔術師ネブリナ・ネブラの第一歩でも弾き語りましょうか、ポロロンポロロン♪


 しかし、酒場のお客に促され演奏しようとしたその瞬間――、


「やっと見つけましたよ! はた迷惑な吟遊詩人!!」


 ――目の前に現れたのは灰色のとんがり帽子とローブに身を包んだ銀髪碧眼の女の子。

 わぁ~お、まさかまさかの本人登場! コレはなんだか楽しげな予感!!


 なんて考えながら、少女を無視して演奏開始。さぁ、騒ぐのです! 喚くのです! 貴女が声を上げるほどに物語の真実味が増すのですから!!


 数分後、昨日以上の拍手喝采! スタンディングオベーション!! 宙を舞う金銀銅貨に宝飾品の数々! わぁ~! 今夜も大儲けですね!!

 あ、なんだか涙目ですがご苦労様でした、ネブリナさん。演奏も終わったのでゆっくり話を聞きますよ! 給仕のお姉さん! とりあえずお酒とおつまみ追加で!


 そうして運ばれてきたお酒の肴に話を聞いていると……なるほど! どこぞの誰かが語った『霞の魔術師・ネブリナ・ネブラ英雄譚』のせいで色々大変だったと!

 

 災難でしたねぇ! 酷い吟遊詩人もいたものです! あ、お酒のお代わりはいりませんか? 嫌なことはお酒を飲んで忘れるに限りますよ?


 そう微笑みながらお酒を勧めると、むぅ~、貴女が犯人じゃないんですかぁ?! なんて目を据わらせてこちらを凝視してくるネブリナさん。


 いやですよぉ~。さっき弾いたのは仲間の吟遊詩人に教えてもらったんです。街で今一番流行りの詩だという触れ込みで!

 ……さて、飲兵衛ども? 口を滑らせるんじゃありませんよ? え? 対価? しかたありません、今夜の酒代は全てこのシオーネさんの奢りです!


 直後、酒場を震わせるほどの大歓声! 同時に机に突っ伏し寝息を立てるネブリナさん……意外と潰れるのが早かったですね……。


 いいですか、お嬢さん? シオーネさんもお酒に強いほうではありませんが、酔い潰れないコツはですね、自分の限界値以上に飲まないことですよ……。


 まぁ、冒険にしてもお酒にしても経験が足りなかったってことですねぇ~。あ、お姉さぁん! お酒とおつまみ、あとお水を追加で!

 はぁ~、今夜の稼ぎもパッと消えてしまったのです、ポロロンポロロン♪



 今夜のお酒(奢り分は含まないモノとする)

 サントルーブルー(麦酒)(度数5):一杯

 キックスイの純米酒(度数15):三本と少々


 おつまみ

 水煮大豆、焼きナス、コロッケ、鶏肉のソテー、サラダ、ご飯、ラーメン

 

 連続飲酒日数:四日目


 酒は~飲んでも~飲まれ~るなぁ~♪ ポロロンポロロン♪

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