4杯目 怪しい噂の出所は酒場と相場が決まってます!
勇者召喚暦二〇二〇年・六月九日・サラマンダー・天気:晴れ
ポロロンポロロン♪ えぇ、今夜も飲んでますけど、なにか?!
ちなみに今日も大工の親方のお手伝いをしたのでタダ酒なのです、ヒュ~♪
あと数日は助っ人として働く予定なので、しばらくはルンルンですね!
ただ、本来ならお仕事終わりの至福のひとときなのですが……目の前にはこちらを見つめ黙々とお酒を飲むネブリナさんが……なぜに?
いえ、別に職業柄、誰と相席しても気にしないんですけどね? 昨日の今日ですからねぇ……。
しかも、なんですか……どうしてスズローとかアレな銘柄を飲んでるんです? どうせ飲むならあと数百エルゴ出して、まっとうな純米酒を飲みましょう?
まぁ、好きで飲んでるならいいんですけど……趣味が合いませんね……。
そう思いつつ、お酒をちびちびリュートの調律をしていると――、
「あぁ、やっぱりここに居たのね、シオーネ……ちょっとお話しいいかしら?」
――笑顔なのに目は全く笑っていない、金髪ロングヘアーのエルフさんに話しかけられました。紅い縁に彩られた眼鏡、その奥に輝く青い瞳が印象的な女性。
エルフィーナ・シルフィリア、この街の冒険者ギルドマスターです……。
相席してから数分後、微笑みながら人に怒気を、いや殺気? をぶつけてくるエルフィーナ氏の話をまとめるとですね?
数日前、街に広まったとある噂のせいでA級冒険者パーティに指名依頼を出して事の真偽を確かめる状況になったんだけど、心当たりはないかなぁ~? と……。
知りませんね! いや、本当に!! なんですか? ネブリナさん? とりあえずスズローでも飲んで大人しくしていてください。
いやー、でも、信用第一の冒険者ギルドも大変ですね。
どこぞの吟遊詩人が東の霊峰エーベレスに小鬼の皇帝がいるなんて弾き語ったばかりに、色々調査しないといけないんですから。
よしんば誤情報だとしても、万に一つ本当だったら、下手な階級の冒険者は派遣できない。結果、安全第一に過剰戦力でもA級以上のパーティに指名依頼を出すしかない!
そんな感じの推測をほろ酔い加減でうっかり口にすると、両手でテーブルを叩いて立ち上がり、こちらを睨み付けてくるエルフィーナ氏。
しかし、静まりかえったお客たちの視線に気がついたのか、ため息を吐くと、
「一つ貸しよ、シオーネ……あとで覚えてなさい」
呟き、近くの木杯に入ったお酒を一気に呷り……顔をしかめます。
不味い……、どうせ飲むならもっといいお酒にしなさい、悪酔いしたいというなら別だけどって、趣味が合うじゃないですか……。私もスズローは嫌いです。
そうしてエルフィーナ氏が立ち去ると、再びいつもの喧噪を取り戻す店内。
さて、私もなにか楽しい曲でも弾きましょうか、ポロロンポロロン♪
む? なんですか、ネブリナさん? 酔い潰れていると思ったら相変わらずこっちを見つめてきて……。
ふふ~ん、冒険者ギルドを怖がっていたら吟遊詩人なんてやってられませんよ? ポロロンポロロン♪
さぁ、明日も元気に過ごすために歌うのです! 飲むのです! ポロロンポロロン♪
今夜のお酒
サントルーブルー(麦酒)(度数5):一杯
キックスイの純米酒(度数15):三本と少々
おつまみ
鶏の唐揚げ、切り干し大根、焼きナス、赤魚の焼き物、サラダ、オムライス
連続飲酒日数:五日目
依頼を受けたA級冒険者パーティは今頃どの辺りですかねぇ。ポロロンポロロン♪
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