2杯目 毎晩飲んでなにが悪いんですか?!

 勇者召喚暦二〇二〇年・六月七日・サーン・天気:曇り時々晴れ


 ヒャッハー! 今宵もご機嫌なシオーネさんですがなにか?!

 いいじゃないですか! ちゃんと真面目に働いたのです! お酒を飲むのはむしろ権利! 今夜も楽しく弾き語りましょう!


 てかですよ?! 今日もシオーネさんは大忙しだったのです。

 酒場で知り合った大工の親方に、人手が足りないからと作業のお手伝いを頼まれたりしちゃったりしたわけですよ!

 ザ・肉体労働! けど、私は吟遊詩人! こう見えて頭脳労働派なわけですよ?!


 なんて愚痴りつつ金槌でトンカンやって、塗装を終えると、そこはかとなく不思議な達成感がありました……。

 シオーネさん、頑張った! あのボロっちかった家が今では新築! いやー、下手な大工さんより上手なんじゃないですか?!


 とか、自画自賛しつつ親方の奢りで今夜も美味しいお酒を飲んでいるわけです。

 あ、別に飲まなくても良かったんですよ? でも、ほら……是非にと勧めてくるんです。断るのは失礼じゃないですか!


 さておき、酔いもいい感じに回り、酒場も大分賑やかになってきたので、そろそろ弾き語りでもいたしましょうか!

 昨晩仕入れた新米冒険者の大いなる一歩! 拙いリュートの伴奏ではありますが、どうぞお聴きください、ポロロンポロロン♪


 夢と希望に満ちあふれ、冒険者になった村の幼馴染み男女五人。

 いつかは竜すら討つと決意した、彼らの最初の試練。

 それは冒険者といわず村人すらよく知る魔物、小鬼のゴブリン集団! 百害あって一利なし! まさに害獣! 滅すべき悪! ポロロンポロロン♪


 小鬼が潜むは東の霊峰エーベレス、その麓。冒険者五人は準備万端、意気軒昂、臆することなく立ち向かう!

 しかし、彼らが相対するは、かの霊峰で小鬼を率いるその頂点! 小鬼の王! いやさ、それすら上回る小鬼の皇帝!


 狡猾老獪、深謀遠慮……瞬く間に窮地に陥る五人組! ポロロンポロロン♪


 けれど、あわや全滅というその瞬間! 冒険者一党の魔術師が使うは秘中の秘! 窮地より仲間を救ったは彼女の功績! 小鬼から霞の如く一党を逃したる魔術師の名はネブリナ・ネブラ! 霞の魔術師・ネブリナ・ネブラ!


 以上、新たな英雄譚その幕開けにございました、ポロロンポロロン♪


 ほろ酔い加減で語り終えると拍手喝采、投げ込まれる金銀銅貨のチップたち! いやー、昨日の新米君たちには感謝、感謝ですね~!


 そう思いながらお金を集めていると、ふむ、小鬼の皇帝なら早急に討つべきだろう、などと呟き神妙な面持ちで頷き合う冒険者一党が複数組。


 アレは確かA級辺りのパーティでしたっけ? 哀れゴブリン、皇帝がいると誰かが語ったばかりに過剰戦力で蹂躙されるんですね……。

 まぁ、でもあの小鬼集団に多くの村が脅かされているのは事実ですし? それが滅ぼされるのは良いことなのです。頑張れ、エリート冒険者パーティ!


 さぁーて、今夜はなんだか気分がいいですねぇ!

 ちょっと多めに飲んでもいい気がします! 給仕のお姉さん! チップも沢山手に入ったし! お酒もおつまみもじゃんじゃん持ってきてください!

 

 ポロロンポロロン♪ ふふっ、リクエストがあれば今夜は無料で弾きますよ~!



 今夜のお酒

 サントルーブルー(麦酒)(度数5):一杯

 キックスイの純米酒(度数15):四本と少々


 おつまみ

 冷や奴、タコのお刺身、青魚の揚げ煮、鶏の照り焼き風、サラダ、プリン

 

 連続飲酒日数:三日目


 さらば~小鬼~♪ 旅立~つ彼らは~♪ 天下~無双の~冒~険~者~♪

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