間章:偽装カップルと高校生達の日常・箸休め編
閑話1『鎧塚の平日』
やあ皆!! 僕だよ!! 珠喜だよ!!
スマホのテンキーフリック入力だとちょいちょい珠喜だよがたまきたまよに化けるね!! 小濁音半濁音キーの位置が悪い、そんなお日柄ですがいかがいたしましたでしょうか。
どうもしねーっすわ。眠いんじゃない?
それもそのはず現在時刻は午前四時。あの二人を最推しとして活動する僕たちの朝は早い。
もともと小さい頃から僕は情報屋なるものに幼馴染みの女のアニメ趣味に影響されて渋々嫌々ながら影響を多大に……あっやべ影響二回言ってしまった。マジで眠い。
それもそのはず(2度目)最近なんかもう獅子奮迅の活躍だったじゃないですか僕。白浪に正気に戻るためのメモを与えて伏水先輩の家の事情調べて、笛まで取ってきた。実際あのデートのMVP誰だって言ったらこの僕が上がるんじゃないでしょうか。
自分で言うとあれだな。止めよう。
まあ、それをなるったけ情報漏洩警戒して一人で行動した結果寝不足になったわけだよ。入試よりも頑張った。
いや入試なんて前日教科書見ただけだから全然頑張ってないのでは? 僕は訝しんだ。
おっと、そんなこんなで着信だ。僕はスマホを手に取った。
『──キャプテン、玄関から音がしました。突入しますか?』
「やめてくれ、不法侵入だ。僕は清廉潔白をモットーにしているんだぞ。そも、極力不干渉──」
『──突入します』
「馬鹿やめろ捕まっても僕が命じたって言うんだろそうやって僕の株をひたすら落とすのをやめね!!?」
僕の手下(と便宜上呼んでいる生徒たち)は、何だか僕に反抗的だ。手下には出来るだけ『好きな人を陰からずっと眺めてる人』や『好きな人の落とし物を集めるのが趣味な人』とか『好きな人の写真なら言い値で買う人』だとかそういう人たちが集まっている。不思議だね、人望だね。うーん、僕のスマホに入ってる暗めの道を撮影した写真とか机を探ってるだれかの写真とかあるけど、なんなんだろうね!!! 才能かなぁ!!?
何故だかまったく見当もつかないが、手下たちとにかく反抗的である。どういうわけだろうか。ふしぎ。
「いや、本当に赤城家に入るのだけはやめておけ、これだけはこの際僕を殴っていいから聞き入れてくれ」
僕は人徳があるので、こういっておけば手下は引き下がり、頭を垂れるだろう。
「『よっしゃ一殴りい!!』」
「へぼぁ!!!」
だがしかし何故か僕の株は低いので殴られます。これもまた人徳。
「まあいいわ、キャプテンよぉ。ぶっちゃけどう思うよ?」
「どう? ああ、あの忌々しい売女か……このまま逢瀬を楽しんでおるがよい……って感じだよ。はよ別れろ」
「……キャプテンお前、本当に宝田の事嫌ってんよな」
「そういうお前は好きなのかよ氷室ぉ??」
「……へっ、俺たちの推しはたった二人だぜ? そんなわけ」
氷室と呼ばれた手下の後ろから一人忍び足で近付いた女子がその制服の上着を剥ぎ取った。上着の裏には幾つか宝田希の写真が顔を覗かせていた。
「どの口で言ってるんだよ、氷室くぅん??」
「御姉様見守隊No.23の口だぜ?? 常に持ち歩くのは常識だ」
「持たないとどうなる?」
「知らんのか? ……発狂する」
「……キャップ、処断して。二人って赤城と宝田でしょ。どっちかっていうと百合組寄りの思考だ。こいつやっぱりどっかで裏切るよ」
「いやほら、まあ宝田の事嫌いなのは僕個人の感情だから別にいくらでも推してて良いよ。いざというとき私情を挟まず、美都と赤城さん、もとい僕のために行動してくれるならね!」
「まあ平日朝っぱらからこうして集まるんだ、そこんとこ、信用してくれても良いんじゃねぇか? まあ、集まったの、キャプテンと守江の三人だけだし」
「普段から号令掛けても人来ない。キャップ、脅しと賄賂で繋がる絆、おともだちごっこは楽しいでちゅかー? 」
「うるせえやい!! 別に今緊急時じゃないからねー!! 問題ないからねー!! べ、別に来なくたって良いんだからね!!! あと女子からその手の煽りされるのちょっと良いね、そう思うよな、氷室」
「今は前髪が邪魔だし来てるのもスウェットとかいう気の抜けようだが守江は身嗜み気を付ければ多少マシになるからな、さもあらなん」
「お、氷室いっぺん死んどくか?」
「つかキャプテン、なんでこんななんでもない日に召集かけた?」
「おい無視か良い度胸だな、そんな氷室には守江ちゃんハイキックだ」
「甘いな、タマキ=ヘッドガードだ。ご挨拶」
「どぉもぁ!!?」
僕の意識は落ちた。
あ、因みに召集理由は『生徒会長クビになってからの赤城平乃と国本美都の経過観察』以外ないのでとても平和。ほら僕ってば清廉潔白なので友達の異変とか気にするんですよねぇ。
……えっ、ダメ?
キモい?
そっかぁ……。
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