二十四話『幼馴染みと友達と』
昼食ではちょっとしたデートっぽいことをしつつ、
宝田さんは美人だ。平乃のように無理難題を言ってくるわけでもないし、俺が考えたこんな雑なデートでも楽しそうにしている、とても良い子だ……と思う。
……少し、目的を忘れそうになる。
けれど、それでいいとは微塵も思わない。俺はどこか他人を見るような思考でそう思って。
────ただ、それでも何事もないまま終わってほしいなぁ、とは思った。
◆◆◆
「やぁ」
チャッ◯ーの被り物を頭に着けた少女が、真っ正面からばったり遭遇。チ◯ッピーというのはあの最近リメイク版が発売されたあのゲームに出てくる背中の赤い原生生物で間違いない。可愛いよね◯クミン。ところでその被り物は大きく口が開いたところから目が見えるらしく頭の上から目が眠たそうにキョロキョロしている。夜行性だからだろうが……その目、どういうギミックだろうか?
「国本くんっ!」
「…………あっ」
ぼっと突っ立ってた俺と違って、宝田さんの行動は早かった。既に20メートルくらい距離を取った物陰に立っているのだから。
被り物の少女……もとい伏水先輩が、申し訳なさそうにチャッピ◯の目を撫でつつ、俯きがちに喋った。
「敵意はないっすけど────今日この辺りに偶然居たお友達は全員仲良くしてもらってるので……その、はい、来てもらっても良いすかね?」
「…………『次会うときからは私を絶対に信用しないでね』、でしたっけ。こういうことだったんですか」
「うーんと、まあ、それもあるんだけどね、でもまぁ……もう遅いかな」
それは単なる勝利宣言だった。伏水先輩は俺の後ろを指差し、次の瞬間には俺の意識は暗く閉ざされて────
◆◆◆
「───いてて…………あれ、待って。あれ?? 滅茶苦茶後頭部痛いんだけどいま催眠術に掛けられて意識飛んだんじゃなくて物理的に飛ばされてたの!!? ってここどこだよ!!?」
とはいえ、痛みは控えめ。一撃で気絶させ、かつ、手加減された……? フィクションじゃあるまいしそんなことはほぼ不可能だろう。
やっぱ催眠だろうか。そうだよ。倒れたときに頭でも打ったんだと思うね。うん。
……宝田さんはどこだ。
「あれ、やっと起きたね美都!! 次美都の番だよ!!」
──キィィィィィィィィッン!!!!!
「「マイクで叫ぶな!!!!!」」
妙に薄暗くて音の響く……ここはカラオケの一室らしい。いる面子は……平乃に珠喜、合川、百瀬、おまけに大量の女子……
宝田さんは、いない。ここにはいないと言うことは、危ないってことだ。そもそもどういう状況だよこれは……!?
「次俺歌います!!! いいよな!!!?」
「いいわけないじゃんばーか!!」「何回連続だってのバカタマキ!!!」
「バカにしちゃいけねぇよ……たった十二回だぜ??」
……えっと、確かに遊んでるな??? というか十二曲連続って、それ一時間くらい……。
……うわぁ。電車で少しでも信用した俺がバカだったみたいじゃん。
「…………どしたん美都?」
「平乃、今日は何する予定だった?」
「えっ、皆とカラオケ?」
……あっダメだ珠喜がそう言って平乃を囲った可能性は十分にあるわ。俺も宝田さんも平乃を人質に取られると言いなりになるので。じゃあ他の奴にも。
というか珠喜!!
「は???」
「は??? じゃねぇよ、俺がここに転がり込んでることにお前はおかしいと思わないと駄目だろうが!!!?」
「いやどーせこっぴどく振られたんだろ?? それで倒れるように赤城さんの元へ……Happy End(流暢な英語)、フッ」
うっわクソムカつく。何がムカつくってハッピーエンドの発音もそうだがこいつのなかで筋が通っているってことだ。確かに違和感ないな!!? いやあってくれよ……違和感、俺宝田さんに告白する気はないよ……。
次。合川。
「振られたって聞いたけど」
百瀬。
「まあ、ドンマイだな。なんか頼んでやろうぜ皆!」
白浪さん。
「…………どこがおかしいですか? んぅ、カラオケ? 私たちが……一緒に大部屋で? 確かにおかしいですわね、おかしい……おかしいかしら!!!?」
バサァッ、と御姉様見守隊の布を被った白浪さん。
Σd( ;∀;)
「ど、どうしたのかしら国本美都!?」
「全部察して布被った白浪さんの察しの良さに……」
「うわ抱きつこうとしないでかしら!!? 元はと言えばタマキが全部悪いのかしら!!! タマキがッ!!!」
「そうだな!!!」
「なん、ごふぅっ!!?」
騒ぎを聞いて寄ってきた珠喜の断末魔だ。さすが十二回連続で歌おうとしたやつの声だ。気分がマシになったよ、やったね。
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