十七話「偽装カップルと寝起きドッキリ(?)」
「…………ぬっふっふ……ついにこの時が来た!!」
という訳で美都と希のデート当日である。不詳ながら赤城平乃、協力者と一緒に
というわけで現在早朝六時。まずはこう、美都が心配なので叩き起こしに行くね!! あわよくば『ちゃんと○○持った?』と質問責めに……今のあたしの気分は美都のママよ!!
よぉし……合鍵は持ったね!?
「…………おじゃましまーす(小声)」
おや鍵が閉まってないとは無用心……ん?
「…………」←玄関で正座しているバカ
「ヒッッッッッッッッッッッッッ!!?」←悲鳴を上げるあたし。
いや普通玄関に正座してるやついると思わないじゃん??? ビビりじゃないしぃ!!?
いや、びびったぁ……ちょっとまだ美都の家の玄関が暗くてお化けかと思ったよ……。なんだ美都か……。
…………ん???
「……ん……あ、平乃か。何の用?」
「いや何の用?じゃないよねこんなところでなにしてんのさ美都さんもしかしてあたしの事脅かそうとか思ってました?ならお門違いへそで茶が沸いちゃうけどそこんところどうよ個人的には全然びびってないですけど一億人が見たら九億人がびっくりすると思うねうーいやあたしは全然全くこれっぽちもポチもタマも関係ないわなに言ってるんだあたし!!要するにビビってないからね?ね!!?」
「…………???」
玄関は昨夜ちょっと気圧がどうとかで冷えてた影響で、今そこそこ寒い。
あと今の完全に理解できないと言う風に美都が首をかしげるのは何さ。おかしいでしょ??? おかしくないの??? あれ??? いやでも暗闇と人影はあたし的にムリ案件だし真面目に心臓止まるかと思ったんだよ!!? はーめっちゃビビった……驚きすぎてなに言ってるかわからなくなりかけてた。ほんともう。
で。そもそも美都は何故に正座??
「……いや平乃こそなんでこんな時間に来てるの? 朝練だっけ今日?」
「違うけど、えっと」
「……あー、もしかして朝飯食べに来たのか? 安心しろ、もう出来てるぞ」
「わあい! 朝御飯なーに?」
「折角だから弁当の残りで炒飯と放置しすぎたキャベツを浅漬けにして塩昆布とか色々混ぜたやつある。他にも──」
「へー美味しそうだねぇ……じゅるり……」
◆◆◆
「ぐーすかーぴー(zzZ)」
「……行ってきます」
…………。
………………。
俺がデート行くって言うのにあいつ、朝飯食ってゴロゴロして終いには寝始めましたね。はい。終始に渡ってデートに対するコメントはありませんでした。
……いやマジで平乃は何しに来たの?? 朝から可愛いね???
じゃないよ。そうじゃない。そうじゃないけど別にそれでも構わない。今日も平乃が楽しそう何よりだ。
「あははは……」
とはいえ、平乃の態度はまるで手間のかかる妹のそれ。マジで脈ない感じだろこれ。
あー、一周回って笑えてきた。
「あー、くっそねむい」
因みに俺があんなところで正座してたのは単純に眠れなかったからである。単純にデートというのに緊張していたので。
座禅、とかあるじゃん? そういう感じで心を鎮めていたのですよ。
────だって、ほら俺と宝田さんの関係は偽装恋人だから。
それでなんかこう、その、ほら、勘違いしてしまうのはダメではないでしょうか!!!
俺を信じて偽装恋人にしてきやがっ……してくれ……していただいた? いや偽装恋人にした、でいいか。俺達を偽装恋人にしてきた平乃に対して不誠実だ!!
どういう事情であれ約束は約束だ。お前が襲う側になってどうするんだよ、嘘は良くないぞというか……いや襲わないですけど。
俺だってこの関係に、というか俺に対して宝田さんに愛とか恋とかそういう感情があるわけないのは重々理解しているつもりだ。だってまだ話すようになってから一週間経ったかどうかですよ? 接点なんて平乃くらいしかないのに? 大体今週の出来事を思い返すと宝田さんと過ごした記憶よりも野郎共の影がちらつく……何故だ……??
まあそんな感じで、冷静に考えたらこんな関係で恋愛感情があるわけないじゃないですか。
でもほら可愛い女子と二人っきりで出掛けるんだよ? そんな事態に緊張しない男子などいるだろうか。
いるわけないじゃん。そういうことです。相手がモテる女子なれば尚更だ。
だが安心してほしい。ぜったいに手出しはしない。
『ほんとぉ?? 希に手を出したら……分かってるよ ねぇ……美都??(指をぱきぱき鳴らす平乃の幻覚)』
お前は平nいやイマジナリー平乃!!!!?
これに限る。心に一人イマジナリーフレンドならぬイマジナリー平乃。これがある限り間違いは起こらないであろう!! ……いやでも平乃に殴られるのはアリかmいやなんでもないですほーら良い子ですから、ね? その拳を下ろしてくださいよ。はーい良い子良い子ー、かーわいー子!!
俺も心にイマジナリー平乃を持たなければ、怪しかっただろう。一家に一台イマジナリー平乃……いやそれは流石に邪魔じゃないか? それはそう。というわけで一回消えてくださいお願いします。
え、消えない?? そっかぁ。まあ平乃だから良し。
ついでに背後に
「……ん? 今なんて??」
振り返る。
……誰もいないじゃん。眠くて変なものが見えていたのかもしれない。いるわけないだろこんなところに同級生が。
だいたいまだ家を出て数分も経ってない。とはいえそんなもの見た気がすると錯覚するくらいに眠いか?
眠気冷ましに走るか。……と、その前にもう一度確認確認。
まあ後ろには誰もいない。そうだよね電柱の側に落ちている釘バットとかまあ落とし物としてはよくある部類だろう。
「……ん? いやそうじゃないだろ!!? ……って、あれ?」
振り返った。しかしなにも落ちてない。
……眠くて変なものが見えてる気がしてるだけかもしれない。もしかしたら次に落ちてるものはよく知ってる誰かの写真か、グッズか。なんかの仮面かもしれない。
まあ眠いだけだろうな。そして最後にもう一度振り返、
「どーもスティーカちゃんだよ!!!!!」
「そっかスティ──誰!!!!?」
「職業探偵兼ハウスキーパーという名の掃除屋だよだよバッキューン!!!!」
手を銃に見立てて人差し指で俺の胸を小突てきた探偵っぽい服装をした色白の少女。
「あ、伝言。お嬢サマちょっと手間取ってそうだから二時間くらい集合時間後ろに倒しておいてね少年!!」
「は、え? あのいや、待ってください、あなたは何者で、お嬢サマって誰ですか」
「やーねぇもーっ! 言わせんなっ!!!(きゃぴーん☆)」
頬に手を当てくねくねとし出した自称探偵の少女。いや職業探偵? まあいいや。なんなんだこの人……?
いや、なんとなくだが想像はつく。俺の中でお嬢様というだけで現状二択で、待ち合わせというだけで一つに絞り込める。宝田さんの家が金持ちー、みたいなことはなんか聞いたことがあったし。
でも、えぇ……? これが伝言役……というか俺、宝田さんの連絡先持ってるし聞いてみるか。
「おやー、スティーカちゃんの目の前で電話ですかぁ、あ、もしかしてスティーカちゃんが信用できないでございますかね!!?」
俺の肩にすがり付くようにスティーカちゃんとかいう人が抱き着いてくる。あ、勿論信用は出来ないです。
「もしもし宝田さん?」
『……………』
あれ? 電話には出たっぽいんだけど無言……?
「もしもし? 宝田さん??」
『あ、はい、どうしました?』
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、今こっちに《スティーカちゃん》って名乗る不審者がいるんだけど」
「ふ、不審者とはなんですかーっ!!! 歴とした大人!! 定職に就き、身元も保証された人間ですがーっ!!? あっ、この白い肌と赤い目がダメなんですね!?!? このまなこが!!! えぐってやるひとつ残らずにだ!!!」
目に手のひらを当てて「目がーッ!!!」と言ってる暫定探偵を無視する。
『……ああはい、そういうことか。ちょっとこれを須智佳に聞こえるようにしてもらってもいい?』
言われたのでスピーカーにしてみた。
『須智佳』
「スティーカちゃんです。スティーカちゃんって認めないと聞きません」
「スティーカちゃんだって」
『須智佳は話し半分に聞いてればいいです』
「ひっどーい!!」
『私、伝言なんて頼んでないから。寧ろなんでそこにいるの?』
「ひどーい!! 朝ぼうーっとしてたから優しい優しいスティーカちゃんがね」
「傍迷惑じゃん」
「なにおぅ!!?」
『でしょ? 国本くんからも言ってもらえると助かるよ』
「スティーカちゃんは立派にお嬢サマの頼みを遂行してますが!!? ココに証拠探偵ひみつ道具盗聴器・改!! ここに本日お嬢サマの部屋に突撃したときの音声が」
「それただのボイスレコーダーじゃ……」
「本来のひみつ道具はこないだ踏み潰したので今は安物の代用物でございますねー、しゃーねっすわー! だーれが壊しちゃったかなー!!」
『須智佳でしょ』
「ハハッ☆ 再生ボタンポチーッ!!!」
◆◆◆
『お嬢ー、はいりまーすよー(小声)』
『んぅ……』
『グッドモーニングコールスティーカちゃんでーす、テッテレーッ!!』
『……ふゃ?』
『あ、これ完全におねむですね。お嬢……あこれ録音してるんだったお嬢サマねむねむなら時間送らせるように言っときますよ。どうしますー?』
『んにゅ』
『そっすかー、じゃあ二時間くらい送らせるって言ってきまーす。というわけでお嬢サマおっきてー。爆音目覚ましスイッチON!!! えいっ────』
◆◆◆
「ああああああああああああうるさああああああああっ!!!?」
鳴り響くベルの音!!!! 録音機の音がやたら小さくてよく聞こえない関係上滅茶苦茶耳を近付けていたお陰で耳をぶち壊すような爆音!!! 録音機が音小さいんじゃなくて元の音自体が小さかったのか!!!! そりゃそうか寝起きだもんね!!!!
あああああああ…………耳がぁ………。
スティーカちゃんさんは『ドッキリ大成功!!』のプラカードをもってニコニコしていた。寝起きドッキリ大成功、じゃないよ……こっちは耳破壊されてるからね??
「はいっ!! 嘘じゃなかったでしょう?」
『あの爆音の前でそんなことをしてたの……? 須智佳、帰ったら覚えてなさい』
「でもお嬢サマ今から間に合わないでしょ? 準備、きっとまだ全然終わる気がしませんよね? ほらほらどうなんです? どうなんですぅ??」
『くぬぬ、須智佳のくせに図星を突いてくるなんて。……うう、えっと。あの、今の音電話越しにも凄かったけど国本くん大丈夫?』
「あ……右耳じゃなきゃセーフだから大丈夫かな」
『それってつまり左耳はアウトだよね……で、その、悪いのだけど一時間くらい集合時間送らせてもらっても……いいかな?』
「勿論いいよ」
『ありがとう、それじゃあ……その、ごめんね。電話切るよ。またね』
「わかった、またね」
電話が切れる。
「じゃあこの辺でもう一回お嬢サマの寝息セットを右耳で鑑賞しますか!!?」
「耳破壊する気ですか!!?」
俺が切れる。そしてスティーカさんが腹を抱えてゲラゲラと悪魔みたいな笑い声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます