知るって大事


 着物を着るには知識がいる。これは確かなことです。

 だってきちんとした姿になるまでに、けっこう物が必要なんだもん!

 まだ若かった私が覚えたのは、


 長着、長襦袢、肌襦袢、帯、衿芯、腰ひも、伊達締め、帯枕、帯板、帯締め、帯揚げ、足袋、草履


 これが全てそろわないと、着物姿にならないってことです!

 さらに上手く着るためにはコーリンベルトとか、クリップとか、まぁ、細々とした物が入り用だったりします。

 うんざりしませんか? 私は「覚えきれないっ!」と叫びましたよ。堪え性がないもので。

 だってのにウン十万の訪問着とか買わせたがる呉服屋さんって………。まぁ、そこは置いといて。

 聞きなれない人にはさっぱり分からないでしょう。私は分かりませんでしたよ、ええ、肌襦袢って何? ってくらいでした。

 実は私の母というのが、まーったく! お洒落に興味がなく(私も近い感覚なんですが)もちろん着物の知識もなかった人で、着物に関しては役にたちませんでした。

 行事があった時にレンタルして着付けてもらえばいいというのが母の考え。でもこれ、けっこう合理的だと思います。

 だって実際に、着物を着る機会って行事ごとですよね。一生に片手で足りるくらいしか着ない、なんて人もいるのでは。

 だったらレンタルで十分。着付けてもらった方が綺麗だし、下手をしたら正絹の着物よりポリエステルの着物の方が写真映りがよかったりしてしまいます。

 娘の七五三のお写真は、ポリエステルの着物でした。だって写真撮ったらすぐに脱ぎますもん。それで良いんです。

 ただし、それはあくまで行事ごと。ほんの一時、着る場合。

 例えば習い事。お茶や筝三味線なんかだったら、そうはいっていられないでしょうし、私みたいにバンバン着たい! という人もやっぱり知識が必要なんですね。お金をかけない為にも。

 今はYouTubeやGoogleで知ることができますね。

 私が間違っていたのは、呉服屋さんは専門家なのだから聞きに行けば教えてくれると思い込んでいたトコロ。

 もちろん、教えてはくれます。でも呉服屋さんは商売人です。売るのがお仕事。当たり前のことです。

 知ろうとすれば、木綿着物のことも、洗える長襦袢のことも、調べて知ることができた。のに、怠惰な私はそれを怠った。本当にそれだけの話です。



 知ることが大事です。そして挑戦してみること。それに尽きますね。

 調べていくうちに、着物をファッションアイテムの一つとして身につけている若い人達の存在も知りました。

 羽織を洋服の上に羽織るのもお洒落だなぁっ、とか。ブラウスの上に長着、そしてスカートをあわせてベルトって、メチャクチャ可愛いんでない!? とか。

 あと、デニム着物の存在とか。パーカーの上に着物、足下はスニーカーとか。

 あぁー、自由でいいんだなーって。よく考えたら、着物ってアパレルですよね。ファッション。自分が好きで装う時に、誰になんの気兼ねがいるんでしょう。

 部屋着の位置づけだった浴衣が、今ではテレビのアナウンサーが着て夕方放送しているくらいなんですから。

 下着さえ見えなきゃいいのだ! ってくらいに思えてきました。


 うってかわって、浴衣はアイテムが少なく着れて良いですね。

 初心者はここから入るのが一番良いんでしょう。私もここから始めるべきだったーっと勉強しました。


 浴衣、肌襦袢、半幅帯、帯板、腰ひも、伊達締め、下駄


 これで着れちゃうんだから、夏は浴衣でしょ!

 作り帯も可愛いのがありますねぇ。リサイクル品ならリーズナブルに手に入りますし。

 何より驚いたのが、リサイクルショップでの半幅帯の安さ! しかも可愛いのがたーくさんあったんです!

 そこで、あ、もしかして着物ってこーゆーものだったのかも、って気づいたんですよね。

 つまり、古着を着回していくもの。

 私がお姑さんの着物をもらったように。おあつらえした人が着れなくなったら、次の人に譲っていくもの。

 だってねぇ、お姑さんの持っていたつむぎの着物、それはもう丈夫だったんです。仕立て直しができるように余分に重ねて縫い合わせてくれてあったし。

 着物って何代先も着られるように作られてるんですねぇ。

 って考えたら、ウン十万でも三代先まで着たら、それはもうけっこうな安さになるのでは? と。これは、身内に着る人がいる場合でしょうけど。

 だけど、そういう肝心なことは、呉服屋さんは教えてくれない。だって、高い着物を買い続けてくれなきゃ困るから。

 何故、買い続ける必要があるかというと、着る人が圧倒的に少ないから。

 継承されていかない。本来はお祖母ちゃんが着て、母親が着て、娘が着るような仕組みであったはずなのに。だからこその、高額なものだったはずなのに。

 そういう感覚が失われていくのは、少し寂しいような気がします。

 とりあえず、子供が結婚する時がきたら、お姑さんが私達の結婚式で着てくれた黒留袖を着ようと決めました。…………着る機会はないかもしれないですけどね!? 


 話が逸れてしまいましたが、私は浴衣なら自分で着れました。

 肌襦袢をちゃんと覚えましたからね! あと、ちまたでは着付けの動画はいっぱいありますし。

 ただ盲点だったのは下着でした! けっこう重要なんですね。

 痛感したのはやっぱり着てみて。足ですね、太ももの内あたり。汗でベタつきます。あと、下手をしたらお尻のラインどころか後ろが透けて大変なことに。

 浴衣は長襦袢を着ないので、けっこう起こりえる事態なのですね。

 ステテコを履いておくといいのだなー、とか。肌襦袢のワンピースタイプとか便利、と分かりました。

 さらに、浴衣の下に長襦袢を着れば着物扱いになることも知って。あ、着物の普段着ってこれでいいんだ、と、つくづく分かりました。

 帯締めや帯揚げがない半幅帯でも十分なんですね。だって普段着なんですもん。気張って袋帯で二重太鼓にする必要なんかないんです。

 知るって本当に大事。そして実践あるのみ!

 洗える長襦袢を手にいれた私は着物タンスを前に、よっしゃ!! と意気込んだわけでありました。 







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