【スタッフ募集】 天使業

* * *


【アルバイト募集】


未経験者歓迎!

アットホームでホワイトな職場です!


勤務地:天界 地上 ※応相談

時給:1200〜1500

業務内容:死者の魂回収 楽園警備 奇跡・神託代行 等

    昇給・昇格あり 残業無し 交通費支給

交通費・光輪・翼支給

連絡:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇



* * *


——―悪くない条件だ。

ふと、青年は求人広告の前で足を止めた。

専門学校での生活にも慣れ、時間を持て余している青年にとっては事実、良いバイト先だ。


(時給も悪くないし、就活に使えるエピソードも作れそうだな)


広告を今一度確認する。

青年が応募の電話をかけるまで、時間はかからなかった。



「君が応募してくれた子だね」


白を基調とした簡素な部屋、デスクには頭上に光輪、背に一対の翼を持った真面目そうな男が座っている。


「はい」


どこか冷たくも感じられる鋭い目で、履歴書と青年を見比べた。


「うーん、まあ、採用するよ。うん」


男の歯切れの悪い返答に、青年は拍子抜けした。こんな男が面接官をやっている職場だと考えると、青年は急に不安を感じた。


「いいんですか、こんな面接で」

「いいの、いいの」


あっけにとられた青年をよそに男は話を続ける。


「で、どこで、何をしたい、とかさ、希望はあります?」

「学生なので、地上はきついですね……。できれば、天界での仕事がありがたいです」


青年は戸惑いつつも、落ち着いてこたえる。


「ふーん。ちょっと確認するから」


男はデスクのパソコンに向き直り、なにかカタカタと打ち込み始めた。


「地上に神託メールを送るのは、どう? 時給はちょっと安いけど、天界で働けるよ」

「本当ですか。じゃあ、それがいいです」

「うん、光輪と交通費は支給されるから、いつから入れる?」

「えっと……、来週」

「分かった。色々決まったら連絡します。では、今日はこれで」


男は面接を短く切り上げ、席を立った。


「こんなんでいいんですか?」


たまらず、青年は大声を出した。


「本当はダメだよ。ただ最近は立て込んでるんだ。悪魔の活動が活発でね。バイトには関係ないことだけど、色々あるんだよ」


聖戦の準備とかさあ、男は毒づくように言い残し部屋を後にした。


白い部屋に一人、青年は残された。


(雑務とはいえ、天使のアルバイト募集がある時点で、疑うべきだったのかも。これって正規の天使が戦争に出払う穴埋めってことじゃないのか……、戦争⁉︎)


——―男の受難は始まったばかりである。

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