第13話 少女漫画の取材②
「ということで、三人でデートするのも何か貴重な体験になると思うんだ」
「だからそれ修羅場だから! もはやデートすらないよ!」
「ルリナはなぜそんなに怒っているのかしら?」
「キレる若者だから仕方ない」
頭を抱えた霧山はぶつぶつと何か言い出すが、聞き取れない。というか怖い。
「はぁー・・・・・・わかった。三人でデートやりましょう。この際一人増えてもデートはデートよ! 最後は三人でホテルよ!」
「3Pするのか?」
「春田君バカなの?」
「すみません・・・・・・」
こうして三人でデートする事となった。
俺を真ん中にして、右にレティシア、左に霧山。
両手に花とはまさにこれのこと。銀髪美少女のレティシアが学校で有名になっているのはもちろん、霧山もこれはこれで男子に人気がある。黒髪ロングで生真面目な幼馴染みは成績も良く、色んな人から相談などをよく受けている。
そんな頭脳明晰で頼れる彼女を狙う男子は何人もいる。一部の人からは霧山に踏まれたいとか、冷たい視線を浴びたいとか特殊な人もいるけど。
改めて俺は幼馴染みを徹頭徹尾観察してみる。確かに可愛いと思う。今日は肩を大胆に露出した白いワンピースで気合いが入っている。不意に脇がチラリと覗くのがエロポイント。胸もレティシアに負けず劣らず主張していた。ここは一つデートらしいことを言ってみよう。
「霧山、その私服可愛いな。脇がエロい」
「え? あ、ありがとう・・・・・・・・・・・・一言余計」
一瞬喜んだ霧山だが、俺にジト目を向けて不服な様子。脇がエロい事はお気に召さなかったようだ。
今度はレティシアの方へ視線を移す。
こっちは鎖骨から谷間まで開いたニットのワンピース。その服装だと大きい胸が強調して破壊力抜群でやばエロ。そして太ももの瑞々しく眩しいその露出はかなり攻めている。改めて見ると、なぜレティシアがそんなパない服装をしてんだ・・・・・・?
100%華が選んだ服装だろうが。
「レティシアも結構可愛いというか、めっちゃエロい。その太ももは眩しすぎて直視できない」
「? ありがとうっと言うべきかしら? ハナが選んでくれたものだけど、ソラトが気に入ってくれたのなら嬉しいわ」
素直に俺は感想を述べると、レティシアははにかんでいた。その姿に俺は不覚にも少しドキッとした。
「・・・・・・何か負けたような気がする」
左からそんな小声が聞こえた。
とりあえず、デートらしく服装を褒めるということは完了し。
「これからどうするんだ? 何かプランとか考えてるのか?」
「そうね。定番だけどこれから恋愛映画を観る予定よ」
「えいが? また聞いたことのない言葉ね。一体どんな意味なの?」
「ん? そうだな。まあ行ってみれば分かるよ」
俺達は一先ず映画館へ移動することにした。
受付でチケットを購入して、二人に渡す。飲み物とポップコーンを買ってから入場し、席に座る。
レティシアは俺が買ってきたポップコーンを口に入れた。
「軽いわね。・・・・・・ん。これはバターの味。美味しいわ。これがポップコーンって言うのね」
ポップコーンを気に入ったレティシアはパクパクと口の中に入れる。
「レティシアさんの国にはポップコーンや映画ってないの?」
「そうね。初めて目にするものだわ。映画ってテレビとは違うのかしら?」
「映画はフィルムを使って映像を映してるんだ。テレビとはちょっと違うかな」
「まだまだ分からないことだらけね」
まだ自分でも知らない事を知ろうとするレティシアは、一生懸命に情報のインプットを繰り返す。そんな探求を続けるレティシアは楽しそうだ。余程勉強好きなんだなと感心する。俺には到底真似できない。
俺は横目で霧山が神妙な顔をしているのに気付いた。一体何を考えているのだろうか。
「春田君ってレティシアさんの事・・・・・・」
どうやら俺とレティシアの関係について考えていたようだ。なぜそんな事を聞いてくるのか。
「友達だよ。何でもかんでも恋愛に結びつけるなってお前は言ってたよな?」
「・・・・・・そうね」
レティシアとは随分一緒にいるような感覚だが、霧山が思っているような感情はないつもりだ。
霧山は俺の答えにまだ何か聞きたそうな顔をしていた。俺がレティシアに特別な感情を持っていると疑ってるんだろうか? 冥界からきた死神だと隠し事をしているから、その辺り霧山は俺とレティシアの関係に疑問を抱いてるんだろう。
そして明かりが暗くなって、霧山の顔が見えなくなった。俺はスクリーンへと顔を向ける。そろそろ映画が始まる。
私語をやめて画面へ集中しよう。
確か霧山が選んだ恋愛映画だからどんな内容かは知らない。でも霧山が観たい映画ならあまあまなラブストーリーに違いない。
開始から一時間。
主人公ーージョンには付き合いたての恋人ーールリがいる。しかし、ジョンの本当の気持ちは別の女性ーーシアに傾いていて、気持ちが抑えきれなかったジョンはシアに思いを告げてしまう。結果、両想いだった事がわかり、シアと付き合うことになった。
そして、ジョンはルリと別れるために呼び出す。
話の流れはこんな感じだが・・・・・・これドロドロの恋愛映画じゃねぇか!? これから修羅場になるって場面だぞ。
途中で寝るだろうなって思っていたんだが、続きが気になってずるずるとここまで引き込まれていた。
「ルリと付き合っていたのにシアと恋人になるなんてこの浮気者に制裁が必要よ。ルリが可哀想。シアという泥棒女とルリの気持ちも知らないで自分勝手にシアと結ばれようとするジョンにはきついお仕置きを与えてシアの目の前でジョンをこれでもかってくらいに愛し合ってる所を見せつけるのよ。フフフ、ジョンとルリは永遠に愛し合ってシアは壊れるまで一生拘束させるのよ。フフ、フフフフ」
隣から感情移入でもしたのか、呪詛のような言葉が聞こえてくる。俺はぶるっと身体が震えてきて、寒気さえ覚える。ヤバいのがいる。
もし霧山と付き合うような彼氏が現れたら、軽く忠告しようと決意した。
それからレティシアの方は。
「恋人とは男女が愛し合う事なのよね。どうしてジョンはルリと別れるのかしら? ジョンはシアを恋人にしたのは愛し合っているから。それならルリも愛し合っているのではないの? 二人を愛し合うのは無理なのかしら?」
そんな一夫多妻制を容認するような発言をしていた。
死神だからまだ恋愛観というのが理解できていないのだろうか。
冥界ではどのような価値観を持っているんだろうか。
少しだけ俺は冥界について興味を持ち始めた。
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