第14話 VSてまり 優正による定石知らずの初心者プレイ
対戦の前に、優正はゲーム内で初心者用の構築済みデッキをもらって、準備をすすめる。
対戦相手であるてまりは、優正のカード所持状況に合わせたデッキを用意してくれる。
そして部屋の両側に立ち、対戦モードからマッチングを行い、対戦を開始する。
「オープンタクティクス!」
「……へっ? 何だって? おーぷん?」
「対戦開始の合図ですよ? 知らないんですか? チュートリアルの対戦開始時にも出ていたと思うんですけど……。その、これを言うのが、対戦開始の作法になっていまして……。その……」
「そうだったのか、スマン。えっと、おーぷんたくてくす?」
よく分からないが、何ごとも戦いは礼に始まり礼に終わるものだ。
これもその一環なのだろうと、優正はてまりに習う。
「おっと、オレが先攻みたいだな」
「どうぞ、来てください」
システムによって自動で決められた先攻の手番。
揃えられた5枚の手札を眺め、プレイするカードの選択に頭を悩ませる。
「うーん、そうだな。やっぱりコレを建てておくのが無難だろうか」
優正はチュートリアル戦闘と同様に、引き当てた『遠見台』を囲碁で言う右上の星の位置に建てる。
これで次のターンから、優正の手札は1枚増える。
やはり選択肢を増やしておくのは良いことに違いない。
チュートリアルでも行われていたのだから、定石に違いない。
「よし、もう他にプレイできるカードはないな。ターン終了だ」
「相模さん……」
てまりの苦笑い。
何かマズいことをしただろうか?
やはり、先攻で『遠見台』を置くのが強い動きだったのだろうか?
なので、マナーとしてハメ技のように、やってはいけないことになっているとか?
「チュートリアルでは、そうでしたもんね。確かに
そう言って、てまりがプレイしてきたカード。
「『強襲作戦』を発動します。このカードの効果は、隣接する敵拠点がなくライフ2以下である拠点を無条件で侵略する。これによって、相模さんの『遠見台』はわたしのものになります」
「なっ?!」
「それまでは初手で星に『遠見台』は安パイの戦術でした。ですが、この『強襲作戦』カードが登場以降、悪手に変わりました」
その通り、『遠見台』は奪われ機能しなくなってしまった。しかし、次のターンで奪い返せば……。
「そして、わたしは侵略した『遠見台』の隣に、『護衛隊の兵舎』を建てます。隣接した陣が襲われた時、援軍を送り込む能力を持つ建物です。これで、侵略返しはできませんよ」
「うっ」
優正の浅はかな策略は見抜かれていた。
これで、ここまでのターンで優正は先攻のアドバンテージを放棄し、ゼロからのスタートになる。
「まあ、やれるだけやってみるか」
超初心者である優正に対して、てまりがある程度の手加減をしつつ導いてくれることを期待しつつ。
「よし、地道に本拠地付近を強化していこう」
方針転換して守備的に立ち回り、てまりのプレイから学び取ろうとする。
「なるほど。では、攻めていきますね」
優正の意図を汲み取ったらしいてまり。
より勢力を広げられる有効な位置に陣を建てつつ、それらのシナジーで資源を獲得していく。
それにより、守備的に立ち回っている優正よりも本拠地と、侵略に要する軍勢の強化が進んでいく。
………………………………。
「よし、これでわたしが70%制圧で勝利ですね」
その後、てまりの手加減らしきものもあって、多少いい勝負になった。
しかし最終的には、やはり最初の悪手によるアドバンテージの差が響き、フィールドの制圧を許してしまった。
「あ、あの……相模さん?」
「どうした?」
「いやー、初めてなのに、こんな風に負けさせてしまって気分悪いですよね……。すみません……」
「なんで謝るんだ? そんなことないぞ」
「よ、良かったです」
流石に始めたばかりの優正が、経験者であるてまりに勝てるだなんてことは思っていない。
だが、確かに一度でも負けてしまったら不機嫌になってしまう人もいるだろう。
てまりは、そういうのに前に出会ったことがあるのかもしれない。
「まあ、こんな初心者だけど、強くなるために手を貸してもらえると助かる」
「は、はい! 一緒に頑張っていきましょう! なんですが……」
「なんですが……?」
何か懸念点があるのだろうか?
「いえ、そろそろ今回、どういう大会に参加しようとしているのか説明させていただこうかなと」
「ああなるほど、そういうことか。確かに目標が見えていないと、どういう練習をすればいいかとかも分からないもんな」
そう言えば、ちらっと見えただけだが、このWCP上には多数のルールでの対戦方法があるらしかった。
最新のカードだけを使った対戦。古いカードも含めて全部のカードを使える対戦。
といった風に、レギュレーションが分けられているようだ。
レギュレーションによって大会も変わるのだとしたら、先にどのレギュレーションの大会に出場するか見定めておかないと、対策も練ることができないだろう。
「はい、わたしたちが参加するのは、過去のマイナーテーマ数種類のみの中での覇権を競うマイナーレギュレーション。なぜ、そこに参加するのか、今から説明させてもらいます」
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