第13話 チュートリアルプレイすると、お金貰えるってマジですか!?
時は2040年。
2020年生まれ、20歳の男である優正は思う。
最近のゲームは凄い。
アプリを自端末にインストールして起動。
すると、目の前に急にファンタジックな世界観を伝えるための、グラフィックが押し寄せてくる。
AR空間内で激しい戦闘が起きている。
何の戦火か知らないが、周囲で繰り広げられる剣戟やら魔法やらの飛び交い。
近辺で起きた剣士たちの戦闘に巻き込まれると思い、映像だと分かりながらも、とっさに横っ飛びに避けてしまう。
「外でやらなくて良かったな。避けた動きで誰かにぶつかるところだった」
「実際、サービス開始直後はうっかり街の中で、アプリを起動して、という事故が結構あったみたいです。それで大幅にPP持っていかれたっていうニュースが広まってからは、一気に収束しましたが」
チュートリアルには、てまりが付き添ってくれることになった。
困り事が起きた際のアドバイスを頼んでいる。
「おっ、これがタイトル画面かな?」
【World Change Project】
という装飾されたタイトルが、中空に浮かび上がる。
「はい。初回起動時は、そのままチュートリアルの対戦画面に移ると思います。チュートリアルクリア後は、各種モードを選ぶメニュー画面になります」
という、てまりの言葉どおり、ゲームをスタートするとチュートリアル戦闘に移行したようだった。
ゲーム内のストーリーに巻き込まれたようで、天の声からシステムの説明が行われていく。
【召喚されし異世界の人の子よ。どうか我らの国の勝利のために力を貸してください】
召喚されし……というのが、どうやらプレイヤーのことを指しているらしい。
そして、我らの国という通り、2つの城(?)が相対している内、優正の身体は一方の城の側にいた。
近い方が味方国、遠い方が敵国といったところだろうか。
「そう言えば、昔の映画で巨大な魔法のチェス盤で、チェスをやるなんてのがあったな」
城のあるフィールドは、マス目で区切られていて、巨大なチェス盤のようになっていた。
マス目は数えて、9×9だろうか。
右下隅から1マスずつ離れた位置に、味方側の城が建っていて、その対角線側に敵側の城が建っている。
【我らの城を落とされてしまうと、我らの敗北が決定します。逆に相手の城を落とすことができれば、我らの勝利です】
そういうゲーム性らしい。
やはりチェスとかに近いのだろうか?
「陣地取りと聞いていたから、囲碁の方が近いのかと想像してたんだけどな」
と思っていたら、その疑問を解消するような指示を天の声が出す。
【我らの手番になると、戦いの手段である手札が毎回5枚になるように整えられます。手札から新たな我らの陣として『遠見台』を配置してください】
カードゲームに当たる部分である手札は、いつの間にか優正の眼前に表示されていた。
5枚ある選択肢の中から、1枚がライトアップされて、使用するように誘導されている。
望み通り『遠見台』のカードを選択し、フィールドに配置する。
【ありがとうございます。我らの制圧する領域が拡大しました】
というように、『遠見台』の周囲1マスが自軍の城と同じ色に光っているのを強調してくる。
【この制圧領域がフィールドの70%を越えることで、拠点の侵略を行わずに相手に勝利することができます。本拠地の陥落かフィールドの70%制圧が、勝利条件です。さて、手番が相手に移ります】
相手側も優正と同じように、新たな陣地を配置して手番を終える。
「さて、次はオレの番か。……ん、手札が6枚になっているな」
【手札が6枚になっていることに気づかれましたか? フィールドに配置した『遠見台』の効果で使える手段が増えました。また我らが城も、獲得した資源により強固なものとなっていきます】
「つまり各種効果を持つ陣地を手札から配置して領土を増やして、それらを育てていくことでより強力な効果を得られるようにするということか」
【敵の配置した陣地の侵略を試みましょう。我らが陣から『ナイト』を出撃させ、先程敵が配置した陣地に攻め込んで下さい。その際、手札から『鋼鉄の剣』カードと『増兵』カードでナイトを強化させてください】
「よしっ、これとこれだな」
順序よく光っているカードを選択していく。
強化された騎士は敵陣を攻め落とした。
攻め落とした陣は、敵の色から味方の色に転じる。
【お見事です。敵の『前線基地』を攻め落とし制圧に成功しました。このように攻め落とすことにより、制圧領域を広げていくことも可能です】
その後、敵国は苦し紛れに新たな場所に陣を起きターン修了。
【それでは、この手番でトドメを刺しましょう。特別なカードを用意しました。このカードを使うことで、『ナイト』は『
言われるがまま、虹色に光るカードを使用する。
豪華な演出とともに頼りなさげな鎧を纏っていた『ナイト』が、歴戦の果てに辿り着く『伝説の騎士』へと進化を遂げる。
「よしっ、これで敵陣を選択すればいいんだな」
進軍。敵国本拠地に迫っていく。
迎え撃つ敵本拠地の近衛兵達。
しかし、その大群は『伝説の騎士』の剣の一振りにより、薙ぎ払われる。
そのまま侵略は成功し、敵本拠地は味方の領域となった。
ファンファーレが鳴る。
勝利を知らせる音だ。
【おめでとうございます。我らの勝利が決定しました】
「あー、これでチュートリアル終了か。思ってたよりも、早く詰まらずに済んだな」
「チュートリアル用に、基礎の基礎部分だけ紹介してますからね。本当の対戦では、もう少し長くかかりますよ」
チュートリアルは最低限。
詳しいことは、ゲーム内でやってる内に学んでいけというスタンスなのだろう。
【これで我らの国は、生き残ることができました。協力ありがとうございました、指揮を執る力を持つ異世界の子よ。また危機が訪れし時、こちらの側であれば、その時はよろしくおねがいします。それでは】
世界が溶けていく。
メニュー画面が浮かび上がってくる。
「なんというか、よく分からないストーリーだったな」
「あはは、まあメインストーリーは本当におまけですからね、このゲーム。代わりに陣営ごとのストーリーは、結構濃い感じなんですよ」
「そうなのか。……って、おっ?!」
優正が驚いたのは、自分のリストバンド端末からPP獲得の際の通知音が流れたからである。
「何もしてないのに。いや、チュートリアルをプレイしたから、日本全体の生産に貢献したって判断されたのか? どうなってんだ?」
最近のゲームは、プレイしたらお金がもらえるのか?
「まあ日本が外貨獲得のために、本腰入れてるゲームですからね。賑わいのために、プレイヤーが多く参入してくれた方がいいってことなんでしょう。ちなみに流石にそれでまとまったPPがもらえるのは、始めて少しの間だけですよ」
「にしても、まともに仕事するよりも割の良さそうな額、振り込まれてるんだが」
生産性の低い人間は、退屈そうに機械でもできるような作業をするより、生産性の高い人間によって生み出された外貨獲得コンテンツの賑やかしで協力をしろ、ということなのだろう。
「本当に凄いな、最新のゲームは……」
改めて、驚かされる。
「それではですねえ、相模さん?」
「なんだ、てまり?」
「チュートリアルも済ませたことなので、実際に対戦してみましょう」
ということで、優正とてまりの対戦が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます