第12話 儲かるらしいよNFT ただし、優勝者だけの特典です
略称は頭文字を拾ってきてWCP。
WCPは、現在世界で最も競技人口が多いDCGとされている。
ただし、ゲーム性としては、カードゲームと言って真っ先に連想されるものと結構な違いがあるらしい。
陣地取り、シュミレーションゲーム、カードゲームが組み合わさったようなゲームなのだという。
陣地取りで使うコマと、シュミレーションゲームで使う作戦行動を、カードが担っている。カードゲーム的なデッキビルディング、ランダム要素、戦略性をもって、迫力の陣営対決が繰り広げられるのだとか。
というのが、この数分で熱弁を振るうてまりに説明された内容だった。
「そして、WCPではカードの特殊演出使用権に、物凄い価格が付くんです」
「特殊演出?」
「はい、人気のカードの演出が、人とは違う特殊な演出になる権利です」
「物凄く強いカード自体とかではなく、演出になのか?」
「そりゃそうですよ。だって、強いカードが高くて不公平だったら、参入障壁が高くてプレイ人口が減るに決まってるじゃないですか」
そういうものらしい。
カードゲーマーは自分のデッキビルディング力やら、カードプレイの上手さで勝つことをありがたがる生き物であり、そこに至るまでのカードの所持状況とかのスタートラインは平等であることが望ましいのだとか。
ちなみに、ここはシェアハウス1階の別室。
参加者は優正とてまりだけ。
姫華はWCPをやったけど肌に合わずにやめたことがあったらしく、あれだけ
「百聞は一見にしかずということで、見てください相模さん。
これが現在WCPの特殊演出で、最も高額で取引されたものです」
そう言って、てまりは過去のニュース記事を優正に共有してきた。
「…………。…………えっとこれ、何桁だ? いち、じゅう、ひゃく、せん…………」
「PPに直すと100億です」
「…………100億」
思わず絶句する。
仮想通貨で取引されていたそれは、計算してみると確かにその通りの金額であった。
ニュースの真偽を疑って、オークションのログもさらってみるが、取引の実在性を強める証拠になるだけだった。
「流石にそれは極端な例ですけど。なんせ、第1回の世界大会の優勝者にのみ配布されたもので、カード自体も凄く強くて人気のあるものでしたので」
「なんだ。やっぱり、そんなもんだよな」
「そうですね。流石に年に数回、億単位の取引があるくらいですかね」
「オレには想像の付かない世界だ」
ゲーム内での強弱に関わらないアイテムに、それだけの金額が動いているという事実に驚きが隠せない。
「そんな高額だと、このゲームがサービス終了したとき吐きそうになりそうだな」
「他のゲームとかでも使えますから、大丈夫じゃないですか?」
「そうなのか?」
「はい。ここで取引されているのは、正確には演出のファイルとデータベースの鍵になってるNFTなんですよ。
他のゲームでも同じ演出データベースに対応していて、ファイルの規格が問題ないなら、使えるようになっています」
「難しいことは分からないが、ゲーム自体が無くなっても価値が残るようになってるということか?」
「そういうことです。それに基本的には演出の動画とか画像自体に、アート的な価値が付いていたりもしますしね」
理屈は分かった。
大会に優勝して、特殊演出を獲得することができれば、一気に億万長者になれるっていうわけだ。
ただ、それには大きな問題点がある。
「そんな、滅茶苦茶な人気のゲームで、世界1位とかなれる気がしないぞ」
「ははは、わたしもそれは無理だと思います」
としたら、やっぱりこの金儲け術は絵に描いた餅でしかない。
そう思ったのだが、てまりが新たに出してきた情報が、すぐにそれを否定するものだった。
「大きく額は下がりますが、別に世界大会覇者にならなくても特殊演出は配布されていますから」
「そうなのか?」
「はい、例えば今回ターゲットにしようとしている隔週で行われる地区大会では、参加者約100人の内16位にまで入れたら配布されますね」
「16/100か……」
結構厳しく聞こえるが、世界1位よりはグッと現実性が増して感じる。
「ちなみにそれで、どれくらいになるもんなんだ?」
「そうですね。優勝したら100万、16位で20万ってとこですかね」
「16位の時点で、1ヶ月農業やるよりももらえるのか……。スゴイなカードゲーム……」
人気コンテンツの中で動くビッグマネーに改めて驚きを覚える。
それとともに、優正の中で早くゲームに触れたいという熱が高まってきた。
「やる気みたいですね、相模さん。では、チュートリアルから始めていきましょう」
「おう!」
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