第9話 全てが終わるより早く 非常に【生産的】な世界の変え方

 優正は、てまり以外の3人に説明をした。

 てまりと出会った日の話。丘から下る際にぶつかってメモを落とした男性のこと。

 恩師から日本を変えようとしている者がいると警告を受けたこと。

 そして、その警告の内容が、おそらくはAIアルゴリズムの変更を画策しているということ。


「にしても、2000万って人口の3分の1じゃねえか。どんだけ人望あるんだ、あの人。そりゃ日本もひっくり返せるわ」


 工藤先生の持ち票数のことである。

 1発で提案を通すには3000万票必要だが、その内の2000万票が工藤先生のものだった。

 つまり、残り1000万票をかき集めるだけで達成できてしまう。

 いや、その1000万票を集めるのだって、楽なことではないだろうが。


「そういえば、愛深が委任してるのは誰なんだ?」


「えっ!! 誰なんだろう今調べるね。ちょっと待っててね。分かった、私もその人に委任してるみたい」


「愛深も工藤先生と関わりがあったのか?」


「優くんの恩師さんとの繋がり!! ……があると良かったんだけど、ごめんね、あんまり知らない人なの。多分、その時のことあんまり覚えてないけど、みんなが委任してるからっていう理由で委任したんだと思うな」


 実に日本人らしい理由だ。

 他の委任者も同じようなノリで委任してしまっていそうだ。


「あー、後は他の有権者から委任されてたヤツが、又委任して票が集まってるのか」


 ということで、委任が集まっているからという理由で、雪だるま式に膨れ上がっていった結果、2000万なんていう途方も無い数字になっているらしい。

 他の真っ当に機能している政治投票においても、その状態で特に問題がなかったため、誰も気にしていなかったということだろう。

 それだけの権力を有していながら、今まで悪用してこなかったのは、本当に人ができているというかなんというか。


「じゃあ、ここからが本題だ。探さないといけないな。どの投稿がメモの男の提案なのか」


 投稿は、この旧民主主義の税金運用みたいな再分配案だけではない。

 幾つもある投稿の中から、メモの男の者を探し出さなければいけない。

 名前も知らない人間のものをどうやって?


「顔か……。顔が分かれば、オレとてまりは見てるから判別できるな。ここからプロフィールページとか、名前から顔探したりってできるのか?」


「あっ、私それだったら、探せると思うよっ!! 優くん、国民IDから検索できちゃうんだよ」


「マジか。そんなことができるのか?」


「うん、ハッカーの間で使われてる国民IDと顔写真が紐付けられたデータベースがあるんだよっ!!」


「そうなのか。じゃあ頼めるか? とりあえずは、この東郷っていうのから」


「うん、任せてね!! ぱぱっとヤるからね!!」


 そんなデータベースが何のために存在しているのかと思ったが、追求するのは止めておいた。

 少なくともAIが有害で非生産的だと判断するのなら、作成者たちに大きなマイナスを与えて止められているだろう。

 それが起きていないということは、有用な場面があるのだと認められているということだ。


「見つかったよ!! この調子で、順番に表示していくから!! ……って優くん? てまちゃん?」


 愛深が表示した顔画像。

 それを見て、優正とてまりの顔は、よほど驚きに満ちたものになっていたのだろう。

 愛深から心配される。


「相模さん、この人です!」


「ああ、間違いない! ふっとばしたい顔だったから、オレもよく覚えている。愛深、でかした!」


 なんという偶然か、姫華が参考にしたこの半分徴収する案を提出したのが、工藤先生の言っていた『日本のシステムを根本から変える』ことを企んでいる男だったらしい。

 この男の提案が通ってしまうのなら、本当に日本はひっくり返ってしまうだろう。

 でも、こんな滅茶苦茶な提案に対して、本当に賛同者は集まるのだろうか、という疑念もまだある。


「工藤先生はともかく、他の持ち票数が多いヤツらをどうやって仲間に引き入れるつもりなんだ?」


 そういった持ち票数が多い人々は、どちらかというと分配される側ではなく徴収される側のはず。

 損する提案に賛同するとは思えない。

 そんな思いから口を出た言葉に、陣内が解答を用意してきた。


「多分、この分配委員会というののメンバーに任命することを約束してるんじゃないですかね?」


「なるほど、分配する側に回れるなら得も大きいというわけか」


「なんなら、ボクなら勧誘の際に、もうこれだけ賛同者がいるというのを見せて、入らないと損するように思わせちゃいますね」


 詐欺師みたいな思考のヤツだ。と優正は陣内の評価を改める。

 陣内が今回のような話を持ち込んだ際には、騙されないように気をつけようと思った。


「でも、こんな変な提案が通っても、すぐに取り消すための提案が上がって戻っちゃうんじゃないですか?」


 先程から、うんうん唸っていたてまりが声を上げる。

 どうやら、本当にこんな方法で日本を変えるようなことができてしまうのか、気になっていたのだろう。


「確かに一部の、この提案が通ったせいで損をした人が声を上げるだろうが、元に戻すための提案が通すのは相当難しいだろうな」


 大量の投票権が委任されてしまっていたことからも分かる通り、多くの人間の政治への関わり方は無関心だ。

 特に死に至るほどの大損でももらわない限り、声を上げることはないだろう。


「なんなら、むしろ過半数が戻すことへの反対側に回るようにコントロールするでしょうね」


「どういうことだ、陣内?」


「簡単なことですよ。半分より少し多くの人に対して、分配前よりも獲得できるPPが多くなるように配って、AIのアルゴリズム変更が得なモノだったと思わせてしまえばいいんです」


「なるほど、過半数が後天的な賛同者になると」


 半分より下の人間は生産性を上げることをやめてしまう。

 損をする高生産者は、日本から逃げていく。

 得をする低生産者が、自分たちを優遇するシステムに最後までしがみついていく。

 そうして緩やかに社会は衰退していく。

 つい数年前にリアルタイムで同じような形で衰退した自国を見ているはずなのに、分配により一時的に増えたプラスを手放さないために、半分より下の人間がシステムを戻す提案には票を投じない。


 AIで生産性の向上を促す仕組みは、思っているよりも完成度が高くできていた。

 そんな社会を揺るがす不具合は、旧時代的な民主主義システムに残されていた。

 つまり、完璧なアルゴリズムを持つAIのウィークポイントは、皮肉にも人間だったということだ。


「やっぱり止めないとな。この投票っていつから行われるんだ?」


 勝敗の決まるシステムの把握をしておかなければ、どうなったら止めたと言える状態になるか分からない。

 とりわけ、タイムリミットについては、どれくらい急がなければいけないかに直結する話だ。


「投票は今日の日付がかわった瞬間からできて、賛成票が半分こえた瞬間にきまりだぞっ!」


 それに即座に答えたのが姫華。

 彼女の先の提案は、結構本気だったらしく、かなり詳しく調べていたらしい。

 ここまで発言できる話題がなくて暇を持て余していたらしく、喜々として説明を始めた。


「こんなのやるぞっていう公表を1日前にしておけば、日付かわったタイミングから投票受付をボタンおせばはじめれる感じだな」


「姫華、ありがとう。助かった。ということは、もう残された時間は2時間も無いってことか。なんて急な」


 この投稿リスト自体がイタズラで埋まっているのが隠れ蓑になっているとはいえ、話題にされて成立する可能性が下がるリスクは避けるだろう。

 すなわち、これが掲載されているということは、向こうの準備は整っているということ。

 短期決戦で日付が変わった瞬間に投票開始、そのまま話題に上る前に投票を済ませて採決。

 といった流れだろうか。


「でも、どうやって止めるつもりなんですか?」


「どうやって、ってそれは……殴っていうこと聞かせるとか?」


「ななな殴ってですか……。それはいいですけど、そもそもわたしたち、この人の居場所も知らないですし……」


 確かに物理的な策に出るにしろ、居場所も知らなきゃ手は出せない。


「なあ愛深、この男の端末にハッキングとかって仕掛けられないのか?」


 一縷の望みを託す形で、愛深にそんな無茶なことを聞いてみる。


「うぅ……ごめんね、優くん。流石に近くにいなくてどこにいるかも分からない人の端末は、遠隔操作できないかも。近くにいればできると思うけど。ごめんね……」


 スゴく申し訳無さそうな顔で愛深は謝ってくる。

 無茶なことを言ったことが申し訳なくなる。

 というか、近くにいればハッキングできるかもという発言に恐ろしさを覚える。

 優正の端末は知らず知らずの内に、中身を覗かれていないか心配だ。


「ここで手詰まりか……」


 メモの謎は解けた。

 どうやって日本を変えるつもりかは分かった。

 誰が変えようと思ってるのかも分かった。

 けれど、止める手段が残されていない。

 優正たちは、指をくわえてアルゴリズムが書き換えられる瞬間を見守ることしかできない。


「それはどうでしょうか? まだ手は残されていると思いますよ?」


「陣内、どういうことだ?」


「まず聞いておきたいんですが、愛深さん。男を取り押さえることができれば、遠隔操作を行えるんですよね?」


「ええ。この端子を接続さえして貰えれば」


 そう言って、愛深はポケットから小さな機械を取り出す。

 それを端末に取り付ければ、遠隔操作が可能になるらしい。

 よく覚えておこう。そして、なにかの弾みで取り付けられていないか常に気をつけておこう。


「それを取り付ければ、遠隔操作可能ということは、居場所さえ分かればやりようがあるということですね」


「そうは言うが、その居場所が分からないんだろう?」


「ある程度の検討は付きますよ」


「マジか?」


「ええ、この東郷という男性が、相模さんの恩師さんと接触したのは4日ほど前だと考えられます」


 それはその通りだろう。

 てまりが男性とぶつかってメモを見たタイミングで、工藤先生にはチェックが付けられていなかった。

 だから、あれ以降のタイミングで接触したのだろう。


「そして、ここもそこそこ大きな街ですから、他の協力者も何人かいて、会って話をする必要があったでしょう。協力者は忙しい人が多いでしょうから、事前にアポイントメントを取って時間を決めて話す形でしょうか。つまりまだあまり多くの相手とは話せていないこのタイミングで決行を決めたと」


「つまり、どういうことなんだ?」


「男性はまだこの街にいます」


 陣内の言い切った内容。

 そこに至るまでの話にも、少なくとも優正にはおかしな部分があるとは思えなかった。


「でも、この街だって広いんだぞ。いると分かっても、どこにいるかなんて……」


「想像は付きます。相模さんだったら、世界を変えようとするボタンを押す時、どこで押そうとしますか?」


「どこって、自分の家とかか? 1人きりになって、鍵閉めて、準備するかな?」


「そういうことです」


 どういうことだ?


「人はそういうとき、心理的に安全な場所を探すと思います。例えば、鍵をかけることで、誰にも邪魔をされない空間にするとかをして」


「だとすると、家を探さなきゃいけないってことか?」


「それも今回は違うのではないかとふんでいます。先ほど相模さんが語っていた男性の印象から性格を推測すると、かなり傲慢な方なのではないかと思われます」


「だったら、何かあるのか?」


「そういう方って、自分の野望が叶う瞬間に――つまり世界が自分のモノになる瞬間には、高い場所からそれを見下ろしていたくなるものなんですよ」


「高い場所?」


「ええ。加えて現在、その男性は資産を持っていないということですので、高層ビルの展望台からみたいなのは無理でしょう。ただで独り占めできる展望台から世界を変えるはずです」


「そうか! 丘の上、強制生産施設の門の前か!」


 あそこの見晴台からは、街が一望できる。


「愛深、この街の最新の衛星写真って取れるか?」


「うんっ、任せて!! スグに用意するね!!」


 愛深は高速でコンソールを操作する。

 そして、ものの数秒で衛星写真を取得して、共有画面に上げる。

 夜の街。まだ眠らない街の光。

 そこから少し外れると、夜の闇に全てを飲まれている。


「ここの街の外れの丘の上を、拡大してくれ」


 真っ暗で見にくい丘を指して、愛深に拡大してもらう。

 アプリの自動調整機能で補正しても、なお暗くて解像度の粗い画像の中。

 見晴台の地面が見えて、そして――


「いたっ! やっぱり見晴台から、日付の変わる時間を、今か今かと待っているんだ」


 周囲に当然誰もいない1人きりの状態で立っている小太りの中年男性の姿。

 少し寒そうにしている。


「陣内、お前スゴイな。マジで当たってたなんて!」


「ええ、ボクもビックリしてます。さっきまでのは口からでまかせで、まさか本当に当たっているとは思っていませんでした」


「お前……」


 先程までの饒舌な推測語りが、口八丁だったと聞かされて、苦笑いの顔になる。

 まったくもって、詐欺師に向いていると感心する。


「ともかく場所が分かったんなら、行って止めてくる!」


 テントから飛び出そうとする優正。

 それを止めるのが、陣内の声。


「ちょっと待ってください。最後に聞きますが、本当に止めるつもりですか?」


「なんだ今更。さっきまでのやり取りは、そのためのものだろ?」


「ここで止めることに成功すると、確かにかなりの量のPPを手に入れることができるかもしれません。でも、AIのアルゴリズムが変わった後の世界の方が、最終的な収支はプラスかもしれませんよ。特にボクたちみたいな、生産性の低い人間だったなら、その可能性は相当高い」


 陣内の、その論理は間違っていないだろう。

 おそらく、ここでAIのアルゴリズムが変わるのを待って手に入れることのできるPPの方が、最終的には十中八九多いのだろう。

 けど、そんなのは大した問題ではないのだ。


「例えそうだとしても、こんな不意打ちみたいな方法で世界を混乱に陥れようとしているのが気に食わねえ。こういうのはみんなでちゃんと話し合って、吟味して決めるもんだ。だから、ぶん殴って止めてくる!」


「決意は変わらない感じですか?」


「ああ」


「実はボクも本当は止めるのに賛成側なんです。ギャンブラーですから、定期的に入る金よりも、ドカッと一気に入ってくる直近の金の方が好きなんです」


「なんだそりゃ。お前らしいな」


 優正は陣内と拳を合わせた後、テントを飛び出し丘の上を目指す。

 日付が変わる瞬間まで、タイムリミットは1時間を切っていた。




 大地を蹴る。夜の風を切る。

 夜に冷やされた風が、頬に叩きつけられて、寒さと痛さを感じる。

 けれど、全力で脚を動かし続けている身体は、オーバーヒートで今にも止まってしまいそうなほどに熱い。


 テント村を抜け、街を順調に外れていき、強制生産施設に続く長い長い階段に辿り着く。

 一瞬、尻込み。

 けど、すぐに脚に力を入れて1歩踏み込む。

 後はもう身体が自動的に動いていくのに任せる。

 息を1つ吐くごとに1段上る。

 それが続いていくと、1段上るのに吐く息が2つになって、3つになる。

 けれど脚は止めずに無心で前に進んでいく。


 階段が終わる。

 急に段差がなくなった衝撃に対して、膝に力を入れて耐える。

 両手を膝小僧に当てて、ぜえはあと息を整えながら見回す。

 見晴台があった。

 小太りの中年男性がいた。

 今まさに、自分を殴り飛ばそうとしている優正が近づいていることなんて、知る由もない。

 だから、東郷は網膜に映る時計の表示が1つずつ進むのを確認しながら、寒さを耐えるために手をこすり合わせている。


 無防備な男に殴りかかって、動きを止める。

 なんて簡単な仕事だ。

 拳に力を入れる。

 走り出す。


「東郷ぉおおおお!!!」


「なっ、何だっ、お前は?!」


 東郷の不摂生な身体が眼前に来る。

 強く脚を踏み込む。


「らぁああああああああ!!!!」


 渾身の右ストレート。

 東郷の身体が一瞬浮く。

 後ろにのけぞって、そのまま止まらず地面に崩れ落ちる。

 尻もちついて、いっぺん弾んで、力なく仰向けに倒れ伏した。

 白目を向いている。

 優正の一撃は、見事意識を奪うことに成功したのだった。


「はあはあ、後はこれを刺して」


 愛深から貰ってきた、端子を東郷のリストバンド端末の穴に刺す。

 そして、優正のテントで待っているだろう4人に対してコールをかける。


「5分前。ギリギリセーフだったな。愛深、遠隔操作できそうか?」


『うんっ!! 優くん大丈夫そう。今、遠隔操作して止めちゃうねっ!! あっ、えっと、どうしよ?』


「何かあったのか?」


『遠隔操作はできたんだけど、どうやったら止まったって言えるのかな? 投票の有効化はボタンを押さなければ止めておけるけど……』


「ああ、そうか」


 東郷の端末の操作を奪った後のこと、何も考えていなかったが言われてみればそうだ。

 ここで例えば、提案自体を取り消しにしたとしても、また後日同じことをやられるとどうしようもない。

 それを阻止するには、ずっと監禁でもしておかなければいけないだろうが、とても現実的とは言えない。

 何か、良い案は無いものだろうか……。


「なあ、愛深? AIのアルゴリズム変更の提案って投稿から24時間以上経過後の、次の日付変更から投票可能なわけだよな?」


『うん、そうだね』


「その間に、内容の書き換えって可能なのか?」


『書き換え? ちょっと調べてみるね…………できるみたい。決選投票まで上がっちゃったら無理みたいだけど』


「マジか。そんな風になってるのか。ガバガバだな」


 でも、それならやりようがある。

 直前に書き換えて、そのままの内容のまま投票だと考えている賛同者たちを釣って、荒唐無稽な提案を通してしまうのだ。

 頭をフル回転させる。

 その結果、ちょうど良く最高のアイデアが降りてきた。


「愛深、変更提案の内容だが、日付変更1秒前に書き換えて、そのまま投票開始してくれるか? 変更の内容だが……」


 優正は愛深に、その最高の日本を救う方法を伝える。


『優くん、本当にそんなのでいいの?』


「ああ、間違えなく頼む」


『うんっ、任せて!!』


 そうして迎えた日付変更のタイミング。

 心の中でカウントダウンを行う。

 本当に上手く行ってくれるだろうかと、心臓がバクバク鳴る。

 デジタル時計の日付表示が変わる。

 そして、次の瞬間端末にこのような通知が来る。


 『AIアルゴリズム変更の通知』

 投票の結果、以下の変更が可決されました。

 現時点から、変更が適用されます。

 

 ・PP獲得時の音声を『下痢便.mp3』に変更。

 

 そして、その瞬間から、食事中には絶対に流れてほしくない気持ち悪さの音声が、全国で流れ始めた。

 すぐにネットが阿鼻叫喚の声に包まれる。

 またたく間に、AIのアルゴリズム変更提案フォームに、幾つもの元の音声に戻す内容の提案が投稿される。

 そして、それは当然の流れのように後日採決され、元の音声に戻るに至った。


 けれど、その日と次の日、2日間だけはルールを戻すことはできなくて、各地で気分を悪くする人が続出するような音が流れ続けた。

 人々の心に深く刻まれた、下痢便の2日間となったのである。

 この教訓から、多くの人がAIアルゴリズム変更提案の投票権の委任だけは取り下げることになった。

 もう同じ手法で社会制度をひっくり返すことはできない。

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