第20話 待ち合わせの時にすべきこと

「………うーん……」


 僕の住んでいるアパートの中、最大の試験に挑む者がいた。その名は早川律。


 彼は、今までで初めてと言っても過言ではないくらい大きな問題を抱えていた。その名は……


『デート(出掛けるだけ)になにをしてなにを持っていけばいいのか問題!』


 デート(出掛けるだけ)なんて今までで一回もなかった僕にとっては、かなりの難問。この苦労を知らないイケメンが改めて憎いと思ってしまう。イケメンはなんで何着てもイケメンなんだー……って思ってしまう。



「……………そうだ。そういえば…」



 僕は、前にお母さんがくれたダンボール箱のことを思い出す。確か、お母さんが『服を送ってあげる』……って言ってた気がする。


 だけど、その後に『彼女ができたら服がないって困るでしょ』って言われてなんか使いたくなくて使わなかったんだけど。


 でも、使う機会があるなんて。お母さん、まじ感謝!まじ卍………………ってそれは古いか。



「って………うげ……派手すぎる……」



 ダンボール箱のなかにどんな服があるのかなーって見てみると、イケメンにとっては地味ーとか言われそうだけど、僕にとっては結構派手……。


 これはちょっと恥ずかしいし……



「………………でも、僕が決めたら地味になるかも知れないし、お母さんのことを信じてみるか。」



 そして、他にもショッピングモールのある程度のことは対応できるようにするためにスマートフォンで調べておいた。


 そして、ベッドへもぐった。


 ……………………寝れない。


 ベッドにもぐったら、だいたいいつもは遠足の前日とかでもすぐに寝られるのだけど、明日をデートとか考えると、寝られそうになかった。


 でも、東雲さんの優しいところとか考えていると、ドキドキする部分もあるけれど、安心できる部分もあって、なんとか寝ることができたのだった。








「うぅ………」



 僕は、目を覚ました。そして、昨日のことを整理していく。また、意識がだんだんとはっきりしていくたびに、記憶も確かなものとなっていく。


 で……



「はっ!」



 そうだっ、寝ている場合じゃない!今日は東雲さんと一緒に出掛けるんだ!時間は……よしっ、待ち合わせ時間の2時間前!間に合う!



「えーっと…えーっと…なにを用意すれば良いんだっけ?」



 昨日にできることは昨日のうちに全部終わらせといたはずだから……そうだっ、服着替えて朝ごはん食べて………それくらい!


 それで、着替えて朝ごはんを食べて……。余裕は十分にあるのに、それでも時間が足りていないんじゃないかってくらいに焦ってしまう。


 だから、30分程度で用意が完全に終わった。



「………ふぅ。良かったー……準備終わったー。これなら、今からいけば待ち合わせ場所の30分以上前には着くよね。」



 どうしよう?でも、ショッピングモールに向かう途中になにかあったら嫌だし……。よしっ。



「今から行こう!後悔先に立たずだ!遅めに行ってなにかあって後悔するじゃ嫌だし、早めに行ったほうがいいはず!」



 そして、結構まだはやいんだけど、なにかあったらいけないということで、もう向かうことにした。


 で、着いた。なにもなかったから、なにも言う必要はないだろ?



「着いたー。良かったー、東雲さんが先に来ているとかあったら、本当に申し訳ない……。」



 そうだ、今のうちに調べたいことがあったんだ。昨日に調べるのを忘れて調べられなかったから。


 そして、スマートフォンを取り出すと、検索アプリを開いて、こう打ち込む。


『デート 待ち合わせ するべきこと』


 ショッピングモールのことばかり調べていて、こっち系のことは調べられていなかったからね。ちょっと検索するのは恥ずかしいけど……


 東雲さんのためだ!


 そんなことを考えながらいろんなサイトを見てみたのだけど、多分大まかに言うと、大事なことは3つあるらしい。まぁ、他にも色々あったんだけど、いろんなサイトでよく言われていたのが3つだ。


『申し訳ないと思わせない。待ってないということを伝えよう。』

『心配させない。服装をほめて、安心させよう。』

『悲しいと思わせない。相手をじっくり見て、変化に気付いてあげたり、話をよく聞いてあげよう。』


 待ってないということを伝える…服装を褒める…じっくり見て、変化に気付いたり話をよく聞く。うーん……覚えられなさそう……もう一回言ってみようか。



「……待ってないということを伝える…服装を褒める…変化に気付いてあげたり話をよく聞く………。これで完璧……」


「なにが完璧なんですか?」


「うへぇ!?」


「ど…どうされたんですか?驚かしてしまったならすみません。」


「いや、いいよ……」


 声がする方を見てみたら、僕がなにを完璧と言ったのか不思議そうに頭を傾げている東雲さんがいた。


 びっくりしたー……。待ち合わせをするときに何すればいいかとか考えていたら全然気付かなかったー……。ってか可愛い……!


 ……ってそうだ、もう忘れるところだった。きちんとさっきの3つを実践しないと!第一印象とはちょっと違うけど、初めっていうのは結構大事だしっ!

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