第17話 聖母(?)とその家
「…………え?」
「いや、ここが私の家よ」
「……そ、そうなんですね」
僕は、現在偶然会った東雲さんのお母さんの案内で東雲さんの家に来ていた。……でも、その家が予想外で……ちょっと戸惑い中。
僕の目の前にあったのは……東雲さんを送り迎えしたときに、あの豪邸の隣の大きな家なのかなって、簡単に想像していたんだけど……
実際はそうではなかったらしい。隣じゃなくて、それ自身の……東雲さんの家は、どうやら大きな豪邸の方だったらしい。
まぁ、東雲さんのお母さんがちゃんと言っているんだから、多分そうなんだろうけどね。
「…………冗談?」
「いや、違うわよ」
信じられん……。確かにこのお母さんは、どこか上品というか、豪邸に住んでいるんじゃないかって感じの容姿ではあるけど……。
これは、さすがに予想外……。ってことは、東雲さんもここに住んでいるということか……。
「じゃあ、入って?」
「……あ、はい……お、お邪魔します」
広すぎてもはや玄関じゃない玄関を通り、家に入れさせてもらった。家まで入らなくても、届け物はなんとかなるのに、と思わざるを得ない。が、まぁいいか。
いいって言っているんなら、お言葉に甘えても。
というか正直、……ちょ……ちょっと……気になるし……。東雲さんの部屋……どんな感じなんだろう……。
「……と、とても素敵な家ですね!」
こころなしか、声が小さくなってしまった気がする。クラスメイト……それも聖女様なんて謳われる人の家に入るのが、こんなにも緊張するなんて。
「あらありがとう! じゃあ、手を洗ったらリビングの方においで。あっ、お手洗いはあそこね」
「は……はいっ! ありがとうございます」
そして、指を指されたところ、つまりは洗面所へと向かう。
「……はぁ。何もかもが豪華だなぁ……。すごい緊張する。なんか、さすが東雲さんって感じだ」
丁寧に手を洗うと、リビングの方に戻った。
「それで…………え?」
「あっ、料理を作っているからちょっと待ってて」
「料理? いや……え……料理?」
「せっかくだしね、食べていってよ」
……頭がパンクしそう。
リビングに戻ってみると、キッチンでカンカンと音を鳴らしながら食材を切っていくお母さんの姿。
これって、ぼくのために料理を作ってくれているの? 僕は、配りものを持ってきただけなのに、なんでこうなってるの?
困惑していると、イスに座ってと言われたので、イスに座って待つ。すると、数分後に料理ができたようで、僕の前に料理が置かれる。
「あっ……これって……!」
「そうよ、私が琴葉に教えたパスタと同じもの」
「おおっ」
「じゃあ、さっそく食べましょうか。学校での様子とか聞きたいし」
「は、はいっ」
結局食べる流れになっちゃったけどせっかくだし頂くか。
「「いただきます」」
「もぐもぐ……もぐもぐ……」
料理を口に運ぶ。
とっても美味しかった。
……けれど、どうしてか思ってしまう。聖女様の方が、東雲さんの方が、美味しいなんて、そんなことを考えてしまう。
「どう?」
「あっ、おいしいです!」
「琴葉と比べたら?」
「そ、それは………」
「琴葉のほうが上だと思ったでしょ」
「……す、すみません……」
「別にいいわよ。……ちなみに、琴葉の方が美味しいと思った理由、なんでなのか分かる?」
「いえ……? 何が理由なんでしょう……?」
「それは琴葉のことを………いや、やめておこうかしら。秘密ね」
「え、えぇ……」
「まぁ、いずれ必ず分かるわよ。いつかは必ず」
琴葉のことを……つまり、東雲さんのことがなにか関係あるのだろうか?
東雲さんが一生懸命に作ったパスタのその過程を知っているからとかなのかな?
僕は、これがなぜなのか考えながら、東雲さんのお母さんの作ったパスタを食べていた。
「うーん……」
けれどやはり……全然分からなかった。果たしてどういうことなんだろうか?
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