第12話 聖女様を送ります!

「いやはや……さすが東雲さんだね」 


「ありがとうございます、喜んでもらえたら嬉しいです」


 僕と東雲さんは、このアパートに帰ってきたばかりのときと比べて、あまりにも変わった僕の部屋をみて、そんなことを言っていた。


 それにしても……ゴミ以外は何も捨ててなんていないのに、なんでこんなにもキレイになるんだろう……?


「……じゃあ………あっ、そうだ。東雲さん、もう遅いし帰らないといけないよね。もう21時じゃない?」


「……えっ!? あっ……本当だ。掃除をしていると、やっぱり時間は早く過ぎるものですね」


「うん。……そんなことを言っている暇はないよ。さすがに21時はもう帰らないと」


「あっ、そうですね。じゃあ……」


 そして、東雲さんは学校の帰りからスーパーを通してここに来たために、持ってきていた荷物を持って外に出ようとした。


 ……どうしたらいいかな? 1人で帰したら、こんなに東雲さんは可愛いから、初めて話したときみたいに襲われるかも……。


 でも……家まで送るよって言っても、東雲さんは家が知られると何かあるんじゃないかって、疑われたり……。


 それなら……


 もしかしたら襲われることもなく家に帰れるかもしれないけど、それでも……嫌われるのも嫌だけど、襲われるかもしれないという小さな可能性があるというのなら、僕はやっぱり東雲さんを守りたい……!


「ねぇ、危ないし、僕が家に送ってもいいかな?」


「えっ……でも、迷惑をかける訳にも行かないので」


「でも……僕と東雲さんが初めて出会ったとき……というか、話したときは襲われていたじゃん。それくらい可愛いんだから」


「……えっ!? ………あ、じ、じゃあ……お……おね……お願いしま……す」


「うん!」


 なんか東雲さんが顔を赤くしていたような気もしていたけど、別にドジってないだろうし気のせいだろうな。


 でも、声まで慌てているのはどういうことなんだろう……?


 そして……気付く。ドジってないだろうし……とか思っていたけど、本当はドジっていたということに。


「あ……ちょ……ちょっと違うから……いや、違うわけでもないけど、……えっ……えーっと……」


「……ち、違わない……? って……あ…、うん、わか…、分かっていますから……!」


 果たして、こんな状況は何度目なのだろうか?


 やっぱり性格が似すぎてしまうと、僕のドジっぽいところも似て、こんな感じになってしまうのがつらい……。


 そして、またいつものように落ち着くと、僕もちょっとしたものを羽織って、外へ出る準備をした。


 なんどもこんなに慌てているからか、落ち着くコツみたいなのも分かってきたのだろうか?そのおかげか、戻るのもはやい。


 カチャッ


 鍵を締めて、東雲さんの家はどこかは分からないから、東雲さんより少し後ろめに立って歩き始める。


「それにしても……東雲さんを助けたからと言って僕と一緒にいるだけで安心されるって東雲さんのお母さんは言っていたけど……どんなお母さんなの?」


「うーん……元気な感じ……ですかね? そのおかげで、家族は騒がしいですけど……」


「あー……それだったら少しは僕に安心してくれるってわか………らないよ!! やっぱり自分の子供は他の男の人の家に行かせないものなんじゃないの!? 好きな人の家とかだったら分かるけど、好きでもない人の家に連れていって安心……ってなる!?」


「……まぁ、その好きな人っていうか、気になっているのが律くんなんだけどね……」


「ごめん、聞き取れなかった、なんて?」


 ぼそっと、口を開いた東雲さん。だが、声が小さすぎて聞き取れなかった。


「あっ……いや、なんでもないです……! 律くんと同じでお母さんは変だなーって思っただけだから」


「あっ、東雲さんもやっぱり東雲さんのお母さんは変だって思うんだ……?」


「うん…!! そうそう! 変ですよね! 私のお母さん!!」


「あ……う……うん……」


 なんでこんなに慌てているっていうか、必死なんだろう……? まぁ、毎回毎回事情を解明するのもプライバシーを壊しちゃう……っていうか、だからやめとこ。


「あっ……あそこが私の家なんで……さようなら」


「あっ、うん。バイバイ!」


 それにしても、あそこってどこなんだろうな?


 あれ……な訳はないよね。あんな豪邸に住んでいる……あの東雲さんならありそうだけど。


 やっぱり……東雲さんとはまた違った雲の上の人があの豪邸に住んでいるんだと思うし。


 多分、となりの家かも……


「……いや、それはそれでふつうにでかいな」


 東雲さんが大きくて豪華な家に入っていくのを、ぼくはただぼーっと見つめていた。

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