第11話 聖女様の料理 2

「完成ー!」


「おー!!」


「私の中ではすっごい自信作ですっ!」


「いや、うん! 本当にすごいね!」


 両手を腰において、「ふんすっ」とでもなにか効果音なくらいの鼻息をたてて自慢してくる。


 でも、自慢してきているのに、まったく苛立たない。だって本当に素人の僕でも凄さが分かるほど……きれい? っていうかそんなふうにすごい! ってなる感じで……!(語彙力皆無)


 それに、一生懸命料理をしている東雲さんの姿とか過程とかを見ていたか。


 そしてなにより……さっきの自慢してくるその姿が可愛いっ!


 だから、こんな可愛い東雲に苛つく理由なんて、この世には……いや、どんな世でもどこにも存在しないんだよっ!


「じゃあ、僕はパスタをお皿に分けたり机に並べたりしておくから、今の間に手を洗ったりしといて」


「あっ、ありがとうございます」


「どういたしまして。……じゃあ早速お皿に分けるか。……よっと」


 そして、僕はパスタをお皿に華麗に分け……られずに、「……あれ、ちょっと僕のが多いような気がする……。……次は東雲さんの方が多い。……あっ、減らしすぎた! 東雲さんのが少なくなってる……。」などと苦労しながらも、なんとかお皿に分けることができた。


 その後、僕がちょうど机に晩ごはんを置いたとき、手を洗っていた東雲さんが戻ってきた。


「ありがとうございます! じゃあ、冷めるといけないですし、美味しく食べられないかもしれないですし、早速いただいましょう!」


「そうだね」


「「いただきます!」」


 そして、フォークをパスタにさしてくるくると回して絡め取り、僕の口へ運ぶ。


「おいしい……!」


「本当に! 自分でいうのも何なんですけど、すごい美味しいです。前回のと比べても上手に出来ています!」


「うん!」


 僕は、なにも面白いことなんてないだろうに、なぜか笑ってしまった。……というか、笑いたくなった。……よくわからないけど、笑顔でいたかったのかな?


 美味しいものを食べたとき、美味しいって言う気でもなかったのについ言っちゃうこととか、笑顔になっちゃうこととか、本当にあるんだな……!


 そして、美味しさのあまり、勢いよく食べてしまい、5分後くらいには僕の前には空のお皿しか存在しなかった。


「ごちそうさまでした。本当に美味しかったよ。もうちょっと食べたかったなー……!」


「お粗末様です。そう言ってもらえて嬉しいです!」


 そのあとに、僕でもお皿洗いくらいはできるという事で、2人でお皿洗いをすることにした。ちなみに分担は、東雲さんがお皿を洗って、僕がそれを拭くというもの。


 洗う姿をみせようとカッコつけようとしていた僕が恥ずかしい……。


 でも、それにしても……


 いや、言わないほうがいいか。言う方も言われるほうも恥ずかしいし……。


「そういえば、このお皿洗いを2人で分担でやる作業って、なにか新婚夫婦みたいですよね」


「……あぁ、うん。そう、だね……」


 東雲さんっ! 僕が僕のためでもあるけど、なにより東雲さんのためにも言わないでおいたのに、なんで本人が言っちゃうかな!?


 でも、新婚さんみたいとか言って、東雲さんは恥ずかしくないのかな? 僕だったら絶対に顔赤くなると思うよ。さすが東雲さ……


「えっ……ちょっ……私、なんて言いました?」


「えーっと……」


 ……あっ……これは、多分東雲さんは自分の思ったことをなにも考えずに言っちゃって、今になって気付いた…パターンだ……。


「いや、ふ……深い意味は……別にないですからね!?」


「あ……うん……知ってる……知ってるから!!!」


 僕もなんだけど……でも、東雲さんもいろいろとドジっ子なんだな……。そういうところも……kawaii!


「…………。」


「…………。」


 まぁ、kawaii! だなんて思っても、恥ずかしいから口に出せるわけがない。このお皿洗いはほとんど沈黙状態で終わったのだった。


 そして、この部屋が汚れているということで、お皿洗いのあとに掃除をすることになった。ちなみに、その掃除による結果の変わりっぷりは、ビフォーアフターのテレビに出せるほどじゃない? まぁ、分かんないけど。


 でも、僕からしたらビフォーアフターよりもすごいんじゃない? ちょっと言い過ぎかもしれないけど……、でも、東雲さんがしたってだけでそうなるよね。ね……ね? ね?


 そんなことを考えながら、僕は東雲さんの隣に立ち、部屋の変わりっぷりを眺めていたのだった。





 

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