第7話 僕の恩返し

「……お、おはよう」


「おっ、律か。おはよう」


「おはよー、律くん」


 僕は、すこしぎこちない感じで僕の席に腰を掛けながら、僕は蓮と楓さんに向かって挨拶をする。


 これからのことを考えると……緊張をしないわけにはいかないんだよな……。はぁ、このうるさい心臓の音……どうしよう?


 聞こえたらはずかしい……。


 だなんて思ってしまったことが失敗だった気がする。いや、正しくは、蓮と楓さんの前でこんなことを考えてしまったというべきか。


 このかんのいいふたりが、僕の少しの変化を許すはずもなかった。


「なにかあったのか? 律。少しいつもと比べると変な感じだな。」


「うん……なんかいつもと比べると緊張している感じがするというか……聖女様と何かあったのかな?」


「うげ……」


 この二人の前で、東雲さんのことを考えるんじゃなかった……。


 まぁ、無理だとは思うけど、何も言わなかったら変なことを言われそうだし、とりあえず誤魔化しておくか。


「なんでもないよ、東雲さんは別に関係ないよ」


「ふーん……!」


「へぇー……!」


「……えっ!? なに……、その反応? 僕、またなにかやらかした? なにも言っていないけど……」


「へぇ……!」


「ふーん……!」


「それ怖いから……! ちょっと何考えているのかわかんないから……!!」


「律くんは、前は聖女様のことを聖女様って言っていたのに……今は、聖女様のことは東雲さんって、言っているんだね」


「なにか進展があったのか?」


 オーマイガー。


 なんで、僕はこんなにもやらかしてしまうのだろうか……。もしかしたら、僕ってドジっ子キャラ?それとも、愛されキャラ?


 ……いや、愛されキャラは無いな。


 でも……うん……ドジっ子キャラか……。いやないな。


「それはそうとして……」


「それはそうとして?」


「あ、いやなんでもないです。それで、東雲さんと言ったことは、なんにもないからね」


「うーん……」


「まぁ、詮索はあんまりしないでおいとくよ。でも、東雲さんと付き合うことになったとかあったら教えてくれよ」


「まぁ、そんなことは無いだろうけど……なったら教えてあげるから……」 


「おっ、楽しみにしとこー」


「そうだね、私も律くんが彼女作って私達でダブルデートとかしてみたいよね?」


「それいいな」


「ふふ〜ん! でしょでしょ! それで……」


 僕は、何を見せられているのだろう?


 そんなことを考えていると、扉があいて東雲さんが入ってきていた。


「おはようございます」


「おはよー! 聖女様っ!」


「相変わらず可愛いです。さすがです、聖女様っ!」


「早川のことなんて忘れて……さっさっ!」


 すごいな……。相変わらず聖女様はいつも扉を開けて入ってきただけでこんなことになる。


 人気者だな。


 ……なんか、最後にやばい声が聞こえた気もしなくもないが……気にしたら負けだな、忘れておこう。


 それで……いま、一緒に帰ろうって誘おうかな?


「あっ……あのー……」


 やっぱり、気軽に話せるものじゃないよな。一度話したっていうのに……すごい緊張するよ……。


「しょうがない、放課後に教室で……って無理か。今みたいになりそうだし……校門で言うか」


 僕は、そんなことを考えて、緊張し続けながら学校を過ごしていった。


 そして、緊張からか……いつもより早く気付けばいつの間にか放課後になっていたのだった。


「……今日もごめん、蓮と楓さんは先に帰っていてくらないかな?」


「おっ、今日も聖女様と一緒に帰るのか?」


「おぉー! 聖女様も付き合うの、楽しみにしているよ?」


「……そんなことはないけど。うん、ありがと」


 僕は、そんな会話を済ませると、東雲さんより先に校門に向かうために、小走りで向かったのであった。



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